コラム

なぜ「シャシーはエンジンより速く」なのか。メルセデス・ベンツが1951年に確立した安全哲学の原点【メルセデス安全原論 01】《LE VOLANT LAB》

シュツットガルト・ウンタートゥルクハイム本社の90度バンクを激走する1968年300SEL6.3(エアサス付き)。
シュツットガルト・ウンタートゥルクハイム本社の90度バンクを激走するW201とW126。背後に迫るのは大型バスO303シリーズだ。
シュツットガルト・ウンタートゥルクハイム本社の90度バンクを激走する1968年300SEL6.3(エアサス付き)。
メルセデス・ベンツ安全性の基本理論(1951年に特許を取得)。
1972年入社当時に筆者が見せられたメルセデス・ベンツ「セーフティ・ファースト」というフィルム。
四輪独立懸架を備えた「世界で最初の量産車」は、1931年に登場したメルセデス・ベンツ初の小型車・170/W15。
1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。
1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。
1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。
1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。後輪は各々適切に配置された「5本のリンク」によって位置決めされ、快適な乗り心地に必要なしなやかさを持ち、操縦性への悪影響を抑え、路面からのショックを吸収し、優れたロードホールディングを実現。今や高級車の主流。写真はその大型図解。
1982年「世界初の画期的なマルチリンク・リアサスペンション」を搭載した190/W201シリーズ。後輪は各々適切に配置された「5本のリンク」によって位置決めされ、快適な乗り心地に必要なしなやかさを持ち、操縦性への悪影響を抑え、路面からのショックを吸収し、優れたロードホールディングを実現。今や高級車の主流。写真はその構造パーツ。
コーナーリング時にニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足して行けばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。写真はEクラス/W214。
コーナーリング時にニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足して行けばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。写真はSクラスクーペ/W140。
コーナーリング時にニュートラルに近い弱アンダーステアなら、少しずつ切り足して行けばよいので、いわば、誰にでも容易に運転できる。図解は各コーナーリング時のハンドル特性。
ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)が世界に先駆けて1978年Sクラス/W116にオプション設定で4輪に搭載。写真は濡れた路面でのABSアンチロックブレーキシステム装着車(右)と非装着車の比較テスト。
ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)が世界に先駆けて1978年Sクラス/W116にオプション設定で4輪に搭載。写真は濡れた路面でのABSアンチロックブレーキシステム装着車(右)と非装着車の比較テスト。
シュツットガルト・ウンタートゥルクハイム本社の90度バンクを激走する1968年300SEL6.3(エアサス付き)。

1 走行安全性:運転上の事故を起こさない安全性

本連載「メルセデス安全原論」では、メルセデス・ベンツの揺るぎない設計思想と技術の系譜を紐解く。第1回は、1951年に特許取得された安全性の基本理論、そして「シャシーはエンジンより速く」という名言に象徴される走行安全性の真髄に迫る。事故を未然に防ぎ、被害を最小限に留める──その論理的な安全哲学の原点とは。

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ルール規制以前から始まった「人間中心」の安全設計と特許の公開

自動車の安全性がルールとして取り沙汰されるずっと以前から、メルセデス・ベンツの設計思想には「安全性」が大きな地位を占めていた。つまり、メルセデス・ベンツの技術陣が追求しているのは、常に「安全性」である。事実、人間工学(エルゴノミクス)に限らず、生理学、心理学を取り入れ、人間を中心に安全設計をしており、人間のクルマ=メルセデス・ベンツといわれる所以である。

1939年にメルセデス・ベンツの安全技術開発がスタートし、衝突安全性の研究に着手した。1951年にはメルセデス・ベンツの技術陣は自動車の安全性理論を確立し、「前後衝撃吸収式構造」と「頑丈なパッセンジャーセル構造」の特許を取得。その後、取得した多くの特許を独占せず次々と公開してきたのは、メルセデス・ベンツだけでなく、世界中のクルマの安全性の向上を願ったからである。

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フォト=メルセデス・ベンツAG、妻谷コレクション

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