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【海外試乗】アルピーヌ初EV「A290 GTS」が示す新次元の旋回性能。次期A110にも通じる“軽さ”の正体とは?《LE VOLANT LAB》

アルピーヌ A290 GTS

アルピーヌが放つ“日常のなかの非日常”

2026年7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで実車公開された次期アルピーヌA110のテストカー。モータージャーナリスト大谷達也氏が5月のテックデイで取材した新プラットフォーム「APP」の詳細は既報の通りだ。その直後に氏がフランスで試乗した、日本上陸間近となるブランド初のBEV「A290」(2024年登場)のテストドライブ・レポートをお届けしよう。

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シャンパーニュ地方で試す、新世代フレンチ・ホットハッチ

アルピーヌ・テックデイに参加した翌日、私はパリでA290 GTSを借り出すと、ひとりシャンパーニュ地方を目指した。

アルピーヌ初のEVであるA290は、コンパクトハッチバックがベースの前輪駆動モデル。したがって、後輪駆動のスポーツEVとしてデビューする次期型A110とはフォーマットが大きく異なるが、アルピーヌが考えるEVの姿を理解するには必ずや役立つはず。そんな期待を抱いて、私はこのテストドライブに臨んだ。

A290は2024年6月にワールドプレミアを果たした。つまりデビューしてから2年が過ぎているわけだが、日本導入は2026年中となる見通し。したがって、このリポートはバイヤーズガイドとしても役立てていただけるだろう。

A110とは異なるアプローチ。アライアンスの強みを活かしたパッケージ

こちらもEV化された新型ルノー5同様、プラットフォームはCMF-B EVを採用する。ルノーが中心となって開発したCMF-Bが、同じアライアンスである日産のノートなどにも用いられていることはご存知のとおり。ただし、CMF-B EVに使われるパーツの70%はCMF-B用とは別物の専用開発品で、CMF-B EVの生産コストはルノーが独自に開発したEVのZOEに比べて30%も低廉という。

なお、アルピーヌは独自開発したアルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム(APP)を基本とする次期型A110などに“アイコン”というシリーズ名を与えているいっぽう、A290とそのあとに続いてデビューしたA390は「Everyday Extraordinary(日常のなかの非日常)」の名で呼ばれる。つまり、使い方がある程度限られるスポーツカーのA110に対して、A290とA390は「日常的な使い勝手も考慮されたスポーツモデル」との位置づけなのだ。

このためA290とA390は5人乗りのハッチバック・ボディが与えられている。また、ルノー・日産アライアンスで開発したプラットフォームを用いるのもEveryday Extraordinaryシリーズの特徴で、A390には日産アリアやリーフと同じCMF-EVが使われているようだ。

いたずらに数値を追わない。アルピーヌらしい絶妙なバランス

A290のスペックをもう少し詳しく紹介しよう。

ボディサイズは全長3990mm×全幅1820mm×全高1520mmとコンパクト。ホイールベースは2530mmなので、全幅を除けば日産ノート(4045mm×1695mm×1520mm、2580mm)よりもひとまわり小さいことになる。いっぽうで車重は1479kgなのでノートより200kg以上重いが、リーフの最軽量モデルより300kg近くも軽い。この、EVとしては比較的軽量な設計がA290の“キモ”と見ていいだろう。

これを実現するためバッテリー容量は52kWhと、どちらかといえば小さめ。前輪を駆動するモーターもA290 GTS用で最高出力220ps/最大トルク300Nmと、スペックは控えめだ。ちなみに0-100km/h加速は6.4秒、0-400m加速は14.7秒と、最新のスポーツモデルに比べれば特段速くはない。パワートレイン系のスペックをいたずらに追わず、それよりも軽さやバランスの良さで勝負するクルマ作りは、歴代A110と共通するアルピーヌらしい発想といえる。

シャシー性能への徹底したこだわりと“グリップ志向”へのシフト

その代わり、シャシー性能には徹底的にこだわっている。たとえば、リアサスペンション形式はノートのトーションビーム式からマルチリンク式へと大幅にアップグレード。バンプストップラバーにハイドローリック式を用いる点も、ルノー・スポールの流れを汲むアルピーヌとしては自然な流れだったようだ。

そのいっぽうでタイヤはミシュラン・パイロットスポーツ5Sをチョイス。同じミシュラン・パイロットスポーツでも、ハイパフォーマンスな“S”系ではなく、敢えてパイロットスポーツ4を履いていた2世代目A110とは対照的な選択となっている。つまり、「振り回して楽しむ」A110に対して、A290は「タイヤをグリップさせて俊敏な走りを実現する」方向性に舵を切ったとみてよさそうだ。

意のままに操れる清々しさ。アルピーヌならではのダイナミクス

実際に試乗しても、そうしたコンセプトが明確に伝わってくる乗り味だった。

まず、サスペンションはスパッとキレイに割り切ったくらいソリッドな味付け。ただし、サスペンション取り付け部周辺の局部剛性を含むボディ剛性全般が恐ろしく高いこともあって、安っぽいバイブレーションは一切残らず、振動減衰に優れた歯切れのいい乗り心地が味わえる。

低速域での快適性をギリギリまで削り取ったその判断というかセンスは、「ワインディングロードではそのメリットが必ず理解してもらえる」という自信の表れのようにも思えた。

今回は肝心のワインディングロードは走れなかったけれど、交差点や高速道路でステアリングを切るたびに、その鋭い切れ味と正確さを何度も味わうことができた。決して過敏な反応を示すわけではなく、あくまでもドライバーの意図に沿った応答を見せてくれるのだけれど、ステアリング系に何のあいまいさも感じられないダイレクトな感触は、最近のコンパクトカーでは決して味わえなかった清々しささえ覚えるもの。このフィーリングこそ、アルピーヌがA290でもっとも伝えたかったところではないのか。

ハードコーナリング時にも安定した姿勢と優れたロードホールディング性を発揮してくれるであろうことは、市街地や高速道路を走っているだけでもはっきりと理解できた。無闇にパフォーマンスをつり上げたり余計なデバイスを追加したりするのではなく、EVでもシンプルでバランスのいいクルマ作りを心がければ、ここまで意のままに操れるスポーティモデルができあがることを示す好例だろう。その意味で、アルピーヌでなければ作り得なかったEVといっていいような気がする。

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Photo: 大谷達也/T. Otani

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