シボレー

これが「いすゞジェミニ」の兄弟!MPC製プラモ「シボレー・シェベット」でアメリカンカーの幅広さを知る【モデルカーズ】

世界中にバラまかれたTカーのひとつ

1960年前後のアメリカの自動車メーカーは、フォード・ファルコンやシボレー・コルベアなどの所謂コンパクトカーを市場に投入したが、1970年代に入ると、欧州製あるいは日本製の小型車との本格的な戦いに挑むべく、さらに小さなボディの車種を投入するようになる。いわゆる、サブコンパクトカーの登場である。

【画像25枚】初代ジェミニのハッチバック版?シェベットの様子を細部まで見る!

GMはこのサブコンパクトとしてシボレー・ベガを1971年に送り出したが、さらに小さな”スモールカー”として1975年に、1976年型としてデビューさせたのが、シボレー・シェベットだった。このシェベットは、GM傘下オペルのカデットC(1973年)をアメリカ向けに仕立て直したものであるが、同時にGMの世界戦略車“Tカー”のひとつでもあった。同じGM傘下あるいは提携先である世界各国のメーカーからも、基本を共用するモデルが多数リリースされたのである。

我が国においてはいすゞの初代ジェミニ(1974年)がそのひとつとして有名であるが、Tカーは世界各国それぞれに合わせてボディ形状や細部デザインを変更しつつ、カナダではポンティアック、ブラジルではシボレー、イギリスではボクスホール、オーストラリアではホールデン、韓国では大宇と、様々なメーカー/ブランド名の下に展開された。またアメリカでも、ポンティアック版としてT1000というモデルが後に加わっている。

話を戻すと、基本となったオペル・カデットには2ドアと4ドアのセダン、2ドアのクーペなどが設定されていたが、シェベットは3ドア・ハッチバックのみ。ホイールベース95.3インチ(2395mm)だが、これはもちろんカデットと同じ数字である。スタイリングについては、我が国ではジェミニやカデットの印象から初期Tカー=逆スラント型フロントマスクのイメージが強いが、シェベットではスラントノーズとされ、グリルもヘッドライトと分離してメッキで装飾されており、アメリカ的に味付けされていた。

エンジンは1.4L(52hp)と1.6L(60hp)の直列4気筒SOHCエンジンを搭載、変速機は4速MTが標準だが、ターボ・ハイドラマチック(3速AT)も用意された。前述の通りボディはハッチバックだが、シボレーではこれをクーペと称し、オプション・パッケージ数種類を設定。すなわち、スポーティな“スポーツ・クーペ”(ボディサイドのストライプを加えたのみ)、さらにパフォーマンス志向の”ラリー・クーペ”(1.6L車に強化されたサスペンションやタコメーターなどを加えたもの)、木目パネルでワゴン風に装った“ウッディ・クーペ”(木目調のボディサイドトリムや室内パネルを装備)、ビジネスライクな”スクーター・クーペ”(リアシートが無くバンパーも塗装仕上げなど)の4種である。

1977年型ではウッディ・クーペの設定が消えて”サンドパイパー”に入れ替わるなどしたが、さらに1978年型では5ドアが追加された。これはドア枚数の変化だけでなく、ホイールベースも2インチ(50.8mm)延長されている。なお、ここまで3/5ドアと記述してきたが、シボレーとしては”クーペ”の名称を使っていることからも分かる通り、2/4ドアと称していた。

1978年型ではグリルのデザインを格子状に改め、さらに1979年型でフロント周りのデザインを一新。ヘッドライトを角型とし、グリルをひとつながりの長方形としたシンプルなマスクとなった。こののち、1981年型ではいすゞ製ディーゼル・エンジン搭載モデルを追加、1983年に再びマイナーチェンジを行うなどの変化を経て、シェベットは1987年型までラインナップされた。

あくまでストックで、シンプルきわまりない姿を味わう
このシボレー・シェベットのプラモデル化は、MPCによる1/25スケールが唯一のキット化だ。MPCではファースト・イヤーの1976年型はキット化されておらず、1977年型と、グリルを格子状にした1978年型、そしてフロント周りを四角くマイチェンした1979年型のシェベットを発売している。プロポーションは非常に正確なもので(箱側面には、実車のブループリントを元に設計された旨も記述されている)、細かいディテールも丁寧にモデル化されていて好印象だ。

エンジンフードのラジエターグリルはグリル部分がメッキの別パーツだが、周囲に不自然な隙間が生じて、顔の印象が実車と少々異なってしまっている。作例では、グリルパーツのメッキを剥がしてエンジンフードに接着し、隙間を埋めてボディカラーで塗装後、メッキ部分にハセガワのミラーフィニッシュを貼り込んでいる。テールランプハウジングも周囲に隙間ができるが、こちらはテールランプをそのまま使うこととして、ボディの凹部にプラ板を貼り、開口部をひと周り小さくした。

エンジンはコンパクトな1.4L 直4で、カスタムのツインキャブとファンネルのパーツがオプションで付属するが、ここはもちろんストック仕様のシングルキャブで仕上げている。必要な補器類は揃っていて、そのまま組んでも実車のシンプルな雰囲気が充分に伝わる。プラグの点火順が不明だったのでコードは省略しているが、ノヴァの4気筒と同じ順なら、デスビを上から見て左上を1番として、配線は時計回りに1-4-2-3となるはずである。

シャシーは足周りと一体成形のシンプルなパーツ構成で、エキパイも一緒にモールドされている。タイヤ/ホイールも2種類付くが、オプションの14インチではなく、やはり13インチを選んだ。ただし、13インチのタイヤは2枚合わせのプラスチック製。国産のゴムタイヤで流用できそうなものもあるだろうが、作例ではパーツをそのまま使い、完成後は接地面を少し平らに削った。13インチのホイールは一体成形の鉄ちん&センターキャップ。さすがにメッキが傷んでいたので、前後のバンパーと共に、古いメッキを剥離してリクローム処理を施した。

作例制作=畔蒜幸雄/フォト=服部佳洋 modelcars vol.194より再構成のうえ転載

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