ボルボの真打ちEV登場、航続距離810kmを実現した「EX60」と「EX60クロスカントリー」の全貌
ボルボ・カーズは2026年1月21日、新型電気自動車(BEV)のミッドサイズSUV「EX60」を世界初公開した。同社が「ゲームチェンジャー」と位置づけるこのモデルは、最長810kmという驚異的な航続距離と、わずか10分で340km分を充電できる急速充電性能を実現している。新世代プラットフォーム「SPA3」を初採用し、メガキャスティング技術やGoogleのAI「Gemini」を搭載するなど、ボルボの次世代を象徴する一台である。同時に、よりラギッドな「EX60クロスカントリー」も発表された。
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新プラットフォーム「SPA3」とメガキャスティングによる革新
ボルボが満を持して投入した「EX60」は、同社にとって最も販売ボリュームの大きいセグメントに投入される戦略的なBEVである。CEOのホーカン・サムエルソン氏が「EV移行への障害を取り除くクルマ」と自信を見せる通り、航続距離、充電速度、価格、そして走行性能のすべてにおいて、従来のEVの基準を塗り替えるスペックを提げての登場となった。
EX60の核心にあるのは、ボルボの新しい電気自動車専用アーキテクチャ「SPA3」である。これは、将来のすべての電動ボルボ車を支えるハードウェアとソフトウェアのモジュールセット「Supersetテックスタック」に基づいている。特筆すべきは、製造工程における革新だ。EX60は、スウェーデンで製造されるボルボ車として初めて「メガキャスティング」技術を採用した。これは、数百の小さな部品を単一の大きなアルミニウム鋳造部品に置き換えるもので、車体の軽量化と剛性向上、生産効率の改善に寄与している。
さらに、バッテリーセルを車体構造の一部として統合する「セル・トゥ・ボディ(Cell-to-Body)」技術も導入された。これによりエネルギー密度が20%向上し、従来のプラットフォームと比較してCO2排出量を37%削減しつつ、より広い室内空間の確保に成功している。これらの技術革新により、EX60はボルボの完全電気自動車の中で最も低いカーボンフットプリントを実現し、小型BEVであるEX30と同等の環境負荷レベルを達成した。
3つのパワートレインと圧倒的な充電性能
EX60のラインナップは、ユーザーのニーズに合わせて3つのパワートレインから選択可能だ。
エントリーモデルとなるのは、後輪駆動(RWD)の「P6 Electric」である。83kWhのバッテリーを搭載し、最高出力275kW(374ps)、最大トルク480Nmを発生する。0-100km/h加速は5.9秒と俊足でありながら、WLTPモードでの航続距離は最大620kmに達する。
中核を担うAWDモデル「P10 AWD Electric」は、前後にモーターを配置し、95kWhのバッテリーを積む。システム最高出力は375kW(510ps)、最大トルクは710Nmに引き上げられ、0-100km/h加速は4.6秒をマークする。航続距離は最大660kmである。
そして、最強のスペックを誇るのが「P12 AWD Electric」だ。117kWhという大容量バッテリーを搭載し、システム最高出力500kW(680ps、最大トルク790Nmというスーパーカー並みのパワーを発揮する。0-100km/h加速はわずか3.9秒で完了する一方、航続距離はクラス最高レベルの最大810kmに到達する。
充電性能の進化も著しい。P12モデルでは400kWの超急速充電に対応しており、わずか10分の充電で340km分の航続距離を回復できる。また、バッテリー残量10%から80%までの充電時間は19分で完了するため、長距離移動時の「充電待ち」のストレスは過去のものとなりそうだ。なお、P6およびP10モデルの充電スペックについては、現時点では明かされていない。
スカンジナビアンデザインと最新の車載テクノロジー
エクステリアは、機能性を追求したスカンジナビアンデザインがさらに進化している。低いフロントノーズとスロープしたルーフライン、そしてフラッシュサーフェス化されたドアハンドルなどが相まって、Cd値(空気抵抗係数)は0.26という優れた空力性能を実現した。ボディサイズは全長4803mm×全幅1899mm×全高1635mm、ホイールベース2970mmと、堂々たる体躯を持ちながらも、空力への配慮が徹底されている。
インテリアには、自然素材やリサイクル素材がふんだんに使用され、落ち着いた空間が広がる。注目すべきは、Googleの新しいAIアシスタント「Gemini」を搭載した最初のボルボ車である点だ。ドライバーはGeminiと自然な会話ができ、例えばメール内のホテル予約情報の検索や、購入した商品がトランクに収まるかの確認などを音声で行えるようになる。
インフォテインメントシステムを支えるのは、NVIDIA DRIVE Orinシステムオンチップと、新しいQualcomm Snapdragon 8255プロセッサだ。これにより、極めて高速な処理能力と応答性を実現し、地図の読み込みやアプリの起動が瞬時に行われる。オーディオ面では、Bowers & Wilkins製の28スピーカーシステムが用意され、ボルボとして初めて4つのメインシートすべてのヘッドレストにスピーカーを内蔵し、没入感のあるDolby Atmos対応の空間オーディオ体験を提供する。
安全性の新たな基準とドライバー理解システム
安全性においては、ボルボの伝統である「人間中心」の設計が貫かれている。標準装備される「ドライバー・アンダースタンディング・システム」は、ドライバーの疲労や注意散漫を検知し、必要に応じてサポートや介入を行う。さらに、車内の微細な動き、例えば赤ちゃんの呼吸まで検知する乗員検知システムにより、車内への置き去り事故を防ぐ。
衝突安全においては、世界初となる「マルチアダプティブ・セーフティベルト」を採用した。これは、乗員の体格や着座位置に合わせて保護を最適化するだけでなく、車外センサーと連携して衝突の速度や方向を予測し、ベルトのテンションを自動調整する画期的なシステムだ。ボディ構造の中心にはボロン鋼で強化されたセーフティケージがあり、フロアに統合された強化バッテリーパックと共に、最高レベルの衝突保護性能を提供する。
冒険心を刺激する「EX60クロスカントリー」
EX60の発表と同時に、ボルボの伝統である「クロスカントリー」モデルも公開された。EX60クロスカントリーは、EX60の持つ先進性をそのままに、よりタフで冒険的なキャラクターを与えられたモデルだ。
外観では、専用色の「フロストグリーン」が設定され、ステンレススチール製のスキッドプレートや、ブラックアウトされたホイールアーチクラディングが、力強さを強調している。機能面での最大の違いは、地上高だ。標準のEX60に比べて20mm高く設定されており、悪路走破性を高めている。さらにエアサスペンション装着車では、必要に応じてさらに20mm車高を上げることが可能だ。高速走行時には逆に車高を下げ、空気抵抗を低減する機能も備える。
クロスカントリーには「P10 AWD」と「P12 AWD」の2つの電動パワートレインが用意される。P10 AWDモデルの航続距離は最大640kmと発表されている。ボディサイズは全長4811mm、全高1651mm(標準時)と、バンパー形状や車高の違いにより標準モデルよりわずかに大きく、より存在感のあるスタイリングとなっている。
発売時期と生産体制
EX60は、まず欧州市場での注文受付が開始されており、米国では晩春に続く予定だ。生産は2026年春からスウェーデンの工場で開始される。顧客への納車は、P6およびP10バリアントが2026年夏から、P12バリアントはその後の開始が見込まれている。
ボルボ・カーズはEX60の投入により、最大の市場規模を持つEVセグメントでのシェア拡大を狙う。SPA3プラットフォームによる効率化、最新のAI技術、そしてボルボならではの安全性とデザインが融合したEX60は、まさにEV市場のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めた一台であると言えるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
ボルボの屋台骨である「60シリーズ」のBEV化は、単なる電動化以上の意味を持つ。新プラットフォーム「SPA3」やメガキャスティングの採用は、生産効率だけでなく、走りの質と剛性を根本から変える革新だからだ。810kmという航続距離はBEVへの不安を過去のものにするが、加えて注目したいのは「クロスカントリー」の同時発表である。最新のAI技術や生産革命を取り入れつつも、生活の道具として泥臭く使うというボルボの流儀は、電動化されても色濃く継承されているようだ。
ル・ボランWebでは現地ワールドプレミア会場からの詳報も追ってお伝えする予定なので、楽しみにお待ちいただきたい。
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