「走れ」と背中を押すスーパースポーツカー
マクラーレン750Sスパイダーは、崇め奉って飾っておく類のスーパースポーツカーではない。いつでも、どこへでも、どこまでも――走りたくなる空気を纏っている。日常から非日常までを軽やかにつなぐその資質は現代的スーパースポーツの、ひとつの理想形。凛とした姿カタチの奥に「使い倒すべきクルマ」という明確な意思が宿っている。
【画像54枚】跳ね上がるドア、唸るリアウイング。マクラーレン750Sスパイダーが導く「非日常」への入り口
V8モデルのひとつの終着点となるのか
マクラーレンの新生スーパースポーツカーメーカーとしての歩みは、もう15年を数える。カーボンモノコックボディを持つ2シーター・ミッドシップの量産ロードカーとして脚光を浴びたMP4-12Cに始まった。その後、2014年には650Sへ。さらに2017年には第2世代の720Sへとバトンタッチした。2023年には、いまへと続くこの750Sへ進化している。750Sスパイダーはそのオープントップ版だ。強固なカーボンモノコックボディから小さなルーフパネルを外しただけなので、ボディの強さには何ら影響を与えない。
ロー&ワイドなフォルムを持つカーボンモノコックボディに、車名が示す通り最高出力750ps、最大トルク800Nmを発生する4.0L V8ツインターボをミッドシップする――。そんなことを聞くたびに、気を遣いまくるのは事実だ。最大の躊躇は、車両本体価格だけで4570万円(税込)という中古マンション級の価格か。加えて2026年中に日本向けの750Sは生産終了すると囁かれている。自動ブレーキの義務化や、法規対応を前にした苦渋の決断らしい。ますます資産形成や投機対象のツールとして、ガレージで眠らせておきたくなる。
「快適さと刺激」は共存できることを教えてくれる
それでも、怖いもの見たさを含めて、走りへの欲求は抗えない。色鮮やかなオレンジにブラックのカーボンファイバーパックを組み合わせたコントラストカラーを纏う750Sスパイダーの、ディヘドラルドアを開け、極太のサイドシルをまたいで乗り込む。いかにもマクラーレンらしい所作であり、これだけで気分はF1ドライバーだ。
特別なモノに乗り込む高揚感がありながら、いざ走り始めたら身近な存在へと舞い降りてくる。身体の一部になったかのようなフルバケットシートにくるまれて、ストリートへと連れ出すと、大きな車体がみるみる小さくなる。都心の雑踏を手足のように操って抜けていく。扱いにくさはまるで感じない。
7速DCTはきわめてスムーズでナチュラルだ。交通の流れに合わせて静かに走っている状態では、無駄にエンジンサウンドやエキゾーストノートでドライバーを鼓舞することもない。過度な演出を排除して寡黙に徹するあたり、いかにもマクラーレンである。
身体全体を通して微妙な路面の起伏はおろか、アスファルトの粒まで手に取るようにわかるようだ。この一体感は高級サルーンとはまるで違う心地よさがある。適度な重みを持ったステアリングを操ると、完璧な意思疎通を取ることができるフィーリングのおかげでもあるのだろう。意のままに操ることはストレスフリーにして、それは一種の快楽なのだということを、ストリートであってもはっきりと提示してくれる。
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