830hp以上を発揮するV12エンジンを搭載。GT3レースマシンを凌ぐエアロダイナミクス性能を実現
7月29日、アウトモビリ・ランボルギーニはサーキットトラック専用の新世代ハイパーカー「エッセンツァSCV12」を発表した。このモデルは世界40台限定で販売され、オーナーには2021年にスタートするスペシャルプログラムへの参加資格をともなう会員制クラブへの入会資格が付与される。
エッセンツァSCV12は、同社のモータースポーツ部門「スクアドラ・コルセ」がテクニカルサポートし、ランボルギーニのデザイン部門「チェントロ・スティーレ」がデザインを手がけたサーキット専用ハイパーカー。
かつての「ミウラ」、「イオタ」、そして「ディアブロGTR」などの直系モデルに位置付けられ、ランボルギーニが開発した自然吸気エンジンの中でも最強のV12エンジンを搭載。レース用のプロトタイプに着想したエアロダイナミクスと、究極のドライビングエクスペリエンスのためにデザインされた、新たなテクニカルソリューションの融合によって生み出されたモデルとなる。
同社のステファノ・ドメニカリ会長兼CEOは次のようなコメントを発表している。
「エッセンツァSCV12は、私たちのブランドがお届けできる最高のサーキット・ドライビング・エクスペリエンスを象徴するもので、ランボルギーニのマシンとサーキットの路面との密接な関係に光を当てた、技術的な快挙でもあります。ランボルギーニは常に未来を見据えて新たなチャレンジを続けていくブランドですが、そのルーツや在り方を忘れることは決してありません。エッセンツァSCV12は、スーパースポーツカーのメーカーとしての形にとらわれないスピリットと、モータースポーツに対する揺るぎないパッションの完璧なコンビネーションです」
ミッドシップマウントされるV型12気筒自然吸気エンジンは、830hpを超える最高出力を誇り高速走行時のRAM効果により大幅なパワーアップを達成。エキゾーストパイプは背圧を低減するためにCapristoがデザインしたもので、パフォーマンスを高めるだけでなくこのエンジン独特のサウンドも強調する。シャシー内部の構造要素である新しいエクストラックシーケンシャル6速ギヤボックスと後輪駆動の組み合わせによってパワーを制御し、コンパクト性、構造的連続性、高いねじり剛性を実現している。
新世代カーボンモノコックシャシーの採用は高いボディ剛性に寄与する一方、キャビン内のロールケージを必要としないメリットも生み出している。これにより1.66hp/kgという類を見ないパワー・ウエイト・レシオを実現。FIA(国際自動車連盟)のプロトタイプ・セーフティ・ルールに準じて開発された最初のGTハイパーカーとなった。
過酷なサーキットトラック上でも最大限の敏捷性と安定性を確保するために、ギヤボックスに直接取り付けられたプッシュロッド式リヤサスペンションなど、レース用のプロトタイプに着想を得た運動学的なソリューションも採用。足まわりには、ブレンボが開発したブレーキディスクとキャリパーを備えるマグネシウム製ホイールリム(フロント19 インチ/リヤ20 インチ)に、特別開発のピレリ製スリックタイヤを装着している。
同社でCTO(チーフ・テクニカル・オフィサー)を務めるマウリツィオ・レッジャーニは、このモデルを次のように紹介。
「エッセンツァSCV12 はV12自然吸気エンジンが表現する究極のモデルであり、1963年から続くランボルギーニ・ブランドのシンボルです。これはエンジニアリングのクオリティの追求と、洗練されたエアロダイナミクスで、未来的なデザインがロールケージのないカーボンモノコックなどの革新的なソリューションを組み合わせたプロジェクトであり、その結果、非常に魅力的で妥協のないハイパーカーが完成しました。このハイパーカーはサーキットを走り、ランボルギーニの名前が世界中に知られるきっかけとなった特徴を広く紹介するために誕生しました。ドライバーだけでなく観る人の心にも、他では得られないスペシャルなエモーションを感じていただけることを約束します」
エアロダイナミクス性能においては、スクアドラ・コルセがこれまで培ってきたGTレース経験を生かし、車速250km/hで1200kgという、GT3マシンより高い効率性とダウンフォースレベルを実現している。フロントボンネットにある、中央にリブを配したウラカン・レーシングカー特有のダブルエアインテークが、ラジエーターから発せられる高温の空気の流れを分離し、ルーフに配置されたエアスクープからの冷たい空気を運ぶ。フロント部分はスプリッターとふたつのラテラルエレメントが特徴的だ。サイドにあるエンジンとギヤボックス冷却用のフローは、サイドシルに配置されたバーティカルフィンを使用することで最適化されている。エアロダイナミクスの仕上げとして、調整可能な大型ダブルプロファイル リヤウイングが装着されている。
デザインは、ランボルギーニのデザイン部門チェントロ・スティーレによるクリエイティブの結晶だ。チェントロ・スティーレはスクアドラ・コルセ設立以降、ランボルギーニが生産するすべてのレーシングカーのデザインを手掛けてきた。ハイパーカーとしての本質的な性質は、ピットストップの際に必要に応じて素早く交換できる3つのエレメントから成る車体構造によって高められている。Verde Silvans、Grigio Lynx、Nero Aldebaran Gloss、Arancio Californiaの特別なボディカラーを使い、長年にわたりランボルギーニ・スクアドラ・コルセのパートナーを務めるPertamina、Pirelli、Roger Dubuisのブランドロゴが随所に表示される。
スタイリングは、1970年代のプロトタイプが持つ魅力と、ランボルギーニのDNAを象徴するエレメントが融合した、流線形でありながらダイナミックなラインが、フロントのヘッドライトやルーフのエアスクープ、ステアリングを囲むエアベントを特徴とした六角形をイメージさせる。
さらに、車体のカラーリングやコックピット内部で繰り返されるシンボライズなY字のデザインは、それぞれのエレメントにおける軽量、機能性、デザインの絶妙なバランスを象徴。インストルメントパネルとダッシュボードは、コックピットを囲んで耐荷重性とスタイル要素を兼ね備えた非対称のY 字型カーボンで支えられており、ドライバーが究極のドライビングエクスペリエンスの中心となるデザインとなっている。
ディスプレイ付きマルチファンクション・ステアリングホイールのデザインは、ひとり乗りのF1マシン用ステアリングホイールに着想したもので、未来的かつ合理的なデザインにより、ドライバーはリムから手を離すことなく、最高のエルゴノミクスと完璧なドライビングを体感可能。FIAの承認を受けた特製OMPシートにはカーボンシェルを使用し、ドライバーを包み込んで快適な安全性と安定性を約束する。
同社チェントロ・スティーレの責任者、ミィティア・ボルケルトは次のように述べている。
「私はこのプロジェクト開始当初からとても楽しみにしていました。紛れもなくランボルギーニらしいエクストリームかつ非常にクリーンなスタイルを持つ、リアルなレーシングカーのあるべき姿とも言えるハイパーカーを作ることができたからです。私たちはエッセンツァSCV12 で、過去と現在のモータースポーツに対する敬意を表しています。大きなリヤウイング、サイドのフィン、フロントのスプリッターは、『ウラカン・スーパートロフェオEVO』と『GT3 EVO』から譲り受けたエレメントです。このハイパーカーはランボルギーニの伝統と未来に向けたイメージを完璧に融合させました」
エッセンツァSCV12 のオーナーは、世界有数のサーキットで自身のハイパーカーを運転できるスペシャルプログラムの参加資格をともなう会員制クラブの入会資格が与えられる。このプログラムには、エッセンツァSCV12クラブのためにサンタアガタ・ボロネーゼに新設したファクトリーでの保管サービスなどが含まれる。カスタマーのクルマはそれぞれ個室タイプのガレージに保管され、アプリから24時間いつでも愛車をモニタリングできるウェブカメラシステムなどの専用サービスが提供される。さらにこのファクトリーにはフィットネスジムのプロ、Tecnobodyによる「ランボルギーニ・スクアドラ・コルセ・ドライバーズラボ」が併設されており、ランボルギーニ所属のレーシングドライバーたちが実践するものに近いフィットネス・トレーニングプログラムも体験できる。
なお、スペシャルプログラムは2021年より、多くのFIA公認グレード1サーキットで開催される「arrive and drive」イベントとともに開始する予定。スクアドラ・コルセのテクニカルスタッフがアシスタントとして参加するほか、ル・マン24時間レースで5度の優勝経験があり、ドライビング指導にも定評のあるエマニュエル・ピロ、さらにランボルギーニ・スクアドラ・コルセのファクトリードライバーを務めるマルコ・マペッリのサポートも受けられる。
ランボルギーニ・モータースポーツ責任者のジョルジオ・サンナは次のようにコメントする。
「私たちはエッセンツァSCV12を介して、パフォーマンスやドライビングの楽しさだけでなく、ライフスタイル・エクスペリエンスも向上させたいと考えています。オーナーの皆様には、一人ひとりに合わせてカスタマイズできる特別なサービスを利用してイタリアが誇る最高のホスピタリティを満喫していただき、ランボルギーニ・スクアドラ・コルセファミリーの一員となっていただきたいと思います」