国内試乗

【国内試乗】「キャデラック XT6」ゆとりの3列シート・クロスオーバーSUV

2019年のデトロイト・モーターショーで発表された6人乗り3列シートのクロスオーバーSUV「XT6」が日本に上陸した。昼夜を問わず遠くからでも一目でキャデラックと分かるスタイリングと、最新の安全テクノロジー、クラストップの広大なキャビンスペースは、一見の価値あり! です。

欧州プレミアム系にもまったく劣らない仕上がり

XT6はキャデラックのSUVファミリーにおいて、エスカレードに次ぐ車格のSUVだ。全長5060mm、全幅1960mmという寸法は欧州車になぞらえればアウディQ7にほど近く、同様に3列シートのパッケージを採っている。本国仕様は2列目が3人乗りの7シーターも選べるが、日本仕様は2列目キャプテンシートの6シーターという構成が標準だ。

空力特性に優れた均整の取れたプロポーションに加えて、縦基調のランニングランプ、高輝度のクリスタルメッシュグリルを組み合わせたフロントマスクも印象的。充実した運転支援機能と最新の安全装備も備わる。

搭載されるエンジンはGM系ではお馴染みの3.6L V6ユニットで、低負荷時にはV4として機能する気筒休止システムを備えている。最高出力314ps、最大トルクは368Nmと、そのパワーは先に登場しているXT5のそれと変わらない。組み合わせられるトランスミッションは自社製の9速ATとなり、トランスファーは理論上0:100から100:0の前後駆動配分を可能とするインテリジェントAWDを標準採用する。駆動制御はツーリング、AWD、スポーツ、オフロードと4つのドライブモードと連動しトルクベクタリングなどが最適化されるほか、FFで固定することも可能となり、高効率な巡航をサポートする。

最高出力314psを発揮する3.6L V6エンジンは新設計の9速ATと組み合わせられスムーズな加速を実現。V6のパワーが必要ない時は4気筒モードとなり燃費性能も向上。

新世代のデザインイメージを印象づけるホリゾンタルなヘッドライトは片側14灯のLEDの発光を細かく制御し、対向車や歩行者の幻惑を抑えながら広範な照射範囲を確保するマトリックスタイプが採用されている。加えてADASも充実が図られており、全車速追従ACCやレーンキープアシスト、歩行者対応衝突被害軽減ブレーキやコリジョンアラート、サイドブラインドやリアクロストラフィックのアラートに360度ビューモニタリングやデジタルルームミラーなども標準装備化された。

内装のデザインはXT5のラインを踏襲、空調やシートベンチレーション、ハードキーによる気温や風量の設定などのコントロールパネルは独立して下方に配置される。ダッシュボード面をラップするマテリアルもバックスキン調をレイヤーさせるなど、上質感の演出にはこと欠かない。

電動可倒式の2列目キャプテンシートと電動可倒+倒立式の3列目シートは、大きな荷物を積む時に抜群の利便性を発揮。

XT6の日本仕様のグレード「プラチナム」は本国仕様の最上位グレードをベースとしていることもあり、シートのレザー表皮はセミアニリン鞣し、2列目のキャプテンシートや3列目シートは荷室側から電動格納コントロールが可能となっている。3列目シートの着座感はつま先の収まりが悪いものの、前後席間は望外に余裕があり、キャプテンシートが採用される2列目の掛け心地はSUVらしからぬ快適さだ。さすがに成人男子6人というわけにはいかずとも、2名が女性や子供であれば充分実用に足る居住空間は得られている。

ドライブフィールは低速域で若干路面の凹凸状況を素直に拾ってしまうところがあるも、中高速域では穏やかな乗り心地に収まってくれる。とはいえブカブカというわけではない。どころか、適度に引き締まった上屋の動きやオン・ザ・レールのコーナートレース性などは同級の欧州プレミアム系にもまったく劣らないほどだ。

そこに高回転域までスキッと吹け上がるNAエンジンが組み合わされるところにXT6の個性がある。さすがに低回転域のトルクはターボ勢には及ばないが、ワイドレシオの9速ATがそこをうまく補えることで、ドライバビリティ的にも歯痒さはない。硬軟を巧みに併せ持つ点は、現代のキャデラックに共通した魅力ともいえる。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年4月号より転載

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