
ボルボの新時代を告げるEVセダン「ES90」
ボルボ・カーズは2025年7月10日、今夏後半より生産を開始する予定の新型EVセダン「ES90」に関する続報を公開した。ES90は長年ボルボのフラッグシップセダンとして君臨してきたS90の実質的な後継モデルであり、デザイン、パフォーマンス、そして何よりもサステナビリティにおいて、既存のボルボ車をあらゆる面で凌駕する新時代の象徴として登場する。
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環境性能と技術革新で既存モデルを凌駕
ES90で特筆すべき点は、その圧倒的な環境性能である。ボルボが公開したライフサイクルアセスメント(LCA)レポートによれば、ES90のライフサイクル全体でのカーボンフットプリントは、欧州の標準的なエネルギーミックスで充電した場合で31トンに抑えられている。この数値は、S90のマイルドハイブリッドモデルと比較して約50%、プラグインハイブリッドモデルと比較しても約30%低い。さらに、既存のEVであるEX40やEC40をも下回るものであり、ES90がボルボ史上最もクリーンな車のひとつであることを証明している。風力発電による充電を選択すれば、その値は26トンにまで低下するという。
この卓越した環境性能は素材から見直されている。車体にはリサイクルアルミニウムを約29%、リサイクルスチールを約18%使用し、内外装の樹脂部品にはリサイクルポリマーやバイオベース材料を16%採用している。特に内装では、ペットボトルをリサイクルした素材やバイオ由来の原料から作られる「ノルディコ」を選択可能とし、高級感と環境配慮を高次元で両立させた。こうした製造段階からの徹底した取り組みが、ES90の環境性能を実現する根幹をなしているのである。
パフォーマンスと効率性においても、ES90は既存のボルボ車とは一線を画している。駆動系には新型の800V高電圧電動システムを採用し、既存のボルボのEVを上回る効率と充電性能を実現している。350kWの急速充電ステーションにおいて10分間で300kmの航続距離を追加でき、その航続距離は最大600kmに達すると見込まれ、長距離ドライブへの不安を払拭する。
さらにES90のボディは、SUVのEX90と共通のモチーフを持つ新世代のデザイン言語で描かれながら、徹底的にエアロダイナミクスが追求された。その結果、空気抵抗係数(Cd値)はボルボ史上最高の0.25を達成。これは、走行時の空気抵抗を最小限に抑えエネルギー消費を低減し、航続距離の伸長に貢献する。
ボルボならではの安全への取り組みも健在で、同社の厳格な安全基準を満たすよう強力なセーフティケージ、最先端の乗員拘束システム、最適化された変形ゾーンが採用されている。さらにはLiDAR 1個、レーダー 5個、カメラ 7個、超音波センサー 12個を含む、高度なセンサー群がボディに搭載され、アクティブセーフティの分野でも最先端のドライブが可能だ。
ボルボはES90を「サステナビリティへの包括的なアプローチを象徴する1台」と位置づける。テールパイプ排出ガスゼロというEVの基本的な利点に加え、クライメートニュートラルなエネルギーによる生産、サプライチェーンの透明性を確保する世界初の「バッテリーパスポート」の導入など、車両の生涯にわたる環境負荷の低減を追求している。
最初の顧客向けES90は、2025年夏に生産ラインから出荷される。現在、オーストリア、ベルギー、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスで注文可能で、その他の市場においては2025年後半および2026年に追加される予定となっている。
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