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アルファ・ロメオ&マセラティの“特注工房”「ボッテガ・フォーリセリエ」始動。ワンオフからレストモッドまで網羅する新戦略「4つの柱」の全貌

アルファ・ロメオとマセラティ、新部門「ボッテガ・フォーリセリエ」設立。従来の「フォーリセリエ」との違いは?

アルファ・ロメオとマセラティは2025年11月4日、新部門「ボッテガ・フォーリセリエ」を世界初公開した。イタリア語で「特注工房」を意味するこの組織は、従来のパーソナライズ・プログラム「フォーリセリエ」とは一線を画すものだ。フューオフ(少数限定生産)からレース、クラシックカーのレストアまでを統合する、両ブランドの新たな戦略的頂点となる。

【画像15枚】これがイタリアの“特注工房”。「ボッテガ・フォーリセリエ」が手掛けるアルファ&マセラティのディテールと全貌

「ボッテガ・フォーリセリエ」が意味するもの

アルファ・ロメオとマセラティは11月4日、両ブランドの新たなプロジェクト「BOTTEGA FUORISERIE(ボッテガ・フォーリセリエ)」を、プレス向けのデジタルイベントで世界初公開した。

イタリア語で「工房」を意味する「ボッテガ」と、「特注」を意味する「フォーリセリエ」。この2つの言葉を冠した新プロジェクトは、単なるパーソナライズ・プログラムの枠組みを超えた、両ブランドの未来を形作る戦略的な一手であることが明らかになった。

従来、アルファ・ロメオやマセラティが提供してきた「フォーリセリエ(Fuoriserie)」プログラムは、主に量産モデルをベースにしたカスタム仕様を提供するパーソナライズ・オーダーシステムであった。しかし、今回発表された「ボッテガ・フォーリセリエ」は、その名を冠しつつも、まったく異なる、より広範な組織である。

この新部門のゼネラルマネージャーに就任したクリスティアーノ・フィオリオ(Cristiano Fiorio)氏は、これが従来のカスタマイズとは一線を画すものであることを強調した。

フィオリオ氏は、ボッテガ・フォーリセリエが「サブブランドではない」と明確に述べた。
「ブランドはアルファ・ロメオとマセラティであり、非常に重要です。ボッテガは『部門(ディビジョン)』です。大きな組織の中の小さな会社のようなもので、情熱、歴史、クラフトマンシップという共通の基盤を持つ卓越性をすべて組み合わせることを目的としています」

さらに続けて、この「特注工房」という名称を選んだ理由についても、顧客の要望とイタリアの職人技を結びつけて説明した。
「だからこそ『ボッテガ』と『フォーリセリエ』と呼んでいます。ボッテガとは、職人の工房、オーダーメイドのものを作るための小さな店を意味します。そしてフォーリセリエは、通常のシリーズ以外のものです。まさにお客様に合わせたものを作る、それが私たちのやるべきことなのです」

従来のカスタマイズと何が違う? 新部門を構成する「4つの柱」

新部門は、単一の機能ではなく、4つの補完的な分野で構成される包括的な組織である。これが、従来のパーソナライズ・プログラム「フォーリセリエ」との決定的な違いだ。

第1の柱は「ボッテガ(Bottega)」である。これは、アルファ・ロメオ 33ストラダーレやマセラティ MCエクストレーマのような、フューオフ(少数限定生産車)やワンオフ(一台限定生産)モデルを専門に手掛ける部門だ。フィオリオ氏が「すべてのクルマがオーナーに合わせて作られる」と語るように、ユニークで希少性が高く、高度に「テーラーメイド(仕立て)」された製品を生み出す。

第2の柱が、従来のプログラムの役割を引き継ぐ「フォーリセリエ(Fuoriserie)」である。これは、既存の量産ラインナップに対し、ディーラーを通じて高度なパーソナライゼーションを提供することを目的としている。フィオリオ氏によれば、現時点では主にマセラティのラインナップ向けだが、将来的にはアルファ・ロメオのハイエンドモデル(例えばクアドリフォリオ)への拡大も検討中であるという。

第3の柱は「ラ・ストーリア(La Storia)」、すなわち歴史と遺産である。これには、アルファ・ロメオ博物館の運営や、両ブランドのクラシックカーの公式鑑定、完全なレストアを提供する「クラシケ」部門が含まれる。

そして第4の柱が「コルセ(Corse)」、すなわちレース活動だ。マセラティが参戦するGT2ヨーロッパシリーズなど、サーキットで得られたノウハウやエンジニアリング・ソリューションを、量産車や最高性能モデルの開発にフィードバックする役割を担う。

つまり、従来の「フォーリセリエ」が主に第2の柱(量産車のパーソナライズ)のみを指していたのに対し、新しい「ボッテガ・フォーリセリエ」は、これら4つの異なる能力を一つの部門として統合した、両ブランドの「頂点(Apex)」となる戦略的組織なのである。

顧客の情熱に応える新戦略。変革期のアルファとマセラティが出した答え

アルファ・ロメオとマセラティはなぜ今、この4つの柱を統合する戦略に踏み切ったのか。フィオリオ氏は、その理由はすべて「お客様」にあると明確に述べた。
「結局のところ、私たちのような企業が行う最も重要なことは、最終的にお客様と対話し、交流することです。多くのお客様が、私たちの歴史、パフォーマンスがどのようにして生まれるのか、そしてもちろん、フューオフからワンオフ、さらにはサーキット走行車に至るまでの私たちの製品に興味を持っています」

フィオリオ氏によれば、現代の情熱的な顧客は、複数の分野に同時に強い関心を持っている。例えば、フューオフを購入する顧客が、同時に自身のクラシックカーの鑑定やレストアを依頼するかもしれない。これらは別々の活動ではなく、ロジカルに互いをサポートし、相互に良い影響を与え合う(クロス・ファーティライゼーション)関係にあると分析している。
「これらすべてを創造する共通の基盤は、結局のところ、私たちのブランドの深いルーツ、そのすべての力、すべての卓越性を一つの実体にまとめてほしいというお客様の願望なのです」

自動車業界が大きな変革期にある中で、フィオリオ氏は「情熱」や「歴史」に根ざしたパーソナライズされた製品の重要性が増していると指摘。この情熱こそが、自動車の世界の未来の変革を正しい方向に導くと信じているという。

「ジュニアのワンオフEVも可能」。フィオリオGMが示した柔軟な姿勢

新部門の具体的な活動範囲についても、多くの情報が明かされた。企業側からの限定モデル(フューオフ)の発売と、顧客からのワンオフのビスポーク(特注)依頼の両方を受け付けるのか、という質問に対し、フィオリオ氏は力強く答えた。
「(ワンオフもフューオフも)両方です。そして実際、すでに両方を行ってきましたし、行っています」

ただし、ワンオフには明確なルールがあり、「両ブランドの歴史を体現」していなければならない。フィオリオ氏は「私たちの歴史という本質を歪めたり、逸脱したりすることは決して受け入れません」と、ブランドの核を守る姿勢を強調した。

さらに、注目すべきは「レストモッド(Restomod)」への言及だ。新部門として公式にはまだ行っていないとしつつも、「これから行うつもりです」と明言。特に1960年代から70年代末までのモデルに注目しているという。

また、例えばアルファ・ロメオ・ジュニアをベースにした10万ユーロ以下のワンオフEVは可能か、という質問に対しても、フィオリオ氏は非常に柔軟な姿勢を見せた。
「私たちはお客様のいかなる要望にもオープンです。どんな種類のクルマでも、喜んでパーソナライズに応じます。 だからこそ、私たちはお客様のニーズに合わせて『テーラーメイド』であるのです」

パフォーマンス・チューニングに関しては、サーキット専用車(例:MCエクストレーマ)であれば自由に行えるが、公道走行車の場合は法規を遵守するため非常に限定的であると現実的な回答を示した。

競合にはない「イタリアン・アプローチ」

この新部門の拠点はどこになるのか。フィオリオ氏によれば、特定の「本社」は存在しない。拠点は「イタリア」そのものであり、モデナ、トリノ、アレーゼといった自社施設だけでなく、15,000社以上が存在するというエミリア・ロマーニャ地方のいわゆる「モーターバレー」のサプライチェーン全体が活動の場となる。

他のスーパーカーブランドが提供するビスポーク・プログラムとの最大の違いを問われたフィオリオ氏は、「アルファ・ロメオとマセラティという2つのブランドそのものです」と断言した。

この2つの偉大なブランドが持つユニークな歴史と、4つの柱を統合する「イタリアン・アプローチ」こそが、市場で他に類を見ないユニークな価値を提供する。このプロジェクトは、需要(注文)が投資に先行するスタートアップのようなビジネスモデルで運営され、希少性を保つことで、すでに提供できる以上の需要がある状態だという。

ボッテガ・フォーリセリエは「イタリアが最も得意とすることを結集し、未来を形作るプロジェクト」として、両ブランドの頂点を新たな高みへと導くことになりそうだ。

【画像15枚】これがイタリアの“特注工房”。「ボッテガ・フォーリセリエ」が手掛けるアルファ&マセラティのディテールと全貌

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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