
















































次期3シリーズ「BMW i3」メカニズム完全解剖
先の第一報でお届けした渡辺慎太郎氏による先行取材動画に続き、今回はBMWが発表した完全電気自動車の新型セダン「i3」の技術的詳細を深掘りした解説をお届けする。ノイエ・クラッセの第2弾モデルとして登場した新型i3は、第6世代となるBMW eDriveテクノロジーを搭載し、航続距離、充電性能、そして駆動システムのすべてにおいて過去のモデルから飛躍的な進化を遂げた。自動車の根幹を成すハードウェアから、車両を制御する電子アーキテクチャに至るまで、BMWが提示する次世代モビリティの圧倒的なスペックとメカニズムの全貌に迫っていく。
【画像49枚】3シリーズの未来はここにある。次世代BMW「i3」がまとう“ノイエ・クラッセ”の革新的なフォルムを細部までチェック。
バッテリーが骨格を担う「パック・トゥ・オープン・ボディ」の凄み
新型i3のボディサイズは、全長4760mm×全幅1865mm×全高1480mm。ホイールベースは2897mmと長く設定されており、フロントのトレッド幅は1606mm、リアのトレッド幅は1614mmとなっている。この堂々たる体躯を支え、かつ空力性能や居住性を最大化するために採用されたのが、パック・トゥ・オープン・ボディ構造と呼ばれる新しいパッケージング手法である。
従来のBEVではシャシーの床面に独立したバッテリーモジュールを搭載するのが一般的であったが、新型i3ではシャシーの床面が解放された状態になっており、そこに高電圧バッテリーを組み込むことで床面が塞がれる構造となっている。すなわち、バッテリーのハウジングカバー自体が車両のアンダーボディとしての機能を担うのである。この構造により、従来のアンダーボディ部材が不要となるため大幅な軽量化が実現するだけでなく、高電圧バッテリーのフラットな設計と相まって、空力的に極めて効率的な車両デザインが可能となった。さらに、このパック・トゥ・オープン・ボディ構造は車体のねじり剛性向上にも寄与しており、BMWが誇るダイナミックな走行性能の基盤を強固なものとしている。
往年の“直6”の再来か。前後異種モーターが叶える情緒的加速
最初に市場へ投入される「i3 50 xDrive」は、フロントおよびリアのアクスルそれぞれに電気モーターを搭載する四輪駆動モデルである。システム全体の最高出力は345kW(469ps)に達し、最大トルクは645Nmという極めて強力なスペックを誇る。この強烈な動力性能を生み出す心臓部が、第6世代のBMW eDriveテクノロジーだ。
特筆すべきは、前後で異なる方式のモーターを組み合わせている点である。主駆動輪となるリアアクスルには、800Vのアーキテクチャに合わせて設計された巻線界磁型同期モーター(EESM)が搭載されている。このモーターは、永久磁石を使用せず、ローターに電気的に励起される電磁石を備えていることが最大の特徴。これによりローター内の磁界を柔軟に調整することが可能となり、低負荷時には磁界を弱めてエネルギー損失を防ぐ一方で、高負荷時には強力な磁界を発生させて最高回転数まで一定の高出力を維持することができる。インバーターがバッテリーの直流を交流に変換すると同時にローターの励起や監視プロセスを制御し、モーターを常に最適な効率で動作させる。
一方、フロントアクスルにはコンパクトで軽量な非同期モーター(ASM)が採用された。こちらは誘導原理で動作し、ローターはアルミニウムのロッドと短絡リングで構成されている。ステーターの磁界とローターとの間に生じる回転速度の差、すなわちスリップによって誘導電流が発生し、トルクを生み出す仕組みである。ASMは熱に強く堅牢であり、鉄とアルミニウムのみを使用するため持続可能性にも優れている。これら性質の異なる2つのモーターを組み合わせることで、従来の高性能な駆動システムと比較してもエネルギー損失を40%削減し、駆動系全体の重量を10%軽量化しつつ、製造コストも20%削減するという技術的飛躍を達成している。
航続900kmの要。新開発の円筒形セルと800Vアーキテクチャの恩恵
モーターに電力を供給する高電圧バッテリーにも、根本的な革新がもたらされている。新型i3では、直径46mm、高さ95mmの新開発されたリチウムイオンの円筒形セルが採用された。これは第5世代で使用されていた角形セルと比較して、体積エネルギー密度が20%も向上している。さらに、このセルをモジュールなどの構造材を介さずに直接バッテリーパックに統合するセル・トゥ・パック設計が採用されており、パックレベルでのエネルギー密度の大幅な向上と、重量およびコストの削減を実現した。これらの恩恵により、新型i3の航続距離はWLTPテストサイクルで最大900kmという驚異的な数値を記録している。
また、バッテリーの上部には「エナジー・マスター」と呼ばれるソフトウェアおよびハードウェアが統合された高度な制御中枢が配置され、高電圧バッテリーからのすべてのデータを管理し、安全かつ効率的なバッテリー動作を保証している。充電性能に関しても、800V技術の採用により直流(DC)急速充電で最大400kWの充電能力を備えており、わずか10分間の充電で最大400km分の航続距離を回復することが可能となっている。交流(AC)充電においても最大22kWに対応している。
さらに、このシステムは双方向充電機能も標準でサポートしている。車両のバッテリーから外部の電化製品に電力を供給するビークル・トゥ・ロード(V2L)、家庭に電力を供給して電気代を削減するビークル・トゥ・ホーム(V2H)、そして電力網へ電力を戻すビークル・トゥ・グリッド(V2G)という機能が利用可能となり、電気自動車の枠を超えたエネルギーデバイスとしての価値を提供している。
走りの質を根底から変革する新頭脳「ハート・オブ・ジョイ」
ハードウェアの進化を完璧に制御するため、ソフトウェアと電子アーキテクチャにも根本的な変革が加えられている。新型i3の制御システムの中核を成すのが、4つの特化したスーパーブレインと呼ばれる高性能コンピューターである。これらは従来のBMWモデルと比較して最大20倍という圧倒的な計算能力を有している。
そのうちの1つである「ハート・オブ・ジョイ」は、ドライビングダイナミクスを統括するコンピューターであり、駆動、ブレーキ、ステアリング機能の一部、さらには充電や回生システムを統合的に制御する。従来のシステムより10倍速く応答し、制御介入の回数を減らすことで、ドライバーはより正確で予測可能なコーナリング挙動と極めて滑らかなハンドリングを体験できる。
減速時にはモーターの精密な制御により、ブレーキノイズや不快な揺れを伴わない「ソフト・ストップ」というBMW史上最もスムーズな停止プロセスを実現した。日常の運転におけるブレーキ操作のほとんどは回生ブレーキが担当し、物理的なブレーキはスポーティな走行時や緊急時のみに使用される。
サスペンション機構としては、フロントに2ジョイント・スプリング・ストラット・アクスル、リアに新開発の5リンク式アクスルを採用し、ストローク依存型のショックアブソーバーを標準装備する。四輪駆動モデルにはアダプティブMサスペンションもオプションで用意され、快適性を損なうことなくスポーティな走りを強調することが可能だ。電子基盤においては、車両を4つのゾーンに分けた配線システムが採用され、ワイヤーハーネスの複雑さが軽減された。従来のヒューズに代わってスマートeヒューズが導入され、ケーブルの短縮と細径化、インテリジェントな配電による全体的なエネルギー効率の向上を実現している。
パノラマ・ビジョンが提示する、デジタル時代の人馬一体
コクピットのデジタルインターフェースは、Android Open Source Project(AOSP)を基盤とするBMWオペレーティングシステムXによって駆動される。ドライバーの視界を革新するのがBMWパノラマ・ビジョンであり、フロントガラス下部のAピラーからAピラーまでの全幅にわたって特殊なコーティングが施され、そこに運転情報などが直接投影される。運転に不可欠な情報はドライバーの視線の先である左側に表示され、中央や右側の領域には乗員全員が見えるようにパーソナライズ可能なコンテンツが配置される。さらに、空間認識を可能にするアニメーションを備えたBMW 3Dヘッドアップ・ディスプレイがオプションで用意されている。
ダッシュボードには、3340×1440ピクセルの高解像度マトリックス・バックライト技術を採用した17.9インチのフリーカットデザイン・センターディスプレイが、ドライバー側に3度傾けて配置されている。新設計のマルチファンクションステアリングホイールは上部にセンタースポークを持つ独特の形状であり、機能が利用可能なときだけ点灯するシャイテック操作ボタンを組み込むことで、直感的かつ安全な操作環境を構築している。システムは無線通信(OTA)によるソフトウェア・アップデートに対応しており、購入後も常に最新の機能や人工知能(AI)を活用した機能が継続的に提供される仕組みとなっている。新型i3は、圧倒的なメカニズムと先進のデジタル技術を融合させることで、次世代における駆けぬける歓びを体現しているのである。
【ル・ボラン編集部より】
かつて内燃機関の精緻な回転フィールで「駆けぬける歓び」を定義したBMWが、全面電動化時代に提示した最適解がここにある。特筆すべきは前後で異なるモーターを組み合わせる駆動系だ。高回転域まで伸びやかなパワーを持続するリアの巻線界磁型モーターは、まるで往年の自然吸気直列6気筒のような情緒的加速をEVで再現しようとする、バイエルンの執念すら感じさせる。高度なデジタル頭脳「ハート・オブ・ジョイ」で緻密に制御しつつも、その根底に流れるのはドライバーの感性に寄り添う、極めてアナログな人馬一体の哲学なのだろう。
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