現代的な完成度の2台は全方向にハイポテンシャル
BRZとボクスターの2台は明らかに(そして当然のことながら)最新スポーツカーに特有のモダンなドライビングファンテイストを備えていた。十二分なエンジンパワーと計算されたボディ剛性、精密なシャシーの動きが欠点なく連携する点で、非常に完成度の高いスポーツカーだ。FRにMRというエンジンレイアウトの違いこそあれ、誰が乗っても楽しいと思えると同時に、高い日常性を有している面においても、いわば同類、最新のテイストを持っている。
奇しくもこの2台にはフラット4が搭載されているのだけれど、エンジンそのもののフィールに魅力があることでも似通っている。BRZのそれは2.4Lで、コンパクトなモデルには今どき珍しい”大排気量”自然吸気ユニット。マニュアルミッションを駆使してエンジンを味わうという意味では、今回の4台のなかでもっともファンだった。昔のピュアなエンジンノイズに比べれば、サウンドといえるほど人工的に調律されており、それゆえ興醒めな瞬間もなきにもあらず、だったが、この時代に魅力あるエンジンをしゃぶりつくせる3ペダルのFRというだけで存在理由は大きい。
ボクスターTは軽量グレードであっても完成度の高さはキープしており、まるで隙のないミッドシップカーとして普段乗りからスポーツドライビングまでをよくこなす。フラット4ターボは快活で、まわす楽しみこそ限定されるものの、3ペダルで操ることの楽しさはきっちり備わっていた。オールマイティな実力が、4台のなかで頭抜けているのは間違いない。
こうしてみると、自動車の進化そのものが重量増であったという皮肉な事実は見逃せない。もっとも軽いロードスターから順に、スポーツカーを操るというクラシックな喜びそのものは減じてしまう。楽しいクルマにはアジがある。アジとはつまり進化の伸び代であったのかもしれない。