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BMWグループは2026年9月10日、初の水素燃料電池量産車「BMW iX5ハイドロジェン」が量産化に向けた新たな開発フェーズに到達したと発表した。現在、プロトタイプを用いた過酷な実環境での走行テストが大詰めを迎えている。同時に、心臓部となる第3世代燃料電池システムのプロトタイプ組み立てがミュンヘンで開始され、オーストリアのシュタイヤー工場でも将来の量産化に向けた準備が本格始動している。
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システム統合とBMW特有の走りを追求するテスト
現在実施されているテストでは、過酷な環境や動作条件のもとで車両システム全体を検証することに重点が置かれている。燃料電池システム、電気モーター、高電圧バッテリー、水素タンク、そして全体を制御する「エナジー・マスター」といった各ユニットの協調制御を実地で確認している。開発チームは、高い負荷がかかる状況でも複雑な制御を最適化し、ドライブトレインの性能を常に最大限に引き出せるよう調整を重ねている。
このテストの重要な目的の一つは、燃料電池車であってもBMWのアイデンティティである「駆けぬける歓び」を体現することだ。革新的な高電圧バッテリーとエナジー・マスターの組み合わせにより高いエネルギー回生能力を引き出し、システム全体の効率を向上させている。同時に、静止状態から100km/hまでの加速を5秒未満でこなすなど、高い走行性能の達成を目標に掲げている。
ミュンヘンとシュタイヤーの連携による量産準備
車両の走行テストと並行して、ミュンヘンの水素コンピテンス・センターでは、第3世代となる燃料電池システムのプロトタイプ組み立てが新たな段階に入った。トヨタ自動車との共同開発によるこのシステムは、今回のプロセスを通じて効率的で安定した製造手法の確立を目指している。プロトタイプ組み立ては単なる部品作りにとどまらず、プロセスの最適化や知見の蓄積、そして量産工場へのノウハウ共有という重要な役割を担う。
実際の量産を担当するオーストリアのシュタイヤー工場では、事業化に向けた準備が着々と進められている。工場内にはすでに専用のテストベンチや製造設備が導入され、従業員に対する段階的なトレーニングも開始された。ミュンヘンの開発拠点とシュタイヤーの生産拠点が緊密に連携することで、将来の本格的な生産拡大に向けた強固な基盤が築かれつつある。
多彩なパワートレイン戦略と水素の可能性
BMWグループは、特定の技術に絞り込まないテクノロジー・オープンのアプローチを継続しており、新型iX5ハイドロジェンはその戦略を象徴するモデルとなる。グローバルテストの成功を受け、このモデルをグループ初の水素駆動量産車として市場に投入する計画だ。今後の展開として、次期型の「X5」では、バッテリー電気自動車やプラグインハイブリッド、内燃機関に加え、水素燃料電池という幅広い選択肢が用意されるという。
水素を燃料とする最大の利点は、走行時に排出ガスを出さない環境性能に加え、バッテリー電気自動車が苦手とする領域をカバーできる点にある。BMWは目標航続距離を最大750km(WLTP)とし、5分未満という短い燃料充填時間と組み合わせることで、長距離移動での実用性を高めようとしている。このプロジェクトにはドイツ連邦政府から1億9100万ユーロ(約340億円)、バイエルン州から8200万ユーロ(約146億円)の資金支援が行われており、次世代モビリティに向けた開発が強力に後押しされている。
【ル・ボラン編集部より】
内燃機関から電動化へと移行する過渡期において、BMWは全方位の戦略を崩さない。無音のFCEVでありながら、0-100km/h加速5秒未満という鋭さと、重量を感じさせない軽快なフットワークを共存させる手腕は、かつて名機シルキーシックスが放った洗練に通じるものがある。環境性能という絶対命題と「駆けぬける歓び」というブランドの宿業。相反する両者を高次元で成立させる背景には、長年蓄積されたシャシー制御技術と、動力源を問わずドライバーを魅了し続けるミュンヘンの執念が息づいている。


