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メルセデスAMGは2025年8月25日、次世代EVスポーツの技術的指標となるコンセプトカー「CONCEPT AMG GT XX」が、数々の長距離走行記録を更新したと発表した。イタリアのナルド・サーキットで行われたこの挑戦は、「8日間で世界1周」という壮大な目標を掲げ、見事7日間と13時間あまりで地球の円周に相当する40,075kmを走破。来年にも量産モデルに搭載される予定の革新的な電動パワートレインが、その驚異的な性能と耐久性を証明した形である。
【画像40枚】歴史を刻んだオレンジの弾丸。記録を更新し続けた「AMG GT XX」の勇姿を全方位から
24時間で5479km、驚異の連続走行性能
今回のレコードアタックで特に注目すべきは、電気自動車による24時間での走行距離記録である。CONCEPT AMG GT XXは、従来の記録であった4000km弱を1500km以上も上回る5479kmを走破し、歴史を大きく塗り替えた。これは、今後のAMG製EVが、内燃機関モデルに勝るとも劣らない長距離性能を持つことの力強い証明と言えるだろう。
挑戦の舞台となったのは、高速周回路で知られるイタリアのナルド・サーキット。車両はシミュレーションによって導き出された最適速度である時速300km/hを維持し、充電のためにのみピットストップするという過酷なスケジュールで走行を続けた。
日中の気温が35度に達することもある厳しい環境下であったが、パワートレインは全く問題なく性能を発揮し続けたという。さらに、今回は2台の車両が同時に挑戦を行い、地球1周以上の距離を走破した末に、わずか25km差でフィニッシュラインを通過。これは、AMG.EAアーキテクチャの信頼性の高さを如実に物語る結果である。
新記録を支える革新的テクノロジー
この偉業を可能にしたのは、メルセデスAMGが独自に開発を進めてきたEV専用プラットフォーム「AMG.EA」の技術である。その核心は、3基の「アキシャルフラックスモーター」と、F1技術にインスパイアされた「直冷式高性能バッテリー」だ。
パワートレインは、フロントに1基、リアに2基の油冷式アキシャルフラックスモーターを搭載し、合計で1000kW(1360ps)以上の最高出力を発生させる。このモーターは、メルセデス・ベンツ傘下の英YASA社との共同開発によるもので、従来のモーターに比べて約3倍の出力密度を誇り、軽量コンパクトかつ高出力という特徴を持つ。
バッテリーも完全な新開発であり、3000個以上の円筒形NCMAセルを、電気を通さない特殊なオイルで直接冷却する方式を採用。これにより、各セルの温度を常に最適に保つことができ、過酷な連続走行と超高速充電を両立させた。充電は平均約850kWという、現在のインフラを遥かに超える出力で行われ、わずか5分間の充電で約400kmの走行に必要なエネルギーを回復できるという。
AMGの未来を告げるマイルストーン
メルセデスAMGは、かつてのC111での記録挑戦から、近年のメルセデスAMG ONEによるニュルブルクリンク最速記録に至るまで、常に技術の限界を押し広げてきた歴史を持つ。今回のCONCEPT AMG GT XXによる記録達成は、その伝統をEVの時代においても継承し、電動パフォーマンスの新たな次元を切り拓くものである。
この挑戦の成功は、単なるコンセプトカーのデモンストレーションにとどまらない。ここで試されたアキシャルフラックスモーターや直冷式バッテリーといった技術は、来年にも登場が予定されているAMG.EAプラットフォーム採用の市販モデルに搭載される、量産準備の整ったテクノロジーなのである。電動化時代においても妥協のない、真のAMGパフォーマンスを顧客に届けるというブランドの固い決意が、今回の歴史的な記録によって示されたと言える。
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