ポルシェSUVラインナップの新たなスポーティバージョン、カイエンクーペが日本に上陸した。特徴的なルーフラインを描くカイエンのクーペ版かと思いきや、そこにはポルシェの最新テクノロジーをはじめ、様々なハイライトも用意されていた。
ポルシェ初となるSUVクーペ
2月の終わりの週末、都内でクルマを走らせていたら、短い時間に何台ものポルシェ・カイエンクーペとすれ違って驚いた。聞けば、この週にちょうど納車が始まったところというわけで、オーダーを入れて待ち侘びていた人たちが、手に入れて早速ドライブに出かけていたのだろう。やはりクーペには、そんな風に自分の、そして周囲の気分をアゲる華やいだ存在であってほしいものだ。
今やひとつのカテゴリーとして確立されたSUVクーペの市場だが、ポルシェの参入は遅かった。実際のところアイディアはかなり早い段階からあったそうだが、やるならばモデルライフ途中での追加ではなく、当初よりその設定を前提に開発したかったというのが、このタイミングになった理由だという。つまり3世代目となる現行カイエンは、当初よりクーペと並行して開発されていたのである。
実際、カイエンクーペはカイエンのテールゲートを斜めに切り落としただけの存在ではない。たとえば、そのフロントウインドーはわずか1度ではあるが傾斜角が強められて、20mm下げられたルーフに繋げられている。
もちろんテールゲートも傾斜が強められているが、実はよく見れば、ガラスルーフを標準とすることで横から見た際のルーフラインを、あたかも911のそれのように薄く見せ、さらにルーフスポイラーを標準装備とすることで、実際以上に傾斜感をアピールするなど、その造形は細かく工夫されている。しかも、リアデッキを低く抑えることができたのは、ポルシェアクティブエアロダイナミクスに含まれる、90km/h以上で展開するアダプティブリアスポイラーの採用により高速域でのリフトが抑えられたおかげというわけで、このフォルムはまさにデザインとエンジニアリングの巧みな融合によって描き出されたのだ。
さらに言えば、スタイリングに違和感がないのは、ポルシェのアイデンティティであるフロントデザインのおかげでもあるだろう。この顔にクーペフォルムが似合わないわけがない。むしろこちらこそがカイエン本来の姿かもしれない、なんて思わせるほどである。
一方、インテリアはほぼカイエンそのまま。ただし、低くなったルーフに合わせて着座位置を前席で約10mm、後席で約30mm下げている。おかげで後席は前後スライドがなくなり2座が標準となるが、オプションで3人掛けシートも選択できる。今回の試乗車はベースグレードであるカイエンクーペの、定員5名となるこの仕様だった。