
未来のオートバイはヘルメットが不要になる?
BMWモトラッドは、まもなく開催されるIAAモビリティ2025において、都市における二輪モビリティの未来像を鮮烈に描き出すコンセプトモデル「BMW Motorrad Vision CE」を展示すると発表した。単なる電動化の先にある、より自由でカジュアルな移動のあり方を提案するこの1台は、二輪車の常識であったヘルメットやプロテクター装備の必要性を過去のものにする、革新的な安全思想を核に据えている。
【写真44枚】ノーヘルでも乗れちゃう? BMWのコンセプトモデル「Vision CE」の詳細を見る
ボディ構造とシートベルトで乗員を保護
Vision CEが目指すのは、排出ガスを一切出さないクリーンな走りだけではない。ライダーを物理的な制約から解放し、気ままなライディング体験を提供することにある。ヘルメットやプロテクターといった煩わしい装備から解放されることで得られる開放感は、日々の通勤という行為を、新たな発見に満ちた心躍る時間へと昇華させる。BMWはこのVision CEを通して、未来の都市型二輪モビリティが持つべき新たな基準を打ち立てようとしているのだ。
この革新的なコンセプトは、決して突発的に生まれたものではない。BMWグループが掲げるサステイナビリティ戦略の下、BMWモトラッドは都市における電動モビリティの可能性を絶えず問い直し、排出ガスゼロ、革新性、そして画期的なデザインを融合させる挑戦を続けてきた歴史がある。
Vision CEの思想的源流は、さらに遡ること25年前に発表された「BMW C1」に見出すことができる。洗練されたセーフティボディワークによって、当時としては画期的なヘルメット着用の義務を不要(法規で認められた国に限るが)としたC1は、都市モビリティに革命をもたらした。Vision CEは、このC1が示した基本的な設計哲学を現代の技術とデザイン言語をもって再解釈し、他に類を見ない先進的なビジョン・ビークルとして昇華させた。
二輪車で都市を駆ける楽しさを再定義
その安全思想の根幹をなすのが、車体の中心に据えられた「ケージ」と呼ばれる金属チューブ複合材だ。このケージがライダーを保護する堅牢な空間を形成し、適切なシート構造とシートベルトを組み合わせることで、従来の二輪車では考えられなかった高い安全性を確保する。これにより、ライダーはヘルメットやプロテクターといった装備を身に着けることなく、安全かつ開放的なライディングを享受することが可能となる。
Vision CEのデザインは、このケージ構造の存在を前提に、機能性と美学を高い次元で融合させている。ケージによって全体の高さを抑え、オープンで開放的な構造とされた車体は、ロングホイールベースと相まって、伸びやかでダイナミック、そして視覚的に極めて軽快なシルエットを描き出す。コーティングが施されたアルミニウムを大胆に用いることで、高級感とテクニカルな印象を付与。基本色であるマットホワイトと、対照的なブラックの組み合わせが、無駄を削ぎ落とした彫刻のような造形美を際立たせている。さらに、レタリングが組み込まれたエレガントなマット仕上げのシートベンチや、グラフィック、細部のディテールにあしらわれたネオンレッドのアクセントが、革新的なカラースキームを完成させている。
テクノロジーの面でも、Vision CEは未来を予感させる。特筆すべきは、停車時に車両が完全に自立することを可能にするバランシング機能だ。この機能は、信号待ちなどで足を着く必要性をなくし、都市部でのライディングにおけるストレスをさらに軽減する可能性を秘めている。
Vision CEは、その独自のケージデザインによって、二輪車で都市を駆ける楽しさを根本から再定義する1台である。また、デザインの異なる派生モデルの存在が示唆されていることは、このビジョン・ビークルが持つ高い多用途性と、様々なライフスタイルに適応しうる未来の可能性を物語っている。これは単なるコンセプトの提示に留まらず、次世代のシングル・トラック・モビリティが向かうべき道を明確に照らし出す、BMWの力強い意思表明なのだ。
【写真44枚】ノーヘルでも乗れちゃう? BMWのコンセプトモデル「Vision CE」の詳細を見る