メルセデス・ベンツ

【国内試乗】エレガントなスタイルのラグジュアリークーペ「メルセデス・ベンツCLE クーペ」

メルセデス・ベンツに新しい2ドアクーペのクラス、CLEクーペが追加された。伝統ともいえるロングホイールベースにショートオーバーハングロングボンネットを採用したスタイルは、まさにクーペの王道ともいえるエレガントな佇まいだ。果たしてその走りはどうだったのか──?

デザインだけではなく走りの洗練度も高い

CLEクーペは、CクラスとEクラスのクーペを統合して生まれた新しいクラス。本国での発表は2023年7月だったが、国内での発売は2024年3月からだ。
最新モデルの魅力は、クーペならではのエレガンスに磨きをかけてきたこと。従来モデルはフロント周りがセダンと代わり映えせず、スペシャリティぶりには物足りなさを感じた。今回はクーペ専用のデザインとなり、エモーショナルな印象も際立たせている。

【画像12枚】流麗なスタイルが魅力のメルセデスベンツCLEクーペ

メルセデス・ベンツCLE200 クーペ・スポーツ

ただ、インストルメントパネル周りのデザインがEクラスではなくCクラスとほぼ一緒というあたりが惜しまれる。そもそも、CLEクーペはCクラスクーペの後継モデルとしての役割も兼ねるだけに致し方ないところではある。

従来モデルのE200クーペは1.5Lだったが、新型ではは2Lエンジンとなったので日常的な場面でも力強さの余裕が実感しやすかった。

パワーユニットは、2Lの直列4気筒ターボにモーターを組み合わせるマイルドハイブリッドを搭載。モーターは完全な脇役ではなく、短時間ながら23psと205Nmを発揮する電動ブースターとなる。実際に、アクセルを踏み込むと力強さを速やかに稼ぎ出し、日常的な場面ではトルクの余裕が確かめられる。加速も伸びやかであり、低いギアなら6000rpmを超える勢いで一気に吹け上がる。

インストルメントパネルにはドライバーの正面が12.3インチ、中央が11.9インチの高解像なディスプレイを装備。

しかも、エンジンは中回転域から意外なほどの迫力があるサウンドを響かせる。走行モードがスポーツならサウンドにビート感が重なり、加速の刺激を演出する。
サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン的な4リンク式でリアはマルチリンク式を採用。試乗車はドライバーズパッケージを装備していたので、ダンパーの減衰力を連続可変制御するダイナミックボディコントロールを組み合わせる。さらに、4輪操舵システムのリアアクスルステアリングも追加される。

 

専用開発された前席は適度な包まれ感があり座り心地も快適。

走行モードがコンフォートなら、サスペンションはしなやかに動く設定となる。路面にうねりを通過する際は、フワッとした縦揺れと同時にわずかではあるが斜め揺れを感じることもある。だが、姿勢変化は次の瞬間には収まる。
モードをスポーツにすれば余計な揺れは気にならず、フラットな姿勢を維持。それでいて硬さを意識することはなく、荒れた舗装路でも不快感を伴う振動とは無縁だ。それこそ、スポーツがコンフォートでいいとさえ思える設定だ。

後席は平均的な体格の男性なら窮屈感を覚えずに済むが、シートバックの角度が立ちぎみなのでリラックスしにくい。

ステアリングの切れ味からは、近年のメルセデス・ベンツに共通するスムーズさが確かめられる。高精度なステアリングのギアがフリクションなく噛み合っている証拠だ。そのため、走行モードがコンフォートなら手応えがかなり軽めでも、微妙にそれが増し切り込む過程ではタイヤのグリップ力の立ち上がりぐあいが伝わってくる。
リアアクスルステアリングは、60km/hまで前輪と逆位相で後輪が最大2.5度まで操舵される。最小回転半径はAクラスと同じ5mとなり、Cセグのコンパクトカーに迫るほど小回りが効く。だが、操舵の角度が大き過ぎないので後退時にリアの軌跡が予想より内寄りになるといった違和感がない。一方60km/h以上では前輪と同位相で後輪が最大で2.5度まで操舵され、高速域のレーンチェンジ終了時にはクルマが自律的に直進に戻るような安心感がある。

タイヤは19インチが標準だが、試乗車は20インチを装着し接地感は硬すぎない。4輪操舵のリアアクスルステアリングがなくても最小回転半径は5.2mと小回りが効く。

ちなみに、CLEクーペはEクラスクーペと比べてボディ全長が5mm長く全幅は同じで、車高は10mm低くホイールベースは10mm短い。車高の低さによりスマートに見えるが、ホイールベースの差による室内スペースへの影響が気になるところではある。
実際には、前席で男性としては大柄な筆者が最適な運転姿勢を選び後席に移っても膝の前にはスペースの余裕が確保される。だが、頭上のスペースはゼロだ。平均的な体格男性であれば、4名乗車も可能な実用性も備えているわけだ。

トランクスペースは420Lを確保。サイズに制約があるはずだがゴルフバック2セットの収納も可能とのことだ。

【Specification】メルセデス・ベンツCLE200 クーペ・スポーツ
■車両本体価格(税込)=8,500,000円
■全長×全幅×全高=4850×1860×1420mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前:1605、後1585mm
■車両重量=1760kg
■エンジン型式/種類=254M20/直4DOHC16V ターボ+モーター
■総排気量=1997cc
■エンジン最高出力=204ps(150kW)/5800rpm
■エンジン最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1600-4000rpm
■モーター最高出力=15kW/1500-3000rpm
■モーター最大トルク=205Nm/0-750rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=14.5km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/35R20、後:275/30R20
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

フォト=山本佳吾 ルボラン2024年6月号より転載

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