
第2世代へと飛躍したフォルクスワーゲン「T-Roc」
フォルクスワーゲンは2025年8月27日、世界的なベストセラーSUV「T-Roc(ティー・ロック」の第2世代モデルを世界初公開した。2017年の初代デビュー以来、全世界で200万台以上を販売してきたヒットモデルが、8年の時を経て完全新開発のモデルとして生まれ変わった。デザイン、テクノロジー、パワートレイン、そしてユーティリティの全てにおいて大きな飛躍を遂げた新型T-Rocは、再びコンパクトSUVセグメントに確固たる地位を築くことになりそうだ。
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新たなアイコンは光るエンブレム。ボディ拡大で走りも予感させるスタイリング
エクステリアデザインは、一目で新型とわかる力強くクリーンな造形へと刷新された。初代から受け継がれるクーペのような流麗なリアエンドといったT-RocならではのDNAは健在ながら、そのプロポーションはよりダイナミックなものへと進化している。これは、先代モデルと比較して全長が12cm延長されたことによる恩恵であり、伸びやかなシルエットと力強いスタンスを実現している。
特に印象的なのは、先進性を際立たせる新たなライティングデザインである。フロントには新型のLEDヘッドライトが標準装備され、オプション(ドイツ本国仕様のR-LineおよびStyleでは標準)で設定される「IQ.LIGHT LEDマトリックスヘッドライト」は、細いライトストリップを介して白く光るVWロゴへと繋がる、先進的で印象的なマスクを形成する。
リアにおいても、装備によっては赤く光るVWロゴを中央に配した連続的なLEDクロスバーが採用され、夜間における独自の存在感を放つ。ボディカラーには、鮮やかな「キャナリーイエローソリッド」や「フレイムレッドメタリック」といった新色を含む全6色が用意され、ルーフをブラックソリッドで仕上げる2トーンカラーも選択可能だ。
13インチ大型画面が鎮座。デジタル化と上質さを両立した新世代コクピット
インテリアは、今回のフルモデルチェンジにおけるハイライトの一つと言えるだろう。ダッシュパネルには新開発のファブリック素材が用いられ、柔らかな手触りと上質な印象を与える。これにアンビエントライトが組み合わさることで、まるでラウンジのような心地よい空間が演出されている。
コクピットは全面的に再設計され、最大33cm(13インチ)にも及ぶ大型のインフォテインメントスクリーンがその中心に鎮座する。また、上級モデルである「ティグアン」や「タイロン」から受け継いだ数々の機能も注目に値する。走行プロファイルの選択や音量調整などが可能な最新世代の「ドライビングエクスペリエンスコントロール」や、このクラスでは初採用となるオプションのフロントガラス投影型ヘッドアップディスプレイは、ドライバーに直感的でストレスのない操作性を提供する。
全長延長の恩恵は後席に。クラスを超えた居住空間と475Lの荷室
ボディサイズの拡大は、居住性と積載能力の大幅な向上にも貢献している。延長された12cmの全長は、特に後席の居住性に大きなゆとりをもたらした。これにより、身長185cmを超える乗員がフロントシートに座った状態でも、後席に同等の身長の乗員が快適に座ることが可能となっている。さらに、T-Rocとしては初めて、マッサージ機能を備えた14ウェイ電動調整式の「ergoActiveシート」がStyleバージョンに設定され、長距離ドライブにおける快適性を格段に高めている。
ラゲッジスペースも、従来比で30L増の475Lを確保し、日常使いからレジャーまで幅広いニーズに応える十分な容量を実現した。また、全モデルで牽引フックの装着が可能で、その最大牽引重量は80kgと、重量のある電動アシスト自転車の運搬にも対応している。
上位モデル譲りの先進運転支援。スマホでの自動駐車も可能に
新型T-Rocの革新性を支えるのが、最新世代のモジュラー・トランスバース・マトリックス「MQB evo」プラットフォームの採用である。これにより、ハードウェアとソフトウェアの両面で大幅な進化を遂げ、これまで上位クラスの車両にのみ搭載されてきた先進技術が数多く採用された。
運転支援システム「トラベルアシスト」は新世代へと進化し、自動でのレーンチェンジ支援機能に加え、制限速度やその解除に対して、より予測的な制御を行うことが可能となった。駐車支援システムも大幅に強化され、新たに搭載された「パークアシストプロ」は、一度学習させた最大50mまでの駐車操作を完全自動で再現するメモリー機能を搭載。さらに、スマートフォンを使った車外からの遠隔操作による駐車・出庫も可能としている。安全装備としては、降車時に後方から接近する車両や自転車を検知して警告する「エグジットウォーニングシステム」もオプションで用意された。
パワートレインは全車ハイブリッド化へ。まずは2種類のマイルドハイブリッドから
パワートレインは、電動化へと大きく舵を切った。欧州市場向けには、革新的なハイブリッド・ターボ・ガソリンエンジンのみがラインナップされる。市場導入時には、85kW(116ps)と110kW(150ps)の2種類の出力を持つ48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の1.5L eTSIエンジンが用意される。これらのエンジンには、7速デュアルクラッチギアボックス(DSG)が組み合わされる。将来的には、完全新開発となる2種類のフルハイブリッドシステム(前輪駆動)の追加も予定されている。また、先代モデル同様、2.0L TSIエンジン(マイルドハイブリッド仕様)と4MOTION(全輪駆動)を組み合わせたモデルや、シリーズ最強の「T-Roc R」も後日ラインナップに加わる予定だ。
フォルクスワーゲンは、新しいグレード構成と装備体系によって、顧客がより簡単に、そして魅力的な価格で好みの仕様を選べるようにしたと説明している。グレードは、基本の「Trend」、快適性を重視した「Life」、そして上級仕様としてデザインとテクノロジーに焦点を当てた「Style」、スポーティネスを追求した「R-Line」の4つに再編された。個別のオプション装備やパッケージは顧客の好みに合わせて最適化され、パッケージの種類自体も半減させることで、より分かりやすくシンプルな構成を実現した。
ドイツ本国では、2025年8月28日より先行販売が開始され、市場投入は11月を予定している。85kW(115ps)仕様の1.5 eTSIモデルの価格は30,845ユーロ(約530万円)からと発表された。
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初代モデルの成功を礎に、デザイン、品質、テクノロジー、そして実用性の全てにおいて次世代の水準へと飛躍を遂げた新型T-Roc。ポルトガルのパルメラ工場で生産され、欧州市場からその新たな歴史をスタートさせるこの一台が、世界のコンパクトSUV市場に再び大きなインパクトを与えることは間違いないだろう。
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