「クルマは操縦するもの」。ベテランオーナーが31年愛し続ける、珊瑚色の相棒
2025年9月28日、京都・嵐山高雄パークウェイで開催された西日本最大級の空冷VWイベント「VW Autumn」。25回目を迎えたこの会場に、ひときわ美しいコーラルレッドの輝きを放つ一台があった。静岡県焼津市から参加した笹山徹哉さんの1956年式フォルクスワーゲン・タイプ1、通称「オーバルウィンドウ」だ。このビートルのオーナー歴31年、御年65歳。人生の半分近くをこのクルマと共に過ごしてきたベテランオーナーと、その愛車の濃密な関係を紹介しよう。
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理想を求めてオーダーした「珊瑚色」のオーバル
笹山さんがこの1956年式タイプ1を手に入れたのは、今から約31年前のことだ。それ以前は1969年式のタイプ1に乗っていたが、イベントに参加するうちに、より古い年式であるオーバルウィンドウへの憧れが募ったという。当時、状態の良い車両を輸入していた埼玉のVWショップ「ベストインポートサービス」に依頼し、自身の理想を具現化する一台を探してもらった。

こだわったのは、アメリカの雰囲気を愛する笹山さんらしい「コーラルレッド」(L-351)のボディカラーと、それに合わせた内装色だ。さらに、本来の年式よりも古い仕様である「ハートテール」と呼ばれるテールランプを納車時にあえて装着してもらうなど、購入当初から明確なスタイルを持っていた。アメリカで塗り直されたという塗装は31年経った今も美しい状態を保っており、オーナーの愛情の深さを物語っている。
往時の空気を運ぶ、こだわりのアクセサリーたち
笹山さんのオーバルを覗き込むと、そこには当時の空気が閉じ込められているようだ。貴重なアクセサリーパーツがふんだんに奢られているが、決してごちゃごちゃとした印象はなく、往時の雰囲気を濃厚にまとっている。そのセンスは、まさにVW乗りのお手本とも言える仕上がりだ。

特に目を引くのは、「ブラウプンクト」製の巨大なポータブルラジオ、通称「ピクニック・ラジオ」だ。単一電池を多数使用するため重量はあるが、その存在感は圧倒的である。また、クラシックVWのお洒落の王道であるダッシュパネルの一輪挿しには、この日はVW仲間の奥様が手作りしたというディップフラワーが飾られ、華を添えていた。「気に入ったものだけを付けるようにしています」という笹山さんの言葉通り、厳選されたアイテムが車内の世界観を統一している。
走らせてこそワーゲン。静岡から京都、そして九州へ
何より大切なことは、この美しいショーカーのような1956年式オーバルが、徹底的に「走るクルマ」として使われていることだ。笹山さんは休日のたびにステアリングを握り、仕事の日でも出勤前の涼しい朝の時間を使って近場をドライブするという。時にはウォーキングの場所までクルマで移動するなど、ほぼ毎日のように稼働している。
長距離ドライブも厭わない。今回の京都への遠征はもちろん、過去には静岡から陸路とフェリーを乗り継いで、熊本のVWイベント「SUNNY SIDE FESTA」まで遠征したこともある。かつては高速道路で速度を出しすぎてエンジンのヘッドにヒビを入れてしまったこともあるそうだが、現在は1200ccのスタンドエンジンを労わり、85km/hから90km/hという、クルマが一番機嫌良く走る速度域でクルージングを楽しんでいる。

笹山さんは自身も地元・静岡で「Old Volkswagen Ocean Day」というイベントを主催しており、ノーマル車高のVWが集まる場を提供し続けている。30年以上VWに乗り続けて良かったことは「たくさんの友達ができたこと」だと語る笹山さん。「運転するというより、操縦している感覚になれるのが楽しい」と笑うその横顔は、年齢を感じさせない少年のようだった。これからもこのコーラルレッドのオーバルは、軽快な空冷サウンドと共に各地のイベントを走り回ることだろう。





































