コラム

極限のピット戦略と若手の涙。波乱の富士GT300で52号車GRスープラが魅せた執念の大逆転劇【2026 SUPER GT第4戦】

スタート直前の雨、そして赤旗。フェラーリが逃げる序盤戦

真夏の富士スピードウェイを舞台に開催された、2026 AUTOBACS SUPER GT 第4戦『FUJI GT 300km RACE』。8月2日に行われた決勝レースは、直前の降雨から赤旗中断へと至る波乱の幕開けとなったが、再開後は見応えのある力と戦略のぶつかり合いとなった。GT300クラスでその頂点に立ったのは、予選6番手から絶妙なピット戦略と気迫のドライビングで逆転を果たした#52 Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)だった。
【画像63枚】奇策か、必然か。52号車GRスープラの極限ピット戦略が炸裂したスーパーGT 2026 第4戦 GT300

朝から30度を超える真夏日となっていた富士だったが、グリッドウォーク中に突如として雨が降り注ぎ、路面は一時ウェットコンディションに。急激な天候変化を受け、安全のためレースはセーフティカー(SC)先導でスタートを切った。しかし直後にGT500クラスのアクシデントが発生し、赤旗中断となる波乱の展開で幕を開ける。

午後2時15分にリスタートが切られる頃には、路面は完全なドライへと回復していた。レースが本格的に動き出すと、ポールポジションからスタートした#45 PONOS FERRARI 296 EVO(篠原拓朗/川端伸太朗)が主導権を握り、後続を力強く牽引していく。

その後方で魅せたのが、#52 GRスープラのスタートドライバーを務めた野中誠太だ。素晴らしいペースで追い上げを見せ、16周目には3番手へと浮上。さらに7番手スタートの#32 ENEOS X PRIME AMG GT3の鈴木斗輝哉もアグレッシブな走りで2番手まで順位を上げ、トップを窺う三つ巴の展開となっていった。

勝負を決した究極の選択「フロントタイヤ2本のみ交換」

レースのターニングポイントとなったのは中盤のピットストップだ。トップを走る#45フェラーリが30周目にピットインし、手堅く作業をこなしてコースへ復帰していく中、最大の逆転劇のシナリオは52号車のピットで密かに進行していた。

41周目、ルーティンのピットインを行った#52は、吉田広樹へのドライバー交替と同時に「フロントタイヤ2本のみ交換」という大胆な戦略に出る。ピットでの静止時間を極限まで削り落とすこの作戦が見事に的中し、事実上のトップを走っていた#45の目前でコースへ復帰することに成功したのだ。

ベテランの意地と若手の涙。劇的なフィニッシュ

しかし、2本のみの交換というアドバンテージの代償として、冷えたニュータイヤへの熱入れにはどうしても時間が必要となる。そこにすかさず牙を剥いたのが#45フェラーリの川端だ。アウトラップの#52に肉薄し、2台は手に汗握るサイド・バイ・サイドの激しい攻防を繰り広げた。

ここで吉田はベテランらしい巧みなマシンコントロールとブロックラインで首位を死守。その間に後方から#7 CARGUY Ferrari 296 GT3が45号車に急接近したことで、#45は防戦に回らざるを得なくなる。このチャンスを逃さず、吉田は一気に5〜7秒の安全なマージンを築き上げた。

そのままトップでチェッカーを受けた#52 Green Brave GR Supra GTは、2023年第7戦以来となる歓喜の優勝。吉田は故郷・熊本へ最高の勝利の報せを届け、念願のGT初優勝を手にした若き野中は、強豪チームでのこれまでの重圧から解放され、嬉し涙で目を潤ませた。

なお、熾烈なファイナルラップのバトルを制して2位に入ったのは#32 ENEOS X PRIME AMG GT3、3位には#7 CARGUY Ferrari 296 GT3が続き、それぞれチームやドライバーにとって嬉しい初の表彰台獲得となった。

単なるマシンの速さだけでなく、チームの研ぎ澄まされた決断力とドライバーの技量が完璧に噛み合った、GT300クラスならではの醍醐味が詰まった見事な一戦であった。
【画像63枚】奇策か、必然か。52号車GRスープラの極限ピット戦略が炸裂したスーパーGT 2026 第4戦 GT300

■スーパーGT公式HP:https://supergt.net/

フォト=田村 弥/W.Tamura

注目の記事
注目の記事

RANKING