試乗記

【比較試乗】「BMW Z4 vs アウディ TT ロードスター」走りの愉しさで選ぶオープン2座スポーツ

気持ちいい青空のもと、ストレート6を積む最高峰グレードのZ4 M40iとオープンスポーツのライバルであるTTロードスターを比較。果たして走り好きならどちらがお好みか?

オープン+高性能エンジンで刺激は抜群!

もし近しい友人が「TTロードスター買ったんだ♪」と自慢しにきたら、僕は「ヤラレたわぁ……」と悔しがることだろう。
なぜならTTロードスターは、素晴らしくバランスが取れたスポーツカーだからだ。特に2L直噴ターボを230ps/370Nmにまで高めた45 TFSIクワトロは、ベストチョイス。それは前後重量TTに比べるとZ4はストイック配分と言った数値の良さを述べているのではない。存在そのものがハイバランスなのである。

AUDI TT ROADSTER 45 TFSI QUATTRO/2015年8月に登場した3代目TT。アルミを多用したコンポジット構造の軽量ボディ、マトリクスLEDヘッドライトのほか、高解像度デジタル液晶ディスプレイを配置するアウディバーチャルコックピットなど先進技術が満載。電動ソフトトップは、50km/h以下なら走行中でも開閉可能で、開閉時間も早い。

TTロードスターは、アウディが近年追い求めるスーパーコンフォートの思想を地で行っている。オープンボディゆえにクーペほど剛性を上げられないサスペンションは、徹底して乗り心地の良さとステア応答性のリニアさに目的を集約している。かといってコーナリングパフォーマンスが低いのかといえばそうではない。むしろ、しなやかな足周りの分だけ日常での身のこなしは軽やかで、真剣に走らせてもクワトロを持つシャシーの安定性は抜群に高い。TTクーペがスポーツカーとして速さに捕らわれる分だけロードスターにリアルワールドでの自由度が増すのは、ポルシェにおけるケイマンとボクスターの関係と同じだ。

AUDI TT ROADSTER 45 TFSI QUATTRO

世界的に見ても、最もキレがある直列4気筒ターボと、タイムラグゼロのレスポンスを誇る6速Sトロニックの組み合わせは、さらにオープンエアを掛け合わせることで快楽へと変わる。だからもし友人がTTロードスターを選んだとしたら、僕は「わかってんなぁ!」と、羨ましく思うのである。
そんなアウディと比べるとBMW Z4は、バカみたいにストイックだ。登場時より距離を重ねた試乗車の足周りはかなりこなれていたが、普通に走るだけでもZ4はそのすごみをダダ漏れさせている。

BMW Z4 M40i/センターコンソールが運転席側に傾けられ、ドライバーオリエンテッドなコクピット。エアコンのスイッチ類も上方にレイアウトされるなど、他とは異なるデザインが採用されている。エンジンはM40iが340ps/500Nmの3L直6ターボ、sDrive20iには197ps/270Nmの2L直4ターボが搭載。

太いリアタイヤは段差やわだちで横揺れし、アクセルを少し踏むだけでオプションの電子制御デフがトラクションを掛ける。もしアナタがステータスだけでM40iを選ぶなら、2L直列4気筒ターボを積む「20i」の方が気軽である。そしてTTロードスターのステアリングは、ぜひ一度握って欲しい。
しかし、本気で走らせればM40iは最高だ。「B58」型3L直列6気筒ターボはMシリーズ由来の「S55」型ツインターボほど狂気を孕まないが、オープンエアでそのサウンドを浴びると、その純度は感動的に高まる。スムーズな回転上昇の中にも、爆発的に力が漲って行く様子を、ダイレクトに感じ取ることができる。

BMW Z4 M40i

ハンドリングはフロントエンドのグリップを今時のスポーツカーとしては珍しいほどガッシリ高め、ワイドトレッドかつ超ショートホイルベースなボディに安定性を与えている。そして前述したリアデフと共に、340psのパワーを受け止めに掛かる。ご存じの通りZ4はトヨタ・スープラとの兄弟車であり、ゆえにそのディメンションは、BMWの中でも特異な一台。奇跡的に生まれたこの運動性能をエンスージャストとしてトコトン味わう気持ちがあるのなら、迷わずM40iを選ぶべきである。

フォト=小林俊樹/T.Kobayashi ル・ボラン2020年2月号より転載

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