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極限の軽量化とツインターボの革命。ポルシェ935はいかにして「常勝マシン」となったのか?

ポルシェ935誕生から50周年。伝説のレーシングカーの進化を紐解く全5話の特別映像が公開

1976年にホモロゲーションを取得し、世界のモータースポーツを席巻したポルシェ935。その誕生からちょうど50年を迎えた2026年、ポルシェは公式YouTubeチャンネルにて全5部作の映像シリーズ「ポルシェ・ヘリテージ・モーメント」を公開した。ル・マン優勝者のティモ・ベルンハルトと元レースエンジニアのノルベルト・ジンガーが、5台の歴代935を前にその進化の歴史と開発の裏側を初めて詳細に語り尽くす。

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限界に挑んだ初期モデルとツインターボによる進化

ポルシェ911をベースに当時の新カテゴリーであるグループ5に向けて開発された935は、レギュレーションの解釈の余地を突いた設計で知られている。映像の第1話では、拡幅されたフェンダーや素早い調整が可能なコックピットなど、厳しい技術車検を通過するためにFIAと議論を交わした当時のエピソードが明かされる。ピットとの無線交信がない時代における、ドライバーとチームのコミュニケーションの重要性も、この初期モデルを語る上で欠かせない要素だ。

続く第2話で取り上げられるのは、空力を改善しツインターボを採用した1977年モデルである。フロントフェンダー内に移設されたミラーによる視界の制限など、レースエンジニアならではの視点で解説が行われる。最大の進化であるツインターボ化は、大型シングルターボの弱点であったターボラグを解消し、パワーの出力特性を向上させることで、ドライバーにとって扱いやすさを大幅に引き上げる画期的な技術であった。

軽量化の極致「ベイビー」と究極の姿「モビー・ディック」

第3話に登場する935「ベイビー」は、スプリントレースへの参戦を目的として極限の軽量化が施されたモデルである。シートの調整機能を省き、イグニッションキーにまで穴を開けるほどの徹底ぶりで、スチール部品の排除やアルミフレームの採用により最低制限重量を下回るシャシーを作り上げた。1.4Lエンジンを搭載して2Lクラスに挑んだこのマシンは、高回転域で真価を発揮する気難しい一台であったという。

一方で、第4話で解説される935/78、通称「モビー・ディック」は、レギュレーションの限界まで改造を施した究極の姿である。ル・マン制覇を目標に見慣れたシルエットから決別した空力ボディを備え、空冷シリンダーに水冷4バルブヘッドを組み合わせた3.2L水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載した。スプリント仕様では最大845psを発揮し、徹底的な空気抵抗の削減によりル・マンの直線で時速366km/hを記録するなど、プロジェクトの集大成と呼ぶべき圧倒的な性能を誇った。

記録挑戦を支えたテストカーとポルシェの理念

最終話となる第5話では、実戦投入がノリスリンクでの1戦のみにとどまった1977年型のテストカーに焦点が当てられる。この車両の真の役割はレースでの勝利ではなく、新技術を試す走る実験室であった。さらに、自転車競技選手のジャン・クロード・ルードが時速240km/hを超える速度記録に挑んだ際、そのペースカーとして使用されるという異色の経歴も持っている。

本シリーズの根底に流れているのは、単なる性能データの比較ではなく、時間的制約の中で決断を下し、技術的な解決策を模索し続けたポルシェのパイオニア精神である。ジンガーが最後に語るように、レーシングカーは速いだけでなく、信頼性が高く頑丈でなければならない。その厳しい条件をクリアし、勝てることを証明したマシンだけが顧客の手に渡るという哲学は、モータースポーツ活動75周年を迎えた現在のポルシェにも脈々と受け継がれている。

【ル・ボラン編集部より】

「速さ」と「頑強さ」はモータースポーツにおいて常にトレードオフにある。しかしポルシェは、この矛盾に挑み続けてきた。935の歴史を紐解く本映像シリーズは、まさにその闘いの記録である。時速366km/hを叩き出した「モビー・ディック」の速さも、極限まで軽量化した「ベイビー」の狂気も、勝つための「信頼性」という強固な土台の上で成立している。最新の911カレラで我々が感嘆する「過激なパフォーマンスと日常での扱いやすさの共存」は、こうした極限の現場で培われた哲学の賜物だ。半世紀前のパイオニア精神は、今なおポルシェのクルマ造りに色褪せることなく息づいている。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。

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