価格314万円〜。「働く相棒」が迎えた電動化の夜明け
ダイハツは2026年2月2日、同社初となる量産バッテリーEV(BEV)、「e-ハイゼットカーゴ」および「e-アトレー」を発売した。価格(税込)は「e-ハイゼットカーゴ」が314万6000円から、「e-アトレー」が346万5000円からとなる。長年にわたり「働く相棒」として支持されてきた軽商用車の実用性を損なうことなく、カーボンニュートラル社会への適応を果たした意欲作の技術的背景、積載性能、そして井上雅宏社長が語った「軽商用EVの真価」について解説しよう。
【画像50枚】これが電動化された「相棒」の真価。床下電池で死守した広大な荷室と、e-ハイゼット&アトレーの全貌
3社の英知「e-SMART」と、RWDレイアウトがもたらすスムーズな走り
今回の新型e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーにおける技術的な核心は、新開発のBEVシステム「e-SMART ELECTRIC」にある。これは、スズキとダイハツが培ってきた「小さなクルマづくり」のノウハウに、トヨタが持つ高度な電動化技術を組み合わせ、3社で共同開発されたシステムだ。
搭載される交流同期電動機(モーター)の最高出力は47kW(64ps)、最大トルクは126Nm(12.9kg-m)を発揮する。このモーターを後輪駆動軸上に配置するRWDレイアウトを採用し、荷物を満載した状態でも力強い発進とスムーズな加速を実現した。定格電圧228.96V、容量160Ah(総電力量約36.6kWh)のリチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電走行距離は257km(WLTCモード)を達成している。
この走行性能について、発表会に登壇した井上社長は自身がステアリングを握った経験を踏まえ、「70年にわたり働く人々にとって頼りになる相棒、使い勝手の良さ、そのレガシーはそのままに、電気自動車の魅力がプラスされたクルマに仕上がりました」と評している。静粛性やトルクフルな走りといったEVならではの特性が、長年培われた商用車としての基本性能の上に上積みされているという自信の表れだろう。
荷室容量は“聖域”なり。床下電池で実現した「積載350kg」の矜持
BEV化において最大の課題となるのが、バッテリーの搭載スペースと荷室容量の兼ね合いである。しかし、ダイハツはこの課題に対して「荷室スペースを変えない」という回答を出した。
バッテリーを床下のデッドスペースに配置することで、ベース車と同等の積載性を維持している。「e-ハイゼットカーゴ(4シーター)」の荷室サイズは、荷室長1920mm(2名乗車時)、荷室幅1410mm(4名乗車時)、荷室高1250mmを確保。これは軽キャブオーバーバンとしてトップクラスの数値であり、最大積載量もガソリン車同様の350kg(2名乗車時)を死守している。
また、商用ユースだけでなく、個人ユースも意識した「e-アトレー」では、トニコオレンジメタリックやオフビートカーキメタリックといった個性的なボディカラーも設定された。全車にLEDヘッドランプやキーフリーシステム、両側パワースライドドア(RSグレード)といった快適装備も充実しており、仕事とプライベートを両立させる多様化する軽バンのニーズに応える構成となっている。
これらを実現する生産体制にも「良品廉価」への執念が見える。生産を行うダイハツ九州の大分(中津)第1工場では、大規模な専用ラインを新設せず、既存のガソリン車ラインとの混流生産を実現した。バッテリー搭載などの特殊工程には、これまでダンプや保冷車などの特装車製造で培ったノウハウとエリアを活用することで、設備投資を極限まで抑制している。
単なる移動具にあらず。「命を守るインフラ」として担う新たな使命
今回の発表で井上社長が最も熱を込めて語ったのが、単なるモビリティを超えた「社会インフラ」としての役割である。新型車には、災害時などにクルマから建物へ給電できるV2H対応の急速充電インレットや、AC100V/1500Wのアクセサリーコンセントが全車に標準装備されている。
ダイハツは大阪府などの自治体と災害時の電源供給協定を締結しており、人工呼吸器などの高度医療機器への給電も視野に入れている。井上社長は「災害時の電源というのは命を守るために不可欠なもの」と強調し、被災地などの狭い道路でも移動可能な軽商用車こそが、ラストワンマイルの電源供給を担う「動く蓄電池」になり得るとの考えを示した。
さらに、井上社長は日本の商用車市場の構造に触れ、「日本の商用車のうち約6割は軽商用車になります。この領域で電気自動車の普及が広まれば、カーボンニュートラルに向けて大きな貢献ができる」と述べ、このモデルが担う環境面での社会的責任の重さを訴えた。物流の効率化だけでなく、地域社会の防災力強化や脱炭素化の切り札として、「e-ハイゼットカーゴ」と「e-アトレー」は市場に投入されることになる。
【ル・ボラン編集部より】
スズキ、トヨタとの協業によるダイハツ「e-SMART ELECTRIC」がついに公道へ。興味深いのは、日産サクラが「軽の質的向上」を提示したのに対し、本作は「積載性という聖域」を死守した点だ。床下に電池を敷き詰めながら荷室を犠牲にしないパッケージングに、商用車屋の矜持を見る。RWDレイアウトが生むトラクションとEVの静粛性は、物流の現場に「快適な革命」をもたらすはずだ。単なる道具を超え、災害時の「動く蓄電池」となる気概も含め、日本の足元を支える頼もしき黒衣(くろご)の進化を歓迎したい。
【画像50枚】これが電動化された「相棒」の真価。床下電池で死守した広大な荷室と、e-ハイゼット&アトレーの全貌




















































