2002年に生産を終了して以来、実に17年ぶりにBMWとの共同開発によって復活を遂げたスープラ。対するケイマンは2代目のビッグマイナーチェンジで往年のレーシングカー「718」の名を受け継いでいる。A110に関してはいうまでもなく、かつてラリー界で活躍した名車の現代版といえる存在。名実ともに魅力的なピュアスポーツたちがここに集結。その走りの仕立て方の違いを紐解いてみよう。
スープラの復活は情熱があってこそ
スポーツカーは普通の自動車メーカーにとって割に合わないビジネスだ。メルセデスはSLCの生産をすでにストップし、アウディは次期TTの開発を凍結。BMWにしても、トヨタからスープラとの共同開発のオファーが来なければ新型Z4の発売にこぎ着けられなかった可能性が高い。
そんななかでのスープラ復活。ファンが狂喜乱舞する一方、当のトヨタは冷静だった。日本の月販予定はわずか220台。海外分を含めたってトヨタのビジネス規模からしたらたかが知れている。それでもやってきた背景にはいろいろな理由があるけれど、煎じ詰めれば「やりたかったから」であって、「儲かるから」ではない。
もちろん、トヨタのことだから損をしてもいいとはまったく思っていない。だからこそのBMWとの共同開発である。逆に言えば、トヨタがそこまでしてスープラを復活させてきたのは、彼らがスポーツカーに対してもつ並外れた情熱の証明でもあるのだ。
スポーツカーはその魅力の多くをストーリーやオリジナリティが占める。その部分でスープラにハンディキャップがあるのは否定できない。けれど、BMWとトヨタのコラボがどんな化学反応を示し、どんな価値を生みだすのか、という新たな興味を抱かせるのも事実。ということで早速味見といこう。
スープラのデザインテイストは欧州車と明らかに違う。凸や凹やスリットや線を惜しげもなく盛り込んだ造形を煩雑と評価する人もいるだろう。しかしトヨタらしさは間違いなく感じられるし、FRならではのロングノーズも高性能車らしさを強烈にアピールしている。それと比べると718ケイマンは優等生的だ。選ぶ色によってイメージはかなり変わるが、それでもスープラ並みのやんちゃさを求めるならGT4を選ぶしかないだろう。一方のA110Sはさすがに強いオーラを纏っている。とくにオリジナルのA110を知る世代にとって、往年の名車を想起させるアイコニックなデザインは大きな説得力になるはずだ。