パンシロンの争い!
イタリアは魅力的で個性豊かな小型車(ピッコリーナ)の宝庫!そこで今回はランチア・イプシロンとフィアット・パンダの同門対決で乗り比べてみた。続けて乗ってみてわかった「パンシロンの争い」、その結果は!?
【写真30枚】似ているようでその世界観の作り分けは見事! イプシロンとパンダの詳細を写真で見る
仕事でトリノに出向いた時のこと。トリノはフィアットの総本山がある街だから、市内を行き交うクルマたちが気になって眺めていた。トリノの中心部は他のイタリアの街と同じく建物が密集しているためクルマも小さいモデルが多く、目についたのはフィアット・パンダ、セイチェント、プントだった。だが意外なのは走り回っているランチア・イプシロンが多いこと。我が国では街中で目にすることが少ないだけに、なかなか想像しにくい光景だった。
ランチアの歴史を詳細に書き出す余裕は無いが、1970年代にフィアットグループ傘下に収まってからはエレガントで上質、高い先進性というブランドイメージを上手にフィアットのクルマに吸収させ、シックでエレガントなクルマを送り続けて来た。単なるフィアットの上位ブランドではなく、別の世界観を持っているのもランチアの独自性だ。
コンパクトカーらしからぬしっとりとした乗り味
イプシロンはランチアのラインナップのボトムレンジを担当する小型車で、「アウトビアンキY10」の後継モデルとして1994年に初代が登場した(余談だがY10は本来ランチアブランド)。2011年に現行型の3代目に進化し、日本では2014年まで右ハンドルをクライスラーブランドで販売していた(さらに余談だがランチアは基本的に右ハンドルのクルマを作らない)。でもイタ車ファンとしては “左ハンドルのランチアのイプシロンに乗りたい!”とも思う。そんな夢を叶えてくれる一台が、今回ご紹介する「ランチア・イプシロン1.2GOLD」だ。
イプシロンは2015年のマイナーチェンジでフロントバンパーの意匠が変わり、クライスラー時代のマスクとは印象を少々異にする。ヒドゥン・ドアノブによって3ドアハッチバックのように見える外観の基本は変わっていない。
取材車が纏っていた、光によって表情を変化させる深い緑メタも、実にランチアらしい良い意味で難解なカラーだ。日本仕様の0.9Lツインエアエンジンではなくこの個体には1.2L直4「FIRE」ユニットと5速MTが搭載されるのもトピックである。というのもツインエアのパラパラというのどかなサウンドは、ランチアのイメージにそぐわないかな? と少し思っていたから。
もちろんツインエアは大好きだが実際に4気筒のイプシロンに触れて、その考えがあながち間違っていなかったと知った。やはり4気筒はパラツインに比べると静かでスムーズなのだ。乗り心地も車格を考えると重厚で、質の高いデザインの内装を眺めながら運転していると、ピッコリーナに乗っていることを忘れてしまいそうになった。