国内試乗

【国内試乗】アウディが放つEVグランツーリスモ!「アウディe-tronGT」

アウディのピュアEV、e-tronシリーズにスタイリッシュなクーペモデルが加わった。日本では半年で150台、グローバルでは半年で10万台を超える受注を受けるなど、EVの人気も高まっている。さらにアウディではAudi e-tron店を全国102店舗に拡充。そんな中、改めて日本仕様が導入されたe-tron GTの走りはいかに?

アウディの新たなるイメージリーダー

さる6月、2026年以降に市場投入する新型車を全てBEV化すると発表したアウディ。欧州の拙速なシフトには驚くほかないが、現実は既にそこに向かい始めている。
e-tronGTは、そんなアウディのBEVラインナップにおいてのトップレンジ、そしてイメージリーダーとなり得るモデルだ。

RS e-tron GTは0→100km/h加速が3.3秒、最高速度は250km/hをマーク。アダプティブエアサスペンションを標準装備するため、標準のGTと比べて車高は20mm低くなる。

ベースとなるJ1プラットフォームはVWグループ内のポルシェがタイカンで用いるものと同じ。全長や全高はわずかに違えどホイールベースは同じで、つまりは兄弟的関係といっても過言ではない。
が、両社のBEVにまつわるストラテジーは緊密で、間もなく登場するだろうPPEプラットフォームはBEV専用のアーキテクチャーとして共同開発している。今年の北京ショーで発表されたA6e-tronコンセプトはそれの採用を明言。来年以降の上市が予定されているほか、ポルシェの側もPPEを初採用するのが次期型のマカンではと噂されている。

サステナブルな素材を使ったオプションで用意される“レザーフリーパッケージ”は、リサイクル素材を用いたカスケードクロスと人工皮革を組み合わせ、印象的なウォーターフォールパターンをあしらったスポーツシートプラスを装着。

e-tronGTのグレードはスタンダードとRSのふたつがあり、駆動方式は共に前後軸にモーターを備える「クワトロ」となる。総合出力はスタンダードが476ps/640Nm、RSが598ps/830Nmとなるが、ローンチコントロール時は各々出力が一時的に向上する。このモードを使った場合の0→100km/h加速はスタンダードが4.1秒、RSで3.3秒。タイカンと同様、後軸は2速のトランスファーを持ち、最高速はスタンダードが245km/h、RSが250km/hと発表されている。動力性能的にタイカンと比較すれば、スタンダードは4S、RSはターボにほぼ比肩するというイメージだろうか。搭載バッテリーは共に容量93.4kWhで電圧は800V、最大150kWの急速充電にも対応しており、最近普及し始めた90kW対応のCHAdeMOであれば30分で40kW前後の充電量も見込まれる。

家庭用の普通充電をはじめ外出先でも充電が可能で、急速充電ステーションを利用した場合、わずか30分(90kWの場合)で最大250㎞以上の走行が可能という。

エクステリアのイメージは写真で伝わる以上にロー&ワイドだ。顔周りやお尻周りに標準的なアウディのモデルとの連続性を持たされているからか、ほぼ同じディメンジョンのタイカンよりはオーセンティックにみえるものの、モリモリに膨らんだリアフェンダーなど只ならぬディテールが佇まいに只ならなさを加えている。

e-tron GTは530ps/640Nm、RSでは645ps/830Nmを発揮。車両前後に配置された2基のモーターがそれぞれ前輪と後輪を駆動する、新世代の電動4WDシステムのクワトロを搭載。

インテリアはアウディの他モデルとの明らかな差異は見いだせない。勘どころは物理スイッチを残しており、使い勝手での不満は出ないだろう。質感的にはA6辺りの水準にある印象だ。後席は181cmの筆者の場合、天地に窮屈さは感じるものの、足元スペースのためにバッテリー配置を工夫したおかげで快適な着座姿勢が採れる。
今回はスタンダードとRS、ふたつのe-tronGTを比較試乗することができた。不満があろうはずがない動力性能も微妙な棲み分けがなされており、当然ながらいかなる状況でもRSの側は確実に速い。が、BEVとしては丁寧になまされていて、毒々しい加速力を誇示するようなキャラクターとは一線を画している。

この洗練されたチューニングのおかげで、e-tronGTは極微速からのコントロール性が非常に高い。10km/h以下の領域から、アクセル操作でじわじわと速度を合わせることができる。ハイパワーBEVの中では最も上質で実践的なパワートレインだと思う。
車格や重量を思わせない異様なまでのコーナリングパフォーマンスは、RSのそれたる所以だろう。が、4WSも持たないスタンダードモデルの所作も無理な味付けに頼らず自然、そして中立的に纏められている。乗り心地面もエアサスに対して著しい見劣りはない。総じてアウディらしく、清涼で透明度の高いキャラクターが印象的で、そこを軸足にみればグレード別の味わいの差は小さいと思う。

【Specification】アウディe-tron GT quattro[RS e-tron GT]
■車両本体価格(税込)=13,990,000円[17,990,000円]
■全長×全幅×全高=4990/1965/1415[4990/1965/1395]mm
■ホイールベース=2900mm
■トレッド=(前)1710[1700]mm(後)1695[1665]mm
■車両重量=2280[2320]kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー容量=93.4kWh
■定格電圧 =800V
■モーター種類 =永久磁石シンクロナスモーター
■モーター最高出力=530[645]ps(390[475]kW)
■モーター最大トルク= 640[830]Nm
■トランスミッショッン形式=フロント1速/リア2速
■サスペンション形式=(前)ウイッシュボーン/コイル、(後)ウイッシュボーン/エア
■ブレーキ=(前後)ディスク
■タイヤサイズ=(前)225/55R19[245/45R20]、(後)275/45R19[285/40R20]
公式ページ https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/tron/audi-e-tron_gt.html

フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2022年1月号より転載

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