
一部改良が行われたレクサスLC500にコンバーチブル が新設定された。日本の美意識が宿る繊細なデザインやマテリアル、最先端のテクノロジーを備えて、レクサスの新たな世界への挑戦が始まった。そのニューモデルの真髄とは何か? ジャパンクリエイティブの宝庫、福島を旅する中でその答えが見えてきた。
レクサスが追い求める美の本質が表現されている
2017年にレクサスの最上級クーペとしてLC500/LC500hが登場した時の衝撃は、とても大きなものだった。デザイン、走り、そしてクラフトマンシップといったプレミアムカーを構成するあらゆる面でレクサスが新しい、そして独自の地平を切り拓こうとしていることを示したLCは、まさにブランドのフラッグシップらしい存在として君臨している。
そして2020年。国内レクサス開業から15年という節目の今年、そのLCが一部改良を行い、同時に待望のオープンモデル、LC500コンバーチブルがラインナップに加わった。
“和テイスト”などとは真逆の、本質的な日本の美意識を、グローバルなプレミアムカーの文脈の中で表現しようと挑み続けてきたレクサス。今回は、そのひとつの到達点とも言える、この贅沢なクーペとコンバーチブル2台を連れ立って旅に出た。目指したのは福島県。伝統を踏まえながら今を志す場所、モノ、ヒトを追いかけてのロングドライブである。

福島県立美術館/Fukushima Prefectural Museum of Art:住所/福島市森合字西養山1番地・電話/024-531-5511※8月31日~2021年春頃まで改修工事のため休館。
室内に乗り込むのが惜しい……。眺めていて、そんな思いを抱かせるクルマは他にはそうはない。LCのエクステリアは優雅であり、同時に力強い。鍛え抜かれたアスリートの身体が、繊細な立体で描き出されたスーツをまとっている。喩えるなら、そんな感じだ。
今回のマイナーチェンジでは外観には一切手は入れられていない。しかしいまだ色褪せることを知らないその魅力の前では、当然そうあるべきだと言っていいだろう。

1984年に開館した福島県立美術館。設計を担当したのは福島県三春町出身の建築家・大高正人で、ル・コルビジェの弟子であった前川國男の元を経て、1962年に大高建築設計事務所を設立。落ち着いた佇まいでありながら、36年の時を経てもモダンさを失わない完成されたデザインは、LC500にも通ずる普遍的な美しさが感じ取れる。
ソフトトップを用いた2+2のコンバーチブルの美しさにも、まさに目が釘付けになった。ルーフを閉じたときのコンパクトなフォルムもいいし、開けたときの単に水平基調に収めるのではなく、キャビン後端をキックアップさせることで演出された2シーター的なパーソナル感も惚れ惚れさせられるもので、特にそのリアビューには心揺さぶられてしまった。
旅先での出会いがLC500の理解を深めた
まずはLC500に乗り込む。すると、そこに広がるのは思わず息を飲むほど仕立ての良いインテリアだ。美しい曲面に沿ってピンと張られたレザーや、美しく揃ったステッチの精緻さには背筋が伸びるよう。とは言え、決して息苦しいわけではなく、優雅な造形、マテリアルの質感もあって、いかにも良いモノに触れているなという充足感で満たされてくる。

肉と野菜の農家 イタリアン Arigato/Meat and Vegetable Farmer Italian Arigato:住所/福島県郡山市安積4-35 1F・電話/024-983-9678・ランチ/11:00~15:00・ディナー/18:00~23:00・定休日/不定
それにしても本当に、よくこんなインテリアが実現できたものだと思う。ドアノブひとつ見ても、まるで工芸品のよう。マグネシウム製のシフトパドルの極上の手触りも、思わず手が伸びてしまう。

肉と野菜の農家 イタリアン Arigato/旅のランチは、美味しく楽しい「我が家」の食事をコンセプトに福島県産の新鮮な野菜や肉で作るイタリアンで。近隣の小学校では食育の授業も行ない、県内外へと福島の食の魅了を伝える活動も行っている。ランチはパスタ、サラダ、ドリンクがセットで1700円~。
都内から首都高を経て東北自動車道へ。まずはひたすら北上していく。ここでの嬉しい驚きは、LCのフットワークが従来よりも確実に洗練度を高めていたことだ。
今回のマイナーチェンジでLCクーペは、サスペンションパーツの多くをアルミ製としてバネ下を軽量化し、車体への入力を軽減。ボディにはパフォーマンスダンパーを装着して、その入力に対する減衰をコントロールしている。その効果はてきめんで、乗り心地はしっとりとした味わいを深め、フットワークも操作に対して、すっきり反応するよう進化している。長距離クルーザーとしての資質が格段に高まっているのである。

大内宿/江戸期には会津西街道の宿場として栄えていたが、鉄道開通に伴い宿場としての役割は終了。時を経て1981年、重要伝統的建造物群保存地区に選定され、かつての佇まいを活かした土産物店、宿泊施設などが並ぶ。箸の代わりにネギを用いてそばを食べる高藤そば(ねぎそば)が名物。
伝統は継承するが縛られない。この、新しいモノ作りの姿勢がレクサスと旅先の共通点だ
V型8気筒5L自然吸気エンジンは巡航中は低い回転域で粛々とトルクを提供することに徹する。それが追い越しなどでアクセルペダルに乗せた右足に軽く力を込めれば瞬時のレスポンスで応え、心地よいビートとともに爽快な加速が始まる。大排気量自然吸気スポーツユニットならではの快感は、今もって堪らないものだ。
最初に記したように、今回は単に長距離を往くだけではなく、伝統と今を融合させた様々な場所、モノ、ヒトを追いかけてもみた。詳細は美しい写真とキャプションを参考にしていただくとして、LCが多様な風景に難なく溶け込んでいる様、解っていただけると思う。福島県立美術館のような今の建築と絡んでも、雨の大内宿でしっとり濡れそぼっていても、とても絵になる。伝統や歴史に、決して負けていない。

会津東山温泉・向瀧:会津藩に仕える上級武士の保養施設を平田家が引き継ぎ、明治6年に宿泊施設として創業した登録有形文化財の向瀧。「変えるべきこと変えてはいけないことは、生きている木造建築の木々から教えられる気がします。最近は、自然の声に耳を澄ませて頭と体を休めたいとの想いでいらっしゃる、生き方にこだわりを持ったお客様が増えています」と、6代目当主の平田裕一さんは教えてくれた。
会津漆器の塗師一富に立ち寄り、きゅう漆(しつ)の冨樫孝男さんと話をすることもできた。会津塗とも呼ばれる伝統工芸品の工房。高校卒業後、この家業を継ぐことになった冨樫さんは輪島で修行させてくれることを条件に出したという。
「輪島塗が日本一で、会津塗は落ちると正直、そう思っていました。でも修行を終えて帰ってきて、改めて向き合うと『こんな良い技法があるんじゃないか』と気付かされて。徐々に、そうした伝統技法の復刻を始めたんです。 」

会津漆器「塗師一富」 冨樫孝男さん/Aizu lacquer ware “Nushi-Ichitomi” Takao Togashi:「鉄錆塗り」や「玉虫塗り」などの伝統的な技法を用いて香水瓶やショットグラスなどの現代的な漆器を作り上げる冨樫さん。会津漆器は一般的に掘り/塗りが分業となるが、自らの作品は木地彫りから行うこともあるそう。西洋のガラス器からもインスパイアを受けた冨樫さんの作品は、伝統の「継承」と「発展」が両立している。
技法はかつて手掛けていた職人が居れば聞き、残っていなければ試行錯誤の上に再現したりしているという。しかも冨樫さんは、伝統を再現するだけでなく、それを土台とした新たな表現にも取り組んでいる。実際、出来上がった漆器は、どれも美しいというよりスタイリッシュと形容したくなる仕上がり。しかも独創的で、素人目にも漆器の新しい可能性を感じさせるものばかりだった。
「塗師は皆、正倉院の御物を見て勉強するんですが、私は海外の器に興味があって。ガラスでも焼き物でも、見れば『これは漆で出来るんじゃないか?』ってばかり考えています。 」
工房の隅には地球儀。冨樫さんはこれを見て世界に思いを巡らせているのだそうだ。
迷わず前に進み続けるレクサスのモノ作り
続いてLC500コンバーチブルに乗り換える。オープンボディは非常にしっかりしていて、クーペと同様に直進性、快適性も非常に高い。しかも遮音が相当入念に行なわれたと見えて、ソフトトップを閉じているとオープンであることを忘れてしまいそうになる。
もちろん開ければ、風と陽光を思い切り楽しめる。室内への巻き込みも最小限で、高速道路でも心地よいV型8気筒サウンドを味わいながら、開放感たっぷりのドライブを満喫できるのだ。
改めて、こうした大人のクーペやコンバーチブルで過ごす時間は、とても満ち足りたものだなと感じた道中。日本のブランドから、こうしたクルマが登場することなんて、LC以前には想像できなかった。そう考えると、何やら感慨深い気持ちになってしまった。
歴史はもちろん大切にしながらも、過去に培われた常識に囚われることなく迷わず新たな地平へと漕ぎ出していく。伝統というのは単に守るだけではなく、先に進み続けることによってこそ実は継承、発展していく。クルマの世界も同じことなのだろう。
日本発の繊細なデザイン、マテリアルへのこだわりと最先端のテクノロジー、そして世界を見据えた視座が重なり合って、レクサスは今、世界のどこにもないプレミアムブランドとしてのあり方を確立しつつある。2台のLCで巡ったロングドライブは、まさにブランドの真髄へと触れる貴重な体験となったのだ。
【Specification】レクサスLC500 クーペ[コンバーチブル]
■車両本体価格(税込)=13,500,000円[15,000,000円]
■全長×全幅×全高=4770×1920×1345mm[4770×1920×1350mm]
■ホイールベース=2870mm
■トレッド=前1630、後1635mm
■車両重量=1930kg[2050kg]
■エンジン型式/種類=2UR-GSE/V8DOHC32V
■内径×行径=94.0×89.5mm
■総排気量=4968cc
■最高出力=477ps(351kW)/7100rpm
■最大トルク=540Nm(55.1kg-m)/4800rpm
■燃料タンク容量=82L(プレミアム)
■燃費(WLTC)= 8.4km/L[8.0km/L]
■トランスミッショッン形式=10速AT
■サスペンション形式=前マルチリンク/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/45RF21、後275/35RF21
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レクサスインフォメーションデスク 0800-500-5577