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メルセデスAMGは、電気自動車として完全に新しい駆動コンセプトを採用した新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」を2026年5月20日に発表した。量産EVとして初めてアキシャルフラックスモーターを搭載し、F1の技術に基づく800Vの高電圧バッテリーを組み合わせている。最高出力は860kW(1169ps)に達し、わずか10分の充電で460km以上の航続距離を回復するなど、ハイパフォーマンスセグメントの基準を塗り替える画期的なモデルとなっている。ラインナップは「GT 63 4ドアクーペ」と「GT 55 4ドアクーペ」の2モデルが用意されている。
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0-100km/h加速2.1秒。新次元を拓く3基のアキシャルフラックスモーター
新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペの核心は、非常に革新的なアキシャルフラックスモーター(軸方向磁束モーター)にある。この新モデルは、フロントアクスルに1基、リアアクスルに2基、合計3基のモーターを搭載。高出力モーターは前後それぞれのエレクトリック・ドライブユニットに統合されており、リアには2基のモーターとコンパクトな1段プラネタリーギアボックスが収められている。
GT 63 4ドアクーペ 4MATIC+では、AMGローンチコントロール使用時のピーク出力が860kW(1169ps)に到達する。これにより、0-100km/h加速はわずか2.1秒、0-200km/h加速は6.4秒という圧倒的な性能を実現し、最高速度はオプションのドライバーズパッケージ装着時で300km/hを誇る。
いっぽう、GT 55 4ドアクーペ 4MATIC+も600kW(816ps)を発揮する強力なパワートレインを備えている。従来の電気モーターと比較して、このアキシャルフラックスモーターはより高い連続出力とトルクを提供し、過酷なドライビングパフォーマンスを連続して再現することが可能だという。
ハイパーカー「AMG ONE」直系。F1の哲学を注入した専用高電圧バッテリー
パワーの源となる高電圧バッテリーは、メルセデスAMG ONEハイパーカーの経験とF1のパフォーマンス哲学を融合させた全く新しい専用開発品だ。この「AMGハイパフォーマンス・エレクトリック・バッテリー」は、新開発された細長い円筒形のセルを採用している。セルは高さ105mm、直径26mmという独自フォーマットであり、発生した熱の放散を効率化している。合計2660個のセルには直接冷却システムが組み込まれており、非導電性の冷却オイルが各セルの周囲を流れることで常に理想的な温度に保たれる仕組みである。
この徹底した温度管理により、頻繁な加速や減速を繰り返す走行時でも高い連続出力を維持できる。さらに充電性能も極めて高く、600kWの充電能力に対応している。わずか10分間で約460km分のエネルギーを補充できるほか、充電残量10%から80%までの充電にかかる時間はわずか11分となっている。
なぜEVにV8の音響が必要なのか。触覚まで刺激する「AMG FORCE S+」の熱狂
電気自動車でありながら、V8エンジン愛好家を熱狂させる仕掛けも用意されている。専用の「AMGFORCE S+」モードを選択すると、リアルタイムに状況を解釈する1600以上のサウンドファイルを用いた本格的なAMG V8サウンドが響き渡る。加えて、模擬的なシフトチェンジによる駆動力の途切れなど、触覚をも刺激する没入感のある体験が提供される。
シャシー面では、セミアクティブ・ロールスタビライザーを備えた「AMG ACTIVE RIDE CONTROL」エアサスペンションが標準装備され、長距離の快適性とダイナミックなハンドリングを両立している。また、空力性能を高めるため、アンダーボディの2つのアクティブなエアロキネティクス・ベンチュリフロープレートや、アクティブ・リアディフューザーなどが採用され、走行状況に応じて瞬時にダウンフォースと安定性を最大化する。AMG RACE ENGINEERの機能により、レスポンスやコーナリングの挙動を個人のドライビングスタイルに合わせて細かく設定することも可能だ。
生成AIがもたらす新たな対話と、ARが導く理想のレコードライン
インテリアはドライバー重視の設計となっており、10.2インチのメーターパネルと14.0インチのマルチメディアモニターがシームレスなガラスデザインで統合されている。搭載される新世代のMBUXインフォテインメントシステムには、ChatGPTやMicrosoft Bing、Google Geminiといった人工知能が組み込まれており、MBUXバーチャルアシスタントを通じて複雑な会話を交わすことが可能となった。
サーキット走行向けには「AMG TRACK PACE」が用意され、走行中のデータを毎秒10回記録し、拡張現実(AR)機能を用いて理想的なレコードラインをディスプレイに投影することもできる。
さらに、全輪駆動であるAMGパフォーマンス4MATIC+は、完全に分離された電気モーターによって前後アクスル間のトルク配分を最大限に変化させ、卓越したドライビングプレジャーをもたらす。新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペの生産は、2026年夏からドイツのジンデルフィンゲン工場で開始される予定。アキシャルフラックスモーターはベルリンのマリエンフェルデ工場において製造される。価格は同等の従来モデルに基づく予定であり、数日以内に受注が開始される。
【ル・ボラン編集部より】
最高出力1169psという数値に目を奪われがちだが、本作の白眉はドライバーを熱狂させる執念にある。内燃機関を搭載した初代モデルにおいても、GT4ドアクーペは2.5トン級の巨躯を極上の足回りでねじ伏せる武闘派でありながら、日常の快適性を高度に両立させていた。今回、アキシャルフラックスモーターという最先端の知性を得たが、あえて疑似V8サウンドやシフトショックといった「野蛮さ」を仕込んできた。ただ速いだけの無機質なEVには決してしない。内燃機関の情緒と圧倒的な電力を高次元で同居させた、AMG流の哲学の体現である。
ル・ボランWebでは今回の新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペについて、近日中に詳細な解説動画をお届けする予定だ。楽しみにお待ちいただきたい。
【画像53枚】V8の咆哮が似合うアグレッシブな造形。量産EVの頂点に立つ「新型AMG GT 4ドアクーペ」のディテールを見る



