高騰する「STI」へのアンチテーゼか? 日本未設定の「3ペダルWRX」を試す
現在、スバルの国内ラインナップでMTを選べるのはBRZのみ。そんな中、スバルが突如として国内メディア向けに用意したのは、日本では設定のない「6速MT」を搭載したカナダ仕様のWRXだった。過剰なまでに高性能化・高額化した近年の限定モデルとは対照的な、シンプルかつベーシックな3ペダルセダン。この異例の試乗車に込められたスバルの思惑とは何なのか。役目を終える直前の個体を連れ出し、その本質を探った。
【画像24枚】日本にはない「6速MT×手引きサイド」。スバルWRXカナダ仕様のコクピットと外観を見る
絶滅危惧種となったスバルのMTと、高嶺の花となった「STI」
現在、国内のスバルのラインナップにおいてMTの選択肢があるのは2ドアクーペの「BRZ」のみ。4ドアのモデルはすべて2ペダルとなっている。燃費や排ガス性能の適正化や看板技術であるアイサイトとの親和性など事情は複数考えられるが、クルマ好きにとってはさすがに寂しい感はある。
と、そういう声もあろうかと、当のスバルも折につけMTの限定車を用意してきたわけだ。特にその受け皿となる「WRX」シリーズはつい先日、「STI Sport♯」という600台限定のモデルを発表している。VB世代では日本初となるMTはFA24型との組み合わせとなるが、回転&摺動部品は公差を選りすぐり、サスやブレーキも専用チューニングを施すなど、STIの冠を戴くべくひと通りの手が加わっている。しかし価格は610万5000円(税込)。たとえば、EJ20を搭載したVA世代のSTIファイナルエディションよりも2割余は高い。
と、こと日本市場において、お客さんとスバルとの間では、スポーツモデルにおける期待値が相乗的に過大化し続けてきたのではないか……と、客観的にみていてそんな疑問を抱くところもある。
「S20x」云々みたいなモデルが現れるや幾度となく瞬殺され続け、ベースモデルの倍近い値札が下がれど怯むことなく追ってくるスバリストの面々を前にすると、さすがにメーカーの側も前を越えるべくパフォーマンスに磨きを掛ける。それに比して仕立ても大仰になり価格も上がり……と、そういうループに陥った挙げ句、日常的かつ手軽にスバルの旨さを味わってみたいというクルマ好きのニーズが置き去りになってしまったわけだ。
ジャパンモビリティショーで見えた予兆と、突如現れた「左ハンドルの刺客」
スバルの中にはそんな状況への内省もあるようで、先のジャパンモビリティショー2025で展示された「パフォーマンスB STIコンセプト」には、サイズもパフォーマンスも価格も手軽にしたいという作り手の想いが込められている。特筆するほど新しいものがあるわけではないが、持てるアセットを巧く組み合わせながらその想いをモノ化できるかという検証は進行しているようだ。
そんなパフォーマンスB STIコンセプトのお披露目がひと段落するや、スバルは次なる手を打ってきた。カナダ仕様のWRXを広報車両としてメディアに貸し出すという。日本ではWRX S4に該当するモデルだが、当然ながら左ハンドル、そして日本では設定のない6速MTを搭載した3ペダルの個体となる。
その詳細についてはスバル側から発表はないが、恐らくはR&DのRの側、マーケットリサーチの一環とうかがえそうだ。つまりはゴリゴリのSTI銘柄とは対照的な、BC型レガシィでいうところのRSのようにシンプルなモデルにどのくらいの需要が期待できるのか、メディアを介してその反応をみてみたいというのが彼らの思惑ではないだろうか。
というわけでこのWRX広報車、昨年末から稼働していたこともあって様々な媒体で紹介されている、そのコンテンツをご覧になった方もいらっしゃるだろう。そしていよいよ役目を終える3月末、最後の最後に借り出すことになった。そんな時程の都合で自前のスマホで撮ることになったため、写真もお見苦しいところがあるのはご容赦いただきたい。
リアワイパーすら持たない、すっぴんの「WRX」が放つ機能美
個体のグレードはカナダ仕様でも最もベーシックな類になるそうだが、日本仕様のGT-H EXにほぼ相当する。ただしアイサイトXは未採用、サイドブレーキは手引きなのでアイサイトも完全停止保持はなし、そしてSI-DRIVEもなしと装備類は簡略化されている。日本においてスバルのセダンといえば頑なにリアワイパーが標準装着であることを思い浮かべるが、カナダ仕様にはそれもない。おかげでリアビューはすっきりしている。小さなリアスポイラーは形状的にSTI Sport#と同じものと思われるが、カナダ仕様では標準装備となる。
着座感や操作系、情報表示といった運転環境面は我々が目慣れたスバル車そのものだ。センタートンネルやセンターデフによる足元周辺の左右差が極めて小さいことも美点のひとつゆえ、右ハンドル化によるペダルレイアウトの影響は無視できる範疇だろう。ちなみにSTI Sport#をみるとサイドブレーキは右ハンドル化に合わせて右側に置かれていた。この辺りはスバルの仕事の丁寧さを感じるところだ。
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