上位グレードになるに従いコーナリング性能が高まる
今回、試乗したワインディング路は、これまで何百台ものクルマで、同じコーナーを同じスピードで同じラインにのせて走らせてきたが、少なくとも上位5本の指に入るぐらいに思い通りに気持ち良く走れた。
最初に試乗した4Sで印象深かったのは、加速も減速もせずアクセル一定のまま入っていく中速コーナー。前後の荷重移動なしに曲がっていくのだが、ステアリングを緩やかに切り込んでいくだけで適度にフロント外側が沈み込んでタイヤがガシッと路面を捉えて曲がり始め、コーナーの中ほどでは前後のタイヤでバランス良く高い横Gを発生。ロールはあまり大きくないながらもじつにしなやかで、ヒタヒタと着実に路面を捉え続けていた。
これで文句なしといったところだったのだが、ターボに乗り換えてみるとステアリングを切り込んだときのダイレクト感がまず違った。これは4Sが20インチタイヤなのにたいしてターボは21インチであることが大きい。さらに、コーナーでの曲がりやすさもターボのほうが上回る。タイカン全般の傾向として、あきれるほどの大トルクの持ち主ながら、コーナーからの立ち上がりでアクセルを踏みつけていっても、タイヤのグリップが横方向に逃げそうなそぶりはほとんどなく、パワーを縦方向に伝えていく。
4Sでアクセルをちょっと踏みすぎたときには、リアに荷重がのってプッシングアンダー気味になるのだが、ターボは旋回しながら立ち上がっていけた。事前に細かなスペックを知らないまま乗ったので不思議だったが、4SになくてターボにあるのがPTVプラス(ポルシェトルクベクタリングプラス)だと知って腑に落ちた。電子制御リアディファレンシャルがリア左右のトルクを可変配分しているのだ。
ターボとまったく同じタイヤを履くターボSに乗り換え、ひとつめのコーナーに入っていったら、さらに舵が効くフィーリングに再び驚かされることになった。ステアリングを切ったら切っただけ、なんの抵抗もなくノーズがインに向いていく感覚。ターボSにはPDCC(ポルシェダイナミックシャシーコントロール)とリアアクスルステアリングが装備されていたのだった。前者は電気機械式のスタビライザーによってロールを大幅に抑制し、後者は低速コーナーでは回頭性を高め、高速コーナーでは安定性を高める。
さらに、荒れた路面でのスムーズな足さばきがひと際光っていたのだが、これはPCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)のおかげだろう。制動力の高さもさることながら、スチールブレーキよりも大幅に軽いのでサスペンションのストロークがスムーズなのだ。これによって乗り心地も向上。スポーツカーとしても圧巻だが、しなやかで落ち着いた乗り味との両立ぶりは、並みのプレミアムカーでは達成できない次元だ。