欧州Aセグメントの新たなベンチマーク、ついに受注開始
ルノーは2025年12月16日、欧州Aセグメントの新たなスタンダードとなる新型EV「トゥインゴ E-TECH エレクトリック」の欧州での正式価格と受注スケジュールを発表した。かねてより宣言されていた「2万ユーロ以下」という目標価格は、ベースグレードの「エボリューション」における1万9490ユーロ(約355万円)という設定で見事に達成された。上位グレード「テクノ」の受注は、優先パスである「Twingo R Pass」所持者を対象に同日より開始されており、一般受注も年明け早々にスタートする。
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有言実行の1万9490ユーロ。環境ボーナス含めれば「1.5万ユーロ」の現実味
ルノーが2023年11月のコンセプトモデル公開時に掲げた「2万ユーロ未満」という野心的な公約は、現実のものとなった。今回発表された価格体系によると、エントリーグレードである「エボリューション(Evolution)」の価格は1万9490ユーロ(約355万円)である。フランス本国では、所得に応じた環境ボーナス(補助金)が適用される場合、最安で1万4720ユーロ(約268万円)から購入可能となる試算も示されており、欧州市場における電気自動車の普及を強力に後押しする戦略的な価格設定と言えるだろう。

一方、上位グレードとなる「テクノ(Techno)」の価格は2万1090ユーロ(約384万円)とアナウンスされた。この価格差には、後述する先進装備の有無が含まれており、ユーザーは予算と必要とする機能に応じて明確な選択肢を持つことになる。
都市生活に最適化された3.79mのボディと、Google搭載の恩恵
新型トゥインゴ E-TECHは、最高出力60kW(82ps)を発揮するモーターと、27.5kWhのバッテリーを搭載し、WLTPモードでの航続距離は最大263kmに達する。全長3.79mというコンパクトなボディに5ドアを備え、最大360Lの荷室容量を確保するなど、都市部での使用に最適化されたパッケージングが特徴だ。
装備面での充実ぶりも目を見張るものがある。ベースグレードの「エボリューション」であっても、7インチのデジタルメータークラスターや、スマートフォン連携機能を備えた10インチのマルチメディアスクリーン、マニュアルエアコン、リアパーキングセンサーなどが標準装備される。また、リアシートは独立してスライドが可能であり、実用性を犠牲にしていない点は評価に値する。

上位グレードの「テクノ」では、さらに装備がアップグレードされる。このセグメントでは初となるGoogle搭載の「OpenR Link」マルチメディアシステムが採用されるほか、ストップ&ゴー機能付きのアダプティブクルーズコントロール、オートエアコン、デジタルリアビューカメラなどが標準となる。特に、アクセルペダルだけで加減速をコントロールできる「ワンペダルドライブ」機能や、助手席の背もたれを前方に倒せる機能もテクノには標準装備されており、快適性と積載性がさらに高められている。
急速充電はあえて「オプション」。コストと実用性の合理的バランス
EVとしての使い勝手を左右する充電性能についても詳細が明らかになった。標準仕様では6.6kWのAC充電器(普通充電)が搭載され、バッテリー残量10%から100%までの充電時間は約4時間15分である。
注目すべきは、急速充電への対応がオプション扱いとなっている点だ。「Advanced Charge pack」と呼ばれるオプションを選択すると、11kWのAC双方向充電器に加え、50kWのDC充電(急速充電)機能が追加される。このパックを装着することで、急速充電器を使用した場合、30分でバッテリーを10%から80%まで回復させることが可能となる。

この「Advanced Charge pack」の価格は500ユーロ(約9万円)に設定されている。つまり、ベースグレードの車両価格1万9490ユーロにこのオプションを追加しても合計1万9990ユーロ(約364万円)となり、急速充電機能を備えた状態でも「2万ユーロ以下」という価格競争力を維持できる仕組みだ。また、このパックに含まれる11kW AC充電器はV2L(Vehicle-to-Load)およびV2G(Vehicle-to-Grid)に対応しており、外部機器への給電や家庭用電力としての活用も視野に入れた最新の仕様となっている。
「R Pass」保持者は先行オーダーへ。2026年春に向けたロードマップ
受注開始のスケジュールはグレードによって異なる。上位グレード「テクノ」に関しては、先行予約権である「Twingo R Pass」を持つ顧客向けの注文受付が2025年12月16日から既に開始されており、一般顧客向けの受注は2026年1月8日からとなる。一方、ベースグレード「エボリューション」の受注開始は2026年の春を予定している。

ボディカラーは、当初「アブソリュートレッド」「アブソリュートグリーン」「マンゴーイエロー」「スターリーブラック」の4色が展開される。春の「エボリューション」受注開始時には、さらに「グレイシャーホワイト」と「シストグレー」の2色が追加される予定だ。また、足元を飾るホイールは通常16インチだが、オプションで18インチを選択することも可能となっており、個性を演出したいユーザーの要望に応える。
Aセグメントの基準を再定義し、EVをメインストリームへと押し上げることを目指すルノーの意欲作、トゥインゴ E-TECH。その具体的な価格と仕様が明らかになったことで、欧州市場での競争はさらに激化することになりそうだ。
【ル・ボラン編集部より】
「2万ユーロ切り」という数字が独り歩きしそうだが、ルノーの真意は単なる価格競争ではない。初代を彷彿とさせる愛嬌あるスタイリングと、上位グレードにGoogle系OSを惜しみなく投入する判断からは、EVを特別な存在から「日常の相棒」へと引き戻そうとする強い意志を感じる。かつてのエントリーカーが持っていたチープな悲壮感は皆無だ。兄貴分のメガーヌE-TECHで見せた、あのバッテリーの重さを感じさせない「しなやかな走り」の系譜が、このAセグメントにも息づいていることを期待したい。
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