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10年足らずで消えた変わり種すぎるアメリカ車!「1960年型シボレー・コルベア」をAMT製プラモで学ぶ!【モデルカーズ】

空冷フラット6搭載の異端的RR車

コルベアは、1960年型から1969年型まで生産された、シボレーのコンパクトカーである。1950年代、ビッグスリーが手掛ける乗用車はフルサイズ・モデルばかりで、小さなボディサイズの車種は独立系メーカーに見られるのみであった。しかし当時、大きく派手になりすぎたアメリカ車への反動からか、フォルクスワーゲンなど欧州製小型車のシェアが拡大を見せており、ビッグスリーもコンパクトカー市場へ乗り出すことを決定したのである。

【画像11枚】貴重なキットを美麗に仕上げたコルベア、そのディテールを見る

それが、1960年型で揃って登場したヴァリアント(クライスラー)、ファルコン(フォード)、そしてコルベア(GM)の3車種だ。いずれも当時のアメリカ車としてはまだ少数派のモノコックボディを採用していたが、ヴァリアントとファルコンは機構的には保守的な内容であった。それに対し、コルベアは革新的なメカニズムの塊だった。空冷水平対向エンジン(6気筒)を搭載するRR車――それはまさに、フォルクスワーゲンからの影響を実感させるものである。

ボディサイズはフルサイズと比べるとかなり小さく、日本の5ナンバー枠に(全幅はギリギリながら)収まる大きさで、ホイールベースは108インチ(2743mm)。リアエンジン・レイアウトのためフロアはほぼフラットで室内は寸法以上に広く、ノーズをトランクとしたぶん荷物スペースも充分なものであった。ボディ形式は当初4ドア・セダンのみ、数ヶ月遅れて2ドア・クーペが加わっている。

コルベアのスタイリングはシンプルかつプレーンなもので、ノーズもリアデッキもフラットな造形とし、ウェストラインをぐるりとプレスラインで一周させていることが特徴だ。このスタイリングはヒルマン・インプやNSUプリンツ、我が国でも初代ファミリアやフロンテ800など、多数の車種に影響を与えた。なお、フラットなルーフとラップアラウンド型のリアウィンドウは、すでに前年型インパラで実現された形状の縮小版でもある。

エンジンはアルミ製のブロックを持つ水平対向6気筒OHVで、排気量は140-cid(2.3L)、最高出力80hp。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがスイングアクスル。ラインナップはベーシックなコルベア500と、若干豪華なコルベア700で構成されており、また2ドア・クーペにはモンザというモデルが設定された。このモンザはバケットシートを装備したスポーティなもので、その高い人気はマスタングの商品コンセプトに影響を与えたとも言われる。

初代コルベアはエクステリアの変更は少ないながらも年々バリエーションを拡充しており、まず1961年型ではステーションワゴンがレイクウッドの名で登場、これにも500と700の2種が設定された。エンジンは145-cid(2.4L)に拡大。次の1962年型では2ドア・コンバーチブルが加わり、ワゴンにもモンザを設定。さらに、クーペとコンバーチブルにはターボエンジン(150hp)を搭載したモデルをスパイダーの名で用意している。ほぼ変更のない1963年型を挟み、最後の1964年型ではエンジンを再び拡大、164-cid(2.7L)に。ベースモデル用の出力は95hpに向上、ターボ仕様は変化なし。また、ハンドリング改善のためリアサスペンションに改良が加えられている。

こうして、合理的なベーシックカーかつポルシェ的なスポーツカーという二面性で人気を博したコルベアは、他のコンパクトカーのように自社の既存モデルと競合することなく、セールス的には成功を収めていた。1965年型では二代目へとモデルチェンジ。世界規模でフォロワーを生んだスタイリングは柔らかなコークボトルラインへと変化、スタイルリーダー的存在として続くことを予想させた。しかし、コルベアの販売台数は下落していくこととなる。有名なラルフ・ネーダーによる欠陥車キャンペーンがその主な原因だ。

ネーダーの告発通りコルベアが欠陥車であったのかは意見の分かれるところだが、多くの事故の原因は、RR車の特徴的な操縦性にアメリカ人が不慣れであったためとも言われ、NHTSA(運輸省・道路交通安全局)の報告書でも、同様の機構を持つ車種と比較して特に危険とは言えないと結論づけられている。一方、当時のシボレーの責任者ジョン・デロリアンの自伝には、社内でその危険性について議論を持ち出したところ、GM上層部からは強く沈黙を求められた、という逸話も書かれている。

いずれにしろ、そこで指摘されている問題は2代目ではもう解決されていたのだが、GMはコルベアをフェイドアウトさせることに決め、モデルライフ途中からは広告活動も行われなくなっていた。最後の1969年型ではすでに4ドアも存在しない(前年の時点で消滅)などラインナップは大幅に整理されており、生産台数は約6000台に留まったと言われている。

微妙なボディカラー調色と塗装のコツ!
初代、二代目とも、コルベアのプラモデル化にはAMTの1/25スケールのものがあり、二代目(1969年型)はしばしば再販される一方、初代は当時のアニュアルキットのみ。以前にこのサイトでご紹介したファルコン同様1960年に、「COMPACT CAR CUSTOM KIT」シリーズの一作として登場している。これはアメリカンカープラモとしてはお馴染みの、プロモーショナルモデルを組み立てキットとしたものだが、1962年型からは2ドアに変更されている。ここでお目にかけているのは、初年度1960年型の4ドアのキット(AMTの別レーベルSMP版)を完成させたものだ。

基本的なフォルムは、ほとんどデフォルメを施していないプロモーションモデル特有のリアリティがある。しかし古さ(作例は2005年制作のものなので、その時点で45年前の品)は否めないようで、金型の段差やディテールなどに歴史を感じる。それらの修正にはやはり手間取ったという。特に、最大の特徴であるボディを取り巻くメッキモールが、均一かつスムーズに繋がるまで充分に修正。そしてそのモールドを消さないよう、塗装を極力薄く仕上げることが最大の課題であった。

下塗りのサフェーサーはクレオスの1200を溶剤で薄く溶き、エアブラシで軽く1回だけ吹く。2回目はサフェ代わりに、似た色のグレーを吹いてある。これにより薄くスムーズな下地が得られるのである。ボディカラーは純正色の「Cascade Green Metallic」(904-A)を参考にしつつ当時のカタログの色のイメージを優先、実際のカラーチップより少し黄色を強調。GSIクレオスのC8シルバーにアクセルSのグリーンを少しずつ加え、微量のブラックで暗くした後、アクセルSのメジャムイエローを加えている。

メタリックカラーを淡くする場合は、白ではなくシルバーを使うとよい。白を加えると濁ってぼやけた色になるからだ。直接白を使わなくても、白が含まれている塗料は多いので注意が必要だ。作例で使用されているグリーンやイエローは白を含まない調色用の色で、深みのある半透明な色である(注:現在では、GSIクレオスから販売されている色ノ源などが同様の塗料)。仕上げのクリアーもアクセルSのものを2回ほど吹いたのみ、磨き作業にはペーパーの使用はできるだけ控え、3M製コンパウンド3種類で仕上げてある。窓枠やボディ周りのメッキモールにはメタルックを使用、バンパーなどはアルクラッドで仕上げられている。

作例制作=畔蒜幸雄/フォト=羽田 洋 modelcars vol.116より再構成のうえ転載

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