国内試乗

新型「日産リーフ」試乗。プラットフォーム刷新、「スーっと滑らか」な走りと、その乗り味を試す

クロスオーバースタイルに一新した新型「リーフ」。ファストバックスタイルのシルエットや空力を考慮し、電動格納式のアウトサイドドアハンドルやフラットな床下に至るまで、徹底的に空力性能を磨きあげ、同クラスとしてトップレベルの0.26という非常に優れた空気抵抗係数(Cd値)を実現。
日産新型リーフ:空力を考慮しデザインされたホイール。
日産新型リーフ:フロントは、6つの丸みを帯びた長方形で構成されたシグネチャーランプと一文字のセンターLEDアクセントランプによって、一目で新型「リーフ」であることがわかるデザイン。
日産新型リーフ:リアは「II三(ニッサン)」パターンがあしらわれたLEDリアコンビネーションランプ(3Dホログラム)を採用し先進感を演出。「II三パターン」は実は随所に施される。
日産新型リーフ:インストルメントパネルは横に広がるフローティングデザインにより、落ち着いたミニマルな雰囲気を演出。12.3インチの大型デュアルディスプレイ、Boseパーソナルプラスサウンドシステム(10スピーカー、運転席用アナウンス)を搭載し、より豊かな移動空間を提供。
日産新型リーフ:室内はフラットなフロアと開放感のある足元空間が広がるほか、シート形状の工夫やフラットフロアの採用により、大人2人が無理なく座れる後席空間を確保する。
日産新型リーフ:室内はフラットなフロアと開放感のある足元空間が広がるほか、シート形状の工夫やフラットフロアの採用により、大人2人が無理なく座れる後席空間を確保する。
日産新型リーフ:日産として初となる調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)を搭載。開放感あふれるガラスルーフは、電子調光技術によりボタンひとつでガラスの透明度を変えられるだけでなく、遮熱機能を持たせることで年間を通じて快適な室内空間を実現。
日産新型リーフ:使い勝手のよいラゲッジルーム。
日産新型リーフ:今回発表した78kWhのバッテリー容量を持つ「リーフB7」は、一充電走行距離最大702km(WLTC)を実現。
日産新型リーフ:サスペンションは、リアにマルチリンク式を採用するとともに、日本の道路環境に合わせて専用のサスペンションチューニングを施すことで、街中から高速道路まであらゆるシーンにおいてフラットで快適な乗り心地を提供。
日産新型リーフ:充電ポートに接続する「AC外部給電コネクター」を使えば、ドアをロックした状態でも1,500Wの電力を使うことが可能となる。もちろん、アウトドアアクティビティに加え、災害時の非常用電源としても活用することが可能だ。
日産新型リーフ:55kWhバッテリーを搭載したB5は来年2月頃の発表を予定しており、より多くのユーザーが求めやすい価格を予定しているという。

クロスオーバースタイルに一新した新型「リーフ」の走りやいかに?

2025年10月17日から全国の日産販売店にて注文の受付を開始した3代目新型リーフ。

2010年の初代リーフの発売から15年間積み重ねた知見と経験を最大限に活かして開発された新型「リーフ」の進化を体験するべく、まずはクローズドコースでの試乗体験をご報告しよう。

【画像94枚】「II三(ニッサン)」パターンが随所に。新型「リーフ」の斬新なディテールと上質なインテリアを見る

累計70万台超。日産EVラインナップの中核を成す3代目の誕生

世界初の量産型電気自動車(EV)として日産リーフが登場したのは2010年のことだった。以来、70万台以上の販売台数(うち日本は18万台)を記録し、今年10月に3代目が誕生した。いまだに日本ではEVの普及が伸び悩んでいるけれど、どこよりも早くEVを市場へ投入することで、世間での認知度向上やインフラ整備の後押しとなった事実は、クルマ自体とは別の二次的功績として評価すべきだろう。日産の商品群を見ると、今ではリーフの上にアリア、下にサクラというように、EVのラインナップも拡充されつつある。そんな中での新型リーフは、日産のEVファミリーの中でのポジションを明確にするという命題も背負っての登場と言えるかもしれない。

航続距離702kmを実現。新プラットフォーム「CMF-EV」とリアマルチリンク採用

ボディサイズは、従来型と比較してほぼ同等のキャビンスペースを確保しつつも、全長を120mm短くしている。全高は1550mmとして機械式駐車場にも対応可能だが、プロパイロット2.0を装着すると1565mmになってしまう。最小回転半径は5.3mで、これは0.1m小さくなった。プラットフォームはアリアと同じCMF-EVを採用、従来よりも車体のねじり剛性は86%アップし、リアサスペンションはトーションビームからマルチリンクへ刷新された。

日産新型リーフ:サスペンションは、リアにマルチリンク式を採用するとともに、日本の道路環境に合わせて専用のサスペンションチューニングを施すことで、街中から高速道路まであらゆるシーンにおいてフラットで快適な乗り心地を提供。

日産新型リーフ:サスペンションは、リアにマルチリンク式を採用するとともに、日本の道路環境に合わせて専用のサスペンションチューニングを施すことで、街中から高速道路まであらゆるシーンにおいてフラットで快適な乗り心地を提供。

パワートレインは、モーター/インバーター/減速機をひとつのハウジング内に収めた「3-in-1」と呼ばれるユニットを採用している。これにより、従来よりも10%の容量削減を実現する一方で最大トルクは4%向上、今回発表となった「B7」というグレードのパワースペックは最高出力218ps、最大トルク355Nm、バッテリー容量は60kWhから78kWhへ増加した。公表された最大航続距離は702km。実際にはここまで走れないだろうけれど、EVの航続距離が軒並み増えている中で公称とはいえ700km台はライバルや他のEVに対しても競争力がある数値と言える。

Cd0.26の機能美。日産初の「調光パノラミックガラスルーフ」も搭載

リーフはモデルチェンジの度にどんどんSUVルックになってきたように思う。新型リーフはボリューム感のあるSUV然としたスタイリングで、ルーフラインがリアエンドまで続くクーペのようなラインが特徴だ。EVにとっては重要な空力性能の向上も、ドアハンドルを格納式にするなど細部に渡って改善したそうで、Cd値は0.26とのこと。ただ、メルセデスやアウディなどは0.20や0.21という数値のモデルを続々と発表しているので、まだまだ伸びしろはありそうだ。

日産新型リーフ:室内はフラットなフロアと開放感のある足元空間が広がるほか、シート形状の工夫やフラットフロアの採用により、大人2人が無理なく座れる後席空間を確保する。

日産新型リーフ:室内はフラットなフロアと開放感のある足元空間が広がるほか、シート形状の工夫やフラットフロアの採用により、大人2人が無理なく座れる後席空間を確保する。

インテリアでは、前席の足元に広いスペースが確保されていることが特徴のひとつ。これは空調システム/バッテリー/パワートレインの冷熱システムをひとつにまとめ熱エネルギーを効率的に使うと同時に、空調システムがエンジンルーム側へ移動したことが影響している。新たに採用されたサンルーフは、日産初の調光パノラミックガラスルーフで、遮熱機能も備えている。

「スーっと滑らか」は本物か? 振動なき加速と、速度で変わる乗り味

新型リーフでは、「スーっと滑らか」を走りのゴールにしたそうだ。具体的には、静かで滑らかな加速やスムーズなコーナリングなどを指している。動力性能に関してはケチの付けようがないくらい完成度が高い。右足の動きを逃さず正確に呼応して、線形に立ち上がるトルク特性により、確かに「スーっと滑らか」に速度を上げて行く。この時、振動の類いはほとんど感じられない。これには、モーターの磁石を6分割して位相をずらすことで振動を削減したり、パワートレインのハウジングの剛性アップなどが効いているようだ。こうした対策は、EVの開発に長年取り組んできた経験と実績の積み重ねの賜物だろう。日産はこの分野において一日の長がある。

日産新型リーフ:55kWhバッテリーを搭載したB5は来年2月頃の発表を予定しており、より多くのユーザーが求めやすい価格を予定しているという。

日産新型リーフ:55kWhバッテリーを搭載したB5は来年2月頃の発表を予定しており、より多くのユーザーが求めやすい価格を予定しているという。

操縦性も日産らしいものだ。ロールからヨーへの繋がりがスムーズで、ステアリングを切ってから旋回姿勢が落ち着くまでの過渡領域で妙な動きがまったくない。左右へ切り返しても操舵応答遅れもなく、動力性能と同様に「スーっと滑らか」な操縦性である。タウンスピードの領域でのちょっと粗野な乗り心地が気になったけれど、速度を上げると改善傾向が見られた。

あとは約600万円という高級車並みになった価格を、市場が納得して受け入れるかどうかが興味深い。

【Specification】日産リーフB7 X

■車両本体価格(税込)=5,188,700円
■全長×全幅×全高=4360×1810×1550mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1880kg
■モーター型式=YM52交流同期原動機
■モーター最高出力=160kW(218ps)
■モーター最大トルク=355Nm(36.2kg-m)
■一充電走行距離=702km
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:マルチリンク
■タイヤ=前:215/55R18、後:215/55R18

【画像94枚】「II三(ニッサン)」パターンが随所に。新型「リーフ」の斬新なディテールと上質なインテリアを見る

AUTHOR

1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後(株)立風書房に入社、ル・ボラン編集部に配属となる。後に転職してカーグラフィック編集記者、カーグラフィック編集長などを歴任。現在はフリーランスの自動車ジャーナリストとして活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。英国「The Guild of Motoring Writers」会員。

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