コラム

本家よりお先にEV化!? 機械メーカー技術者が公道用に仕立てた「3/4スケールの電動セブン」【愛車群像】

ノーチラススポーツカーズがワンオフ製作し現オーナーがBEV化した、3/4スケールのセブン・レプリカ。

埼玉・上尾に集結したマイクロカーの祭典

原付カーというジャンルがある。これはその名の通り排気量50cc以下、または定格出力0.6kW以下の原動機(モーター)を有する普通自動車で、そのサイズは長さ2.5m×幅1.3m×高さ2.0m以下とされている。そんな一人乗り50cc級の原付カーが主役というイベントがこちら、さる2025年12月7日に埼玉県上尾市の大型商業施設、アリオ上尾で開催された「オールジャパンミニカーミーティング2025」だ。

【画像29枚】コクピットやEVユニットはどうなってる? 太陽光パネルも背負った「3/4電動セブン」の細部をチェック

バブル前夜のブームから、大人の趣味の対象へ

我が国で原付カーがちょっとしたブームとなったのは1980年代。バブル景気前夜のフワついた空気の時代に相次いで作られた“原付免許で乗れる耐候性のあるミニマム・トランスポーター”。ユーザーにとっては新鮮で手軽、作る側にとっては製造が比較的簡単ということで、一時期は多くのメーカー(や町工場)がこの分野に参入した。しかし後に法規が改正され公道上での運転には普通免許が必要となると、それをきっかけに交通弱者の簡便な移動手段という原付カー本来の意味合いは薄れ、多くのメーカーはこの分野から撤退。その後の原付カーのポジションはヒストリックカーなどと同様、むしろ趣味の対象としての意味合いが強まったようだ。

このジャンルの特徴として挙げられることは、ワンオフの手作り自動車であっても法規をクリアすればナンバーを取得して公道走行が可能になるということ。そんな事情も手伝ってか、会場にはメーカーが手がけた“量産車”以外に、そんなワンオフのスペシャルも少なからずエントリーしていた。その中の1台がこちら、実物の3/4ほどの小さなケータハム・セブンのレプリカである。

プロの技術者がDIYで挑んだ「BEV化」

「最初のオーナーは、原付カー趣味の世界では有名な中村さんで、私は2オーナー目です」と語ってくれたのはオーナーの“じろう”さん。つまりこの車両の元は、初代オーナー中村さんの依頼により、少量生産車の製造を得意とする千葉のノーチラススポーツカーズで2017年に製造されたワンオフ・モデルだったとのこと。

当初は50ccエンジンを搭載した文字通りの“原付カー”だったが、今から2年ほど前に中村さんからミニセブンを譲り受けたじろうさんは、自身の手でこれをEV化することに。エンジンを取り外し、そのスペースに中国製電動バイクのユニットを流用して、本家のケータハムより一足先にBEVセブンを作り上げたというわけだ。

太陽光パネルから充電できるシステムなど、様々な創意工夫も詰め込まれているが、じろうさんの本職が大手機械メーカーの技術者と聞けば、そのプロフェッショナルなカスタマイズぶりにも納得だ。

3枚のプレートに刻まれた、世界に1台だけの系譜

「シートの脇、パネル部分には3枚の小さなプレートを貼りました。1枚目がノーチラススポーツカーズの古川さん、2枚目が中村さん、3枚目が自分の名前です」。

名前の上にはコーチビルド、カスタマイズ、電動化と、それぞれの携わった作業も英文で書き込まれており、この小さな原付カーの来歴がわかるようになっている。たとえワンオフの小さな原付カーであっても、その車体に込められた趣味人の心意気は、貴族がオーダーしハリウッドスターが乗り継ぎ現在は大富豪の手元にあるような、超高級ビンテージカーに勝るとも劣らないのである。

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フォト=近藤浩之/H. Kondoh

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