24カラット検印つき専用バッジも装着
マクラーレンは、2025年12月1日から7日まで開催されたマイアミ・アートウィークにおいて、同社のビスポーク部門であるマクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)が、英国の抽象芸術家ナット・ボーウェン氏と共同で制作した、マクラーレン 750Sのビスポークモデル「プロジェクト・クロモロジー」を発表した。
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色彩心理学とアートを融合した新たな多層塗装技術
プロジェクト・クロモロジーは、色彩心理学(クロモロジー)の研究とそれをベースとした樹脂(レジン)ベースによる鮮やかなアートワークで知られる、ボーウェン氏の実践、作品を創造的な基盤としている。
MSOはボーウェン氏と連携し、氏の作品の特徴である半透明性や多層性、感情的な共鳴といった要素を、MSOの技術を通じて自動車用フィニッシュへと変換するため、斬新な技術といえる「積層塗装」を開発し、750Sに適用したという訳である。このプロジェクトの中心にあるのは、「ビスポーク・デザインが個人的な表現のための強力なツールになり得る」という MSOの信念であり、750Sの彫刻的なエクステリア全体を通して、ボーウェン氏の色彩原理を再構築したかたちだ。
このコラボレーションでデビューしたのは、MSOによる前述の新しい積層塗装技術「クロマティック・レイヤード・フィニッシュ」。これは、ボーウェン氏の樹脂アートワークの深みと半透明性、感情的な性質にインスパイアされた技法である。このフィニッシュは、複数の半透明コートを通して色を構築し、光によって変化する深さと色調の動きを特徴とする。
特筆すべき点は、このフィニッシュはMSOとして初めて、塗装表面に微妙な盛り上がった質感(テクスチャ)を導入したことだ。これはボーウェン氏の樹脂アートワークの物理的な側面を反映したものである。これによって視覚的かつ触覚的に感じられる立体感が創出され、ボディ塗装に新しい素材特性をもたらしている。
個性を反映する専用パレットと限定仕様
プロジェクト・クロモロジー750SはMSOの限られた顧客のために製造され、各特注車は、ボーウェン氏の色彩的なテーマにインスパイアされた独自のMSOパレットを特徴とする。これらのパレットは、制御された層化プロセスによって構築され、穏やかで内省的な色調から、大胆でエネルギッシュな色調に至るまで、個々の感情的プロファイルに基づいてデザインされたものとなる。
また、このプロジェクト限定で24カラットの検印付き金メッキ・バッジが開発・導入された。このバッジはフロント、サイド、リアに配置され、各バッジの裏地の色は、対応するパレットの中心となる色調にマッチするよう調整されている。また、全特注車にはボーウェン氏によって制作されたオリジナルのアートワークが付属する。
MSOディレクターのジョナサン・シムズ氏は、この取り組みについて次のように述べている。
「プロジェクト・クロモロジーでは、一人のアーティストのプロセスをマクラーレンの新しい表面言語へと翻訳しました。(中略)それは、ビスポークなクラフトマンシップにおける可能性を拡大し、お客様がマクラーレンの形とフィニッシュを通じてアイデンティティを表現するのを助けるという、MSOが象徴するものの中核を反映しています」
ボーウェン氏は今回のプロジェクトに際し、次のようにコメントを寄せた。
「色は感情です。それは私たちが自分自身を表現し、周囲の世界とつながる方法なのです。マクラーレンとのコラボレーションにより、その探求をキャンバスから飛び出して進めることができ、色彩心理学を生きている体験へと変容させました。私たちは共に、アート、心理学、そしてパフォーマンスを、個人的かつ力強い方法で融合させる何かを創造したのです」
【ル・ボラン編集部より】
ナット・ボーウェン氏はファッション・デザイナーとしてのキャリアも持ち、また自身モデルとしての活動歴もある人物である。身にまとい、自分を表現する素材という意味では、ファッションも自動車も共通したものがあると言えるだろう。単にアートから自動車へ、というだけでは、今回マクラーレンが示したような成果を得ることは難しかったのではないだろうか。まことに適切な人選と言うべきか、結びつくべくして結びついたマクラーレンとのコラボレーション、これからの展開が楽しみである。
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