新型Gクラスの試乗記はいかがでしたか? そんなGクラスを作っている工場とはいったいどんなところなのか、気になりますよね? ここでは、試乗会に先立って訪れたファクトリーと、その類まれなるオフロード性能を存分に体感できる、エクスペリエンスセンターについてご紹介していこう。
アナタも行ける!? Gクラスの工場見学
SクラスやEクラスと並び、Gクラスはメルセデス・ベンツの歴史の中で最も長く生産され、最も長い歴史を持つ乗用車のひとつである。そんなGクラスの生産を1979年の初代から担ってきた工場があるのは、ドイツではなくオーストリアのグラーツ。“マグナ・シュタイア”がここでGクラスのすべての生産を管理している。そもそも、この拠点は“シュタイア・ダイムラー・プフ”のひとつの部門だった。2001年にカナダの自動車部品サプライヤーのマグナ・インターナショナルが買収し現在の企業形態となった。マグナ・シュタイアは自動車の開発・生産を生業とする会社で、BMW・Z4/GRスープラやジャガーEペイス/Iペイスなどの生産も請け負っている。年間の生産台数は約20万台で、数社からの生産委託を同時にこなす会社としては世界最大規模を誇っている。
塗装工程は部分的にロボットにも任せるが、細かい部分については作業者自らが行なう。
Gクラス工場のエントランスに置かれていたのは、昨年50万台の生産台数を記録した際に仕立てられた特別仕様車で、1986年式の289GEのボディカラーやシート表皮などが再現されている。ちなみにGクラスは今年、生産45周年を迎える。
ウィンドーに接着剤を塗布する工程。以前は人力に頼っていた工程で、これでもずいぶん近代的になったのだ。
工場内はゴルフ場にあるような電動カートに乗せられて見学する。こういう仕事をしているので、自動車の生産工場にはちょくちょく訪れるけれど、Gクラスの生産ラインでもっとも象徴的なのは、とにかく人が多いことである。実際の作業はロボットが行ない、人はそのオペレーターに徹するような工場が増えてきた昨今において、いまだに人力が生産ラインのメインとなっている工場は珍しい。オートメーション化をしていない理由について伺った。
重量物は機械が支えるが、組み立て作業は人の手による。この丁寧な組み立て作業も、いまやGクラスの魅力のひとつだ。
「オートメーション化に関しては、これまで何度か検討してきましたが、おかげさまでGクラスは需要に対してつねに供給が追い付いていない状態が何年も続いています。オートメーション化を図るためには一時的に生産ラインを止める必要があり、納車まで数年待ちというお客様へのご迷惑をさらに助長することになりかねない。Gクラスは最初からずっとこのスタイルで生産してきました。多少時間はかかりますが、作業員はみな熟練されており、1台ずつ丁寧に組み上げることにプライドを持っています。いまではこれもGクラスの魅力のひとつになっていると自負しており、だったら可能な部分のみオートメーション化して、基本的にはこれまで通りでいこうということになりました」
ラダーフレームの生産工場でしかお目にかかれない、フレーム部とボディの結合の工程。
取材当時は新型Gクラスの発表を数日後に控えていたが、そのタイミングでもラインに流れているのはいまでは従来型となったモデルのみだった。
グラーツにはもうひとつ、Gクラスにまつわる施設がある。“Gクラス・エクスペリエンスセンター”は、グラーツ空港に隣接する約10万平方メートルの広大な敷地に、3種類のオフロード・テストコースを備えている。
Gクラス・エクスペリエンスセンターには3種類のコースが設置されていて、写真のように渡河水深を試す場所もある。
オフロード走破性能を示す際に、例えばアプローチ/デパーチャアングルや渡河水深などが用いられるが、その数値だけを見て「なるほどこれは凄い」と容易に判断できる人は決して多くない。Gクラス・エクスペリエンスセンターでは、Gクラスが有する性能が実際のところどれくらいのものなのかを知る場所である。急勾配での上り下りや池を渡ったりなど、夢の国のアトラクションさながらの運転が体験できるようになっている。
後方に見えるのは最大勾配登坂を試すコース。頂上から下を見下ろすと、ほぼ直角に見えるくらいの勾配だ(実際には約35度)。
そして、もしドイツでGクラスを購入すると、約2500ユーロ(一泊二日の宿代と夕食代、送迎などを含む)支払えば、Gクラス・エクスペリエンスセンターでの納車式と走行体験、工場見学などを楽しめるそうだ。
ドイツ国内でGクラスをオーダーすれば、有料で納車式をGクラス・エクスペリエンスセンターで行なえる。工場見学もセットだ。