ニュース&トピックス

ポルシェの次世代オーディオはなぜ「GaN」なのか。世界初採用の裏にあるグラム単位の軽量化への執念

単なる高音質化ではない?

ポルシェは2026年8月21日、同社の次世代車載オーディオシステムに「窒化ガリウム(GaN)」技術を導入すると発表した。この技術を採用した世界初の量産対応ハイエンド車載オーディオシステムとして、2027年以降のポルシェ車から順次搭載される予定である。

【画像4枚】2027年登場の次世代ハイエンドオーディオに隠された秘密を画像から実感する

変換効率の向上と大幅な軽量化を実現

GaNは、従来のシリコン半導体と比較して、電力密度と変換効率に極めて優れる半導体材料であるとされる。ポルシェはシュトゥットガルト大学との共同開発を通じて、このGaN技術を「Burmester 3Dハイエンドサラウンドサウンドシステム」に適合させた。具体的には、400Wのサブウーファーアンプを駆動する際の電圧変換に、GaNベースの高性能チップが用いられるという。

この技術の最大のメリットは、コンポーネントの小型・軽量化である。GaN半導体は電力変換効率が高いためエネルギー損失や発熱が少なく、冷却に関する要件が大幅に緩和される。その結果、ヒートシンクの重量を約20%削減できるほか、コンデンサなどの受動部品も小型化が可能になるとしている。

さらに、製造時に多くのエネルギーを消費するアルミニウム(ヒートシンク材)の使用量を削減できることは、製造工程におけるCO2排出量の削減という環境面でのメリットももたらすと説明されている。

サブウーファーアンプを駆動する際の電圧変換に、GaNベースの高性能チップが用いられる

スポーツカーの性能と音響体験の両立

ポルシェがスポーツカーという過酷な環境下でGaNの利点を活用する構想を立ち上げたのは、2023年半ばのことである。その後、2024年春からシュトゥットガルト大学の堅牢パワー半導体システム研究所などと共同でプロトタイプの開発を進め、量産対応のアンプを完成させた。ポルシェはこのプロジェクトに関連して、すでに複数の特許を出願している。

ポルシェのヴァイザッハ開発センターでオーディオシステムのイノベーションを担当するステッフェン・ブローシュ氏は、次のように述べている。

「力強い低音の土台は、お客様がポルシェに期待する感情的な体験の一部です。当社のシステムの電力の余裕は、自信に満ちたダイナミックなサウンド再生を可能にし、それは当社のスポーツカーのキャラクターに完全に合致しています。GaNを使用することで、その体験をさらに高めることができます」

EVの高電圧システムなどへの応用も視野に

ポルシェは、このGaN技術をオーディオ分野以外にも展開していく構えを見せている。戦略的半導体管理を担当するラース・ホイケン博士は、スポーツカーにおける効率と重量の重要性を強調した上で、今後の可能性について次のように語っている。

「その可能性は大きく、これはほんの始まりに過ぎません。GaNは電力が変換されるあらゆるシチュエーションで理想的です。たとえば、電気スポーツカーの高電圧システムの電力変換に使用するなど、多くの応用分野が考えられ、現在詳細に調査しています」

オーディオシステムの進化にとどまらず、将来の電動化モデルにおける基幹技術としても、ポルシェのGaN技術への取り組みには引き続き注目が集まりそうである。

【ル・ボラン編集部より】

オーディオの高音質化と聞いて、単なる快適装備の拡充と捉えるのは早計だ。軽量化でスポーツカーの真髄を剥き出しにしようとするポルシェにとって、グラム単位の削ぎ落としは至上命題である。GaN技術によるアンプの小型化とヒートシンクの重量削減は、重厚な音響体験と軽快な運動性能という、本来背反する要素を高い次元で共存させる彼ららしいアプローチだ。電動化技術の進化のなかにあっても、ポルシェの偏執狂的なまでの走りへの執着がブレることはない。

【画像4枚】2027年登場の次世代ハイエンドオーディオに隠された秘密を画像から実感する

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
Photos: Porsche AG

注目の記事
注目の記事

RANKING