世界屈指の過酷なサーキットと、知られざる「NLS」の魅力
NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)が、これほど注目を集める日が来るとは想像もしていなかった。ドイツのアイフェ地方。フランクフルトから西北へおよそ180kmほど移動すると、風景は一変する。牧歌的な丘陵がゆるやかに波打ち、小さな村が点在するだけの静かな土地だ。信号はほとんどなく、時間さえもゆっくりと流れている。そんな場所に、世界屈指の過激さを誇るニュルブルクリンクが横たわっている。人生はときどき、極端なコントラストでこちらの感覚を試してくる。
【画像13枚】ニュルブルクリンク24時間レース参戦を決めたマックス・フェルスタッペンと木下隆之の挑戦

名を轟かせているのは、年に一度の祭典「ニュルブルクリンク24時間レース」だろう。だが同じ場所で、4時間や6時間といった耐久レースが年間10戦も行われていることは、意外なほど知られていない。それがNLSである。不肖この私も、このシリーズに挑戦を続けてきた。一昨年は全10戦に参戦し、シリーズランキング2位。昨年は5戦に絞りながらも年間チャンピオンを獲得した。現地にアパートを借り、慎ましくも濃密な日々を送りながら孤軍奮闘。パドックで日本語を耳にすることはほとんどなく、ときどき自分の独り言にうなずいてしまうほどだった。
現役F1王者マックス・フェルスタッペンの電撃参戦
それほど情熱を注いできたからこそ、NLSがいかに過激で、難攻不落な舞台であるかは骨身に染みている。欧州のレース関係者なら知らぬ者はいないシリーズなのに、日本では無名に近い。この温度差は、ニュルの気まぐれな天候より読みづらい。

Redbull Content Pool
そんなNLSが今年、一気にスポットライトを浴びた。理由は明快だ。4度のF1ワールドチャンピオンであり、現代最速とも称されるマックス・フェルスタッペンが参戦したのである。現役F1ドライバーが他カテゴリーに出る例は珍しい。引退後にル・マンやデイトナへ舞台を移す話は耳にするが、最前線で戦う王者が、いわばローカルシリーズとも言えるNLSに現れるのだから、話題にならないはずがない。
F1王者を「抜いた」日。そしてトップチェッカーからのまさかの結末