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ロールス・ロイス・モーター・カーズは2026年4月14日、新たなコーチビルド・コレクションの第一弾となる「プロジェクト・ナイチンゲール」を世界初公開した。このモデルは、同ブランドが誇る完全電気ドライブトレインと、コーチビルド特有の自由なデザインを融合させた、極めて野心的な2シーターのオープンカーである。伝説的な実験車両「EX」の精神を現代に蘇らせた本作は、世界でわずか100台のみが限定生産される。
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伝説の実験車両とデザイナーの館に由来する名称
プロジェクト・ナイチンゲールという名称は、ブランドの共同創業者であるヘンリー・ロイス卿がかつてフランスのリヴィエラに構えた領地内にあった建物、「ル・ロシニョール」に由来している。フランス語で「ナイチンゲール(小夜啼鳥:サヨナキドリ)」を意味するこの場所は、当時デザイナーやエンジニアが拠点としていた場所であった。この歴史的な背景は、ブランドが歩んできた創造性の系譜を象徴しており、本作が単なる新型車ではなく、ロールス・ロイスの魂を継承する存在であることを示している。
また、本作の着想の源泉となったのは、1920年代に製作された高速実験車両「EX」シリーズである。特に、アール・デコ運動が隆盛を極めた1928年に誕生した「16EX」と「17EX」の2台が持つ、圧倒的なスピード感と大胆なフォルムがデザインの基盤となった。ヘンリー・ロイスがかつて90mphを超える究極の走行性能を求めて挑んだその挑戦的な姿勢は、現代の電気自動車技術によって新たな次元へと昇華されている。
モノリシックな美学と圧倒的な存在感のエクステリア
全長5.76mという、フラッグシップサルーンであるファントムに匹敵する巨躯を持ちながら、プロジェクト・ナイチンゲールは贅沢な2シーターのコンバーチブル形式を採用している。デザインの核となるのは、装飾よりも精密なラインを優先する「ストリームライン・モダン」の規律である。車体全体が一つの大きな金属塊から削り出されたかのようなモノリシック(一枚岩)な美学が貫かれており、見る者に圧倒的な安定感と優雅さを印象づける。
フロントフェイスでは、幅1m近くに及ぶステンレススチール製のパンテオン・グリルが目を引く。内燃機関のような冷却吸気口を必要としない電気自動車の特性を活かし、グリルの周囲には途切れのない広大な表面が実現された。また、ブランド史上最も進歩的な試みとして、細身の垂直型ヘッドランプを採用している。リアセクションには、グランドピアノの蓋のようにサイドに開く「ピアノ・ブーツ」や、排気管のないEVならではの滑らかな「エアロ・アフターデッキ」が備わり、機能と美しさを高次元で両立させている。
静寂が生んだ「鳥のさえずり」を可視化するインテリア
完全電気ドライブトレインがもたらす極限の静粛性は、車内体験に革命的な変化をもたらした。開発段階のプロトタイプを走行させた際、デザイナーたちはルーフを開けた状態で鳥のさえずりが鮮明に聞こえることに驚嘆したという。この体験が、ナイチンゲールの歌声の音波パターンを分析し、それを光の星座として車内に再現するという独創的なアイデアに繋がった。この室内空間は、まさに移動する芸術作品としての性格を帯びている。
インテリアのハイライトは、1万500個もの「星」が輝く「スターライト・ブリーズ」スイートである。ナイチンゲールの歌声を視覚化したこのアンビエント照明は、乗員を包み込むように配置され、音楽と光が融合したような幻想的な空間を演出する。また、ドアの内張りやセンターコンソールには馬の鞍を連想させる「サドル・モチーフ」が施され、最高級のレザーとステンレススチール、そしてV字型に配置されたブラックウッドが、洗練された工芸品のような質感を際立たせている。
ヨットのような航行体験と選ばれし100人への招待
走行体験については、デザイナーやエンジニアが「セーリング・ヨットでの旅」に例えるほど、滑らかで静かなものとなっている。ほぼ無音のパワートレインと、徹底的に排除された風切り音により、乗員は周囲の自然の音を楽しみながら高速走行を味わうことができる。足元にはブランド最大となる24インチのホイールが装着され、ヨットのプロペラをモチーフにしたデザインが、静止時でも動きを感じさせるダイナミズムを付加している。
このプロジェクト・ナイチンゲールは、今夏から世界各地でのテストおよび検証プログラムを開始し、2028年から順次納車が始まる予定である。しかし、この車を手にすることができるのは、ロールス・ロイスから招待を受けた、ブランドのデザインに深い理解と愛着を持つ世界でわずか100名のクライアントに限られている。ヘンリー・ロイスの実験精神を受け継ぎ、未来のラグジュアリーを定義するこのモデルは、まさに「究極」を求める審美家たちのための特別な一台となるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
かつてヘンリー・ロイスが究極の静粛性を追い求めた果てに、ブランドが辿り着いたのが「無音という名のカンバス」である。EV化による極限の静けさを単なるスペック向上で終わらせず、ルーフを開けた際の鳥のさえずりを取り込む「外界との調和」へと昇華させた点は、見事というほかない。光で音波を可視化する演出とモノリシックな造形美は、クルマを動く現代美術館へと変える。ノイズを完全に削ぎ落としたからこそ描ける、スペクターの系譜から連なる新時代のスーパーラグジュアリーである。
【画像42枚】選ばれし100名だけが手にする野心作。ロールス・ロイス初のEVコーチビルド「プロジェクト・ナイチンゲール」の全貌を見る



