
「ステイホーム」が叫ばれる中、家にいながら楽しめるクルマ選びがある。各ブランドのサイトに用意されている「カーコンフィギュレーター」だ。お目当てのモデルを選択し、好きなボディカラー、インテリアの素材、数あるオプションの中からセレクトし、自分好みの1台に仕立てるというもの。ここでは、ポルシェ911をピックアップし、10人のモータージャーナリストに予算は自由に好みの1台に仕立て、そのモデルに至った経緯をご執筆いただいた。カレラ/カレラS? 駆動方式は? 屋根あり/なし? 外せないオプションは?クルマ選びは十人十色。さてどんな1台に仕上がっているのか。アナタもこんな時だからこそ、お家でクルマ選びを楽しんでみませんか?
カーコンフィギュレーターはこちらから
01 Custom/今回は非現実的に妄想してみた
“911買うならピンかキリ”、つまり素のモデルかGT3 RSなどトップモデルがいいというのが持論ではある。
正直に言って、それほど速さを求めていないのでトップモデルは必要ないとは思いつつも、走らせてみるとその研ぎ澄まされたフィーリングにはぐっとくる。車両価格は高くみえるが、ライバルを蹴散らすために注がれた情熱と開発費を考えれば納得がいくものであり、他のちょっといいモデルでオプションをのせていったときに出てくるびっくりプライスと比べればコストパフォーマンスはかなり良好であろう。
一方、911は素でも十分に満足度が高く、中途半端に高価なモデルを選ぶより断然お得。コスパと満足度を考えると“ピンかキリ”というのは賢い選択のはずだと思っている。
ただ今回は金に糸目を付けず好き勝手に選んでいいとのことなので、コスパ重視の持論なんて意味がない。ここはひとつ、非現実的に妄想してみたい。じつは、お金持ちになったらポルシェのディーラーでじっくりオプションを吟味しつつ自分だけの1台をオーダーしたいっていう夢を抱いていたこともあったんだっけな。
コスパを頭から追い出して真っ先に思いつくのがカブリオレだ。いままで合計10年間ぐらいはオープンカーが手元にあったものの、生来の面倒くさがりと目立ちすぎるのが好きじゃない性格から、ルーフを開けるのはごく稀だったが、それでも「これは開けなくっちゃ」という状況に巡り合うことが年に2、3回はあって、そのときの気持ち良さは格別で、オープンを買って本当に良かったと思えた。頻度が低くても、濃厚に幸せを感じられれば買った甲斐はあるのだ。
ボディとソフトトップとのカラーコーディネイトもカブリオレの楽しみのひとつだ。色々と好みの組み合わせはあるが、臙脂(えんじ)色のソフトトップへの憧れがあるので、まずはそこを選択して似合うボディカラーを考えてクレヨンにした。ホイールカラーはブラック/グレー系よりオーソドックスなシルバーが好きなのでカレラS用のノーマル。インテリアはグラファイトブルーが入ったものを選んでいるが、これはサイト上ではあまりよくわからないので、できれば実車を多く見て検討したいところだ。
パフォーマンスに関しては992ではまだGT3等は出ていないのでカレラ系で十分。試乗経験はまだそれほど多くは積んでいないものの、いまのところAWDの印象がいい。RRもまったく悪くはないが、ハンドリングの軽快感を演出していて、ちょっとだけ自分の感覚よりも俊敏性重視方向にいきすぎている気がするのだ。感覚にしっくりくるのはAWDのカレラ4およびカレラ4S。ただしリアアクスルステアリング付きというのが条件だ。ブレーキはせっかく911に乗るのだったらスペックは高いほうがいいのでPCCBを選択。パワーステアリングは、デイリーユースを考えてプラスのほうにしておきたい。
カレラ系のカブリオレでAWDを選択するとなると現状ではカレラ4Sカブリオレとなり、前述のように好みを反映するとこの仕様になる。もっと熟考したり、現物に触れて細かく見ていけば変化する可能性はあるが、だいたいこんなもの。予算無制限だからといって無駄に贅沢したつもりもない。でもこれで2300万円オーバーはいくわけねっ!
ちなみに素のカレラなら1300万円台だからおよぼ1000万円は妄想代というか贅沢にお金がかかるわけだ。お金を使えば使うほど戻ってくると言われ、その理屈もわかってはいるつもりだけれど、なかなかそこまで踏み切れる勇気はないのだった。
■Name/石井昌道
■Age/53歳
■Model/911カレラ4Sカブリオレ
■TOTAL/23,436,114円
■Body Color/クレヨン
■Roof/レッド
■Interior/グラファイトブルー
■基本価格/20,339,815円
■オプション総額/3,096,299円
【Option List】
・エクステリアカラー(クレヨン)/452,223円
・幌(レッド)/0円
・インテリアカラー(スタンダードレザーインテリア、グラファイトブルークレヨンステッチ入り)/662,037円
・8速ポルシェ ドッペルクップルング(PDK)/0円
・リアアクスルステアリング/374,815円
・ポルシェセラミックコンポジットブレーキ/1,487,037円
・パワーステアリングプラス/43,797円
・20/21インチCarrera Sホイール/0円
・4wayスポーツシートプラス/76,390円
02 Custom/予算を意識しつつリアルなオプション選び
911のコンフィギュレーターで自分好みの1台を仕上げてくださいって、そんな楽しいことが仕事になっていいの? というわけで早速取りかかりましたよ。編集部からは予算に制約なしって聞いてるけれど、どうせならリアルな選び方をしたほうが楽しいので、予算をある程度意識しつつ、これは絶対に欲しいと思うオプションをセレクトしていきます。
まずはグレード選択から。僕は有り余るほどのパワーなるものにはそれほど興味がないのでカレラSとターボSは除外。四駆も必要ないので4Sも除外。残るはカブリオレと素のカレラですが、タルガなら迷ったけどカブリオレはちょっとお洒落すぎる。贅沢なGTカーとして乗るなら最高だけど、スポーツカーとして考えるとプリミティブさがちょっと希薄だなと。ということで1360万円の素のカレラをベースに仕上げていくことにしました。それでも可愛い価格ではないですが、モデルチェンジ毎にざっくり100万円上がるのが911のお約束。装備や性能の向上を考えれば納得しないわけにはいかないでしょう。
次はボディカラー。今風なクレヨンに惹かれつつも王道のGTシルバーメタリックを選択しました。ドロマイトシルバーよりメタリック感が強く、深みがあって、ボディの印影がクッキリでるのが特徴。21万円の価値は大いにありです。ホイールは標準の19/20にしようか迷ったのですが、乗り心地と静粛性は問題ないので奮発して20/21インチのカレラクラシックホイールに。これで「大人っぽい迫力」がグンと増します。
インテリアは出費を意識しつつもこだわった部分。スタンダードインテリアのまま色のみベージュにして(+10万円)、さらにウッド(+27万円)とアルカンターラ(+26万円)を組み合わせました。ウッドといってもゴージャス狙いではなくモダンラグジャリーなのが僕の好みにバッチリ。ナロー時代を除けば911にウッドは似合わないと思っていましたが、今度のかなり素敵です。
シートは普通のやつにシートベンチレーションのみ追加(+18万円)。ケチったわけじゃなく、むしろ積極的にこのシートを選びました。サイドサポートが高すぎないので乗り降りがしやすいし、手動前後調整も電動より素早く動かせる分、乗り降りの際便利です。それでいて座り心地は最高で、サーキットを本気で走りでもしないかぎりサポート性も十分。オススメです。そして浮いた資金をガラスサンルーフ(+37万円)に投入。なんせタルガ好きなので(笑)。
エクステリア系ではヘッドライトのみLED(+16.5万円)をチョイス。標準よりお目々がキリッとします。マトリックスヘッドライトは高すぎ(+59万円)で却下。ノーマルでも十分いい音が聴けるのでスポーツエグゾースト(+43万円)も却下。でもスポーツクロノ(+39万円)は是非装着を。ノーマル、スポーツ、スポーツプラスを使い分けることで992はGTカーとスポーツカーを行ったり来たりする。走る場所もそうですが、ゆったり走りたいとか活発に走らせたいなど、その時々のドライバーの気分に合ったドライブフィールを提供してくれるようになります。ブレーキはPCCB(+149万円)じゃなく普通のでぜんぜんOK。ホイールダストはそれなりに出ますが、一般道でのタッチはむしろ標準のほうがいいぐらい。フロントアクスルリフト(+40万円)も、日本の場合は後退駐車が多いので活躍するシーンは少ないと思います。
最後にBOSEのオーディオ(+24万円)をチョイスしてカスタマイズは完了。オプション合計価格は315万円と、まあまあいい線に収まったんじゃないかな?
■Name/岡崎五朗
■Age/53歳
■Model/911カレラ
■TOTAL/16,748,525円
■BodyColor/GTシルバーメタリック
■Roof/電動スライド/チルトガラスサンルーフ
■Interior/ブラック/モハーヴェベージュ
■基本価格/13,597,222円
■オプション総額/3,151,303円
【Option List】
・エクステリアカラー(GTシルバーメタリック)/206,759円
・インテリアカラー(スタンダードインテリアブラック/モハーヴェベージュ、パーシャルレザー シート /9,815円
・電動スライド/チルトガラスサンルーフ/374,815円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツクロノパッケージ/388,056円
・20/21インチCarrera Classicホイール/368,705円
・LEDヘッドライト(PDLS Plus含)/165,000円
・プライバシーガラス/91,667円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・エントリー&ドライブシステム/91,667円
・アンビエントライト/79,445円
・スポーツシート/0円
・シートベンチレーション/177,223円
・ストレージパッケージ/0円
・カスタムフロアマットレザー縁付き/58,056円
・アルカンターラルーフライニング/193,519円
・アルカンターラサンバイザー/69,259円
・ウッドインテリア(ダークパルダオインテリア)/267,871円
・BOSEサラウンドサウンドシステム/236,297円
03 Custom/僕を悩ませる911の論理と感情
ボルシェ911とは意味不明なブランドだと、つくづく悩むことがある。
クルマにとって最大の重量物であるエンジンを後輪に覆いかぶさるように搭載、その車輪を駆動させることを基本に技術的な構成を守り続ける。最大ウエイトの位置は徐々に重心点に寄せられていき、ついには後輪の内側に少しだけ踏み込んだけれど、つまりは絶対的にRRが完全無欠の理想ではなく、それによって得るものと失うものがあることの承知を晒したわけだがそれゆえに頑固一徹さが際立つ。
レースでは必ず勝つ。一点の妥協も許さぬマネージメントと高度な技術により、世界のサーキットを席巻する。まるで技術書を積み重ねたかのように隙がない。挑むライバルの前に仁王像のようにたちはだかり足払いをしてきたのだ。
だが一方で、言葉を選ばずに言えば、ふざけたクルマを用意するから不思議である。徹底徹尾性能を追い求めるのならば、屋根など取り払ったりしないはずだ。クルマがルーフを失えば、どれほどの悪影響を与えるかを理解していながら、ボディ剛性には欠かせないルーフを捨て去ってしまうのだからこれはもう狂気である。
つまり、911には「論理」と「感情」が共存しているのだ。「理屈」と「ハズシ」と言い換えてもいい。意味不明なブランドだと悩む理由はそこにある。だからまず、カーコンフィギュレーター遊びをするにあたって最初の1ページで最大の岐路に立たされる。しっかりとしたルーフを備えたクーペか、潔くルーフをとっ払ってしまったカブリオレか。ここで進路は決定してしまう。つまり、「理屈」と「ハズシ」。理論的に速さを追求するのか遊ぶのか。それから先のチョイスに影響する。
ご丁寧にポルシェ911には、「理屈」と「ハズシ」がきっちりと並ぶ。ベーシックなカレラにも、戦闘力を高めたカレラSにも、あるいは孤高の存在であるターボSにも、我々の悩みを弄ぶかのようにクーぺとカブリオレがラインナップしているのである。
さて、どっちの道を歩むか……。
個人的な好みが許される今回の企画で僕は、しばらく躊躇した挙句、「ハズシ」の道に進むことにした。理屈を捨て去り、ただ単純に爽快なオープンエアドライブに空想の世界に没入することにした。
3つに絞られた選択肢の中で僕の目を惹いたのはターボSである。650psというバカバカしいほどのパワーや、絶対に経験することがないであろうにもかかわらず330km/hというと途方もない最高速度に目が眩んだのだ。これみよがしに張り出したフェンダーは、理想的なはずしの世界に足を踏み入れるには適している。
ちなみに、「金に糸目をつけず……」、という編集部の好意によって、金額を確認しないで進むことにした。最後にどうなっていようと知ったことではない。
実はもう、ここまで来ればその先はテンポよくマウスを連打することができる。コンセプトがはっきりしているからだ。
ボディカラーは派手なカーマインレッド。315/30ZR21という大径タイヤがより強調されるようにホイールをチョイス。スポーツサスペンションをクリックしたのは10mm低い車高を手に入れたかったからだ。インテリアも徹底して本革のレッド。メーターリングも赤。
かくして僕が理想と掲げたポルシェ911は、理屈とは背を向ける豪華絢爛の派手な仕様になった。総額3637万5200円。オプションだけでもう一台クルマが買える。それでも予算は編集部が工面してくれる。
僕の出費は、宝くじ代金だけである。
■Name/木下隆之
■Age/60歳
■Model/911ターボSカブリオレ
■TOTAL/36,375,200円
■Body Color/カーマインレッド
■Roof/ブラック
■Interior/ボルドーレッド
【Option List】
・ボディカラー(カーマインレッド)/452,223円
・幌(ブラック)/0円
・レザーインテリア(ボルドーレッド)/0円
・シートセンター レザー、コントラストカラー/139,537円
・ミラーベース(エクステリアカラー同色塗装)/89,630円
・リアサイドエアインテークペイント仕上げ/83,519円
・PORSCHEロゴ、LEDカーテシーライト/24,445円
・エンジンコンパートメントリッド(チタングレー塗装)/70,278円
・モデル名エンブレムなし/0円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツエグゾーストシステム(シルバー)/513,334円
・パワーステアリングプラス/43,797円
・PASM付きスポーツサスペンション(10mm低く設定)/248,519円
・20/21インチ911Turbo Exclusiveデザインホイール/0円
・マトリックスヘッドライトブラック(PDLS Plus含)/102,871円
・デザインテールライト/139,537円
・レーンキープアシスト/97,778円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・ナイトアシスト/389,074円
・レーンチェンジアシスト/137,500円
・ポルシェエントリー&ドライブシステム/0円
・イオナイザー/47,871円
・スポーツシートプラス/0円
・ストレージパッケージ/0円
・ボルドーレッドシートベルト/73,334円
・スポーツクロノパッケージ ストップウォッチダイアルガーズレッド仕上げ/58,056円
・スピードメーターダイアル ガーズレッド/58,056円
・レザーインテリアパッケージ(インテリア カラー)/0円
・エアベントとスラットのレザー仕上げ/186,390円
・レザー仕上げヒューズボックスカバー/35,649円
・ポルシェクレストエンボスアームレスト/37,686円
・レザーサンバイザー/69,259円
・インナードアシルガードレザー/70,278円
・スポーツシートプラスバックレストレザー、エクステリアカラーペイントインレイ/267,871円
・レザー仕上げのキー、レザーポーチ付き/61,112円
・キルティング削除/0円
・ヒーター付きマルチファンクションステアリングホイール、マットカーボンパネル、スムーズレザー仕上げ/103,890円
・アルミニウムPDKセレクターレバー/101,852円
・アルミニウムペダル/58,056円
・ブルメスターハイエンドサラウンドサウンドシステム/530,649円
Custom 4/オプションは走り重視で選びます
そもそもタイプ992のデビューに立ち会った時点で、すっかり買う気になっていた新型ポルシェ911カレラ。実は日本での発表前から本国のコンフィギュレーターを使って、せっせと仕様決めに勤しんでいたのでした。
せっかくスポーツカーに乗るなら、気が向いた時にはサーキットを軽く走れるのがいいということで、ボディはクーペの一択。グレードは悩んだ挙げ句、カレラSにしました。先月号で書いたように、エンジンはむしろカレラが好みなのですが、PTV Plusがオプションでも選べないのが……普段乗りならなくてもいいですが、サーキット云々を考えると欲しいよなということで。
オプションも走り重視で選んでいます。装着するのは、いつの間にオプションリストに加わっているのをチェックしていた軽量カーボンルーフと、車高10mmダウンのPASM付きスポーツサスペンション。PCCBは軽さゆえの乗り心地への貢献度も考えると悩ましいですが、タッチはノーマルブレーキが好きなんです。リアホイールステアも挙動の911らしさという観点では、なくていいですね。
ボディ色は最初、自分が購入した最初の911である993に塗られていたアベンチュリングリーンが復活したので、それにしようと思っていたんですが、タイプ992の未来的あるいは硬質な雰囲気には、ちょっとイメージが違ったかな……と思い直して、GTシルバーメタリックにしました。うーん、正直に言うと標準ボディ色はあまりピンと来ないかも。カイエンにあるカシミアベージュメタリックやマホガニーメタリックなんて似合う気がするんですけどね。
スポーツデザインフロントエプロンは、開口部が少し小さく見えるのが好み。リアはシンプルなノーマルのままにして、サイドスカートだけ足しています。ホイールはノーマルですが、ブレーキキャリパーは色味を整えるためブラック塗装に。何と、これだけで13万7500円!
インテリアはコントラストを付けてブラックかな、気を使わず乗れるし……と思っていましたが、このアガヴェグリーンは、よく見たらグリーンかというぐらい落ち着いていて、でも冷たくなり過ぎないのがいいですね。ウッドやアルミの類は特には足さずに。その代わり、ちょっとだけサポート性の高まる4-wayスポーツシート、両手を離さず色々操作できるマルチファンクションGTスポーツステアリングホイールなどを追加しています。
夜間の移動も多いでしょうから、LEDマトリックスヘッドライトで視認性を確保。そして、PDKなのでアダプティブクルーズコントロールもつけています。ポルシェのレーンチェンジアシストは、要するに後側方車両接近警報。これまた13万7500円もしますが、これぐらいは標準でいいですよね。
大体こんなところですが、本当はまだハンコは押せません。買う気だったのに買っていないのは、お金の問題もありますが、ペダルオフセットの問題で911はやはり左ハンドルで、そしてできればMTで乗りたいからです。今はどっちも選べませんから……と思ったら! 先日の新型911タルガ発表から、再び日本でも左ハンドルが選べることに!(感涙)あとはMTが入ってくれればいいんだけど、期待できるのかな……?
話を戻すと、私の選んだ仕様はオプション価格だけで何と400万円以上にもなっちゃいました。うーん、やっぱりどれか削ろうかな……なんて、こういう企画がなくたって、日頃からそんな風にああでもない、こうでもないと試しては妄想しているコンフィギュレーター。まさか、それが仕事になる日が来るとはね!
■Name/島下泰久
■Age/47歳
■Model/911カレラS
■TOTAL/21,398,064円
■Body Color/GTシルバーメタリック
■Roof/カーボンルーフ
■Interior/アガヴェグリーン
■基本価格/16,968,519円
■オプション総額/4,429,545円
【Option List】
・エクステリアカラー(GTシルバーメタリック)/206,759円
・インテリアカラー(クラップレザー、アガヴェグリーン)/899,352円
・軽量カーボンルーフ/592,778円
・スポーツデザインフロントエプロン/425,742円
・スポーツデザインサイドスカート/177,223円
・エクステリアミラー(塗装済)/89,630円
・8速ポルシェ ドッペルクップルング(PDK)/0円
・ブレーキキャリパー(ブラック塗装)/137,500円
・スポーツクロノパッケージ/388,056円
・PASM付スポーツサスペンション/156,852円
・20/21インチCarrera Sホイール/0円
・カラークレストホイールセンターキャップ/27,500円
・LEDマトリックスヘッドライト(PDLS Plus含)/483,797円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・レーンチェンジアシスト/137,500円
・アンビエントライト/79,445円
・4wayスポーツシートプラス/76,390円
・シートベンチレーション(フロント)/177,223円
・マルチファンクションGTスポーツステアリング/90,649円
Custom 5/930ターボ以来の憧れのモデル
ポルシェ911というクルマは、僕にとっては昔懐かしい(けど今でもどこか引きずってる)スーパーカー・ブームの頃に930ターボに惹かれて以来の憧れ、である。にも関わらず一度もそのキーを自分のものにしたことがないのは、いうまでもなく脆弱なフトコロの問題。それでもナローの初期から最新の992まで嫌いなタイプというのがなく、50半ばになって今でも“いつかは”を夢見てるというのだから始末に負えないといえば始末に負えない。けれど、そんな夢を見続けさせてくれるというのも911らしいところだと思う。
若い頃は−−というか10年くらい前までは、戦闘的なモデルがとりわけ好きだった。でも、時代が進んで自分の好みやクルマに求めることが少しずつ変わって、ここ数年はカブリオレがいいな、と感じてる。理由は“911という文化”をできるかぎり気持ちよーく味わいたいからだ。近頃ではかなり少なくなったけど、911というクルマはドライバーのオデコに“若気の至り!”とでも書いてありそうなシャコタンにつつかれがち。意外と鬱陶しい。ところがこれまでの長年の試乗の仕事で、カブリオレに乗ってるときにはそれがないことを学んだ、というのがひとつ。最初からヤル気ナシ、と見なしてくれるからだろう。そして何より大きいのは、オープンエア・モータリングの気持ちよさ、だ。それは何にも代えがたい。
そんなところから僕が選んだのは、カレラ・カブリオレだ。“S”でも“4S”でもなく“素”を選ぶのは、385psに450Nmでさえ滅多なことじゃ使い切れないのを経験で解っちゃってるから充分だってこと。駆動は後輪だけの方が“らしい”と感じられること。それに何より小径コンプレッサーに低ブーストの方がフィーリングがシャープかな? と思えること。誰かと競ったりラップタイムを削りたいなら別のチョイスをするけど、そんな気は端からないのだ。
ボディカラーはナイト・ブルー・メタリックで、トップのカラーはブルー。車体と幌が最も共色に近いマッチングのよさを見せるし、派手さがなくて落ち着いてるのがいい。存在として華やかなクルマは色目で抑えてバランスを取る、というのが僕の基本的な好みだ。だからサイドミラーはボディと共色のものをチョイス。リアバンパーの上のロゴは“911”だけのシンプルなものにしたい。唯一、サイドスカートだけはスポーツデザインのものを選んでいるが、それは横方面から見たとき、姿が引き締まって感じられるからだ。
インテリアは贅沢だけど、トリュフ・ブラウンのクラブレザーを選びたい。深いブルーの外装に最も似合うと思うし、好きな色なのだ。だからレザーインテリアパッケージもレザーインナードアシルガードもレザーサンバイザーも、シートベルトも、同じ色で統一。幌を開けたら「おっ?」だろう。
タイヤとホイールはあえての標準、前19インチ+後20インチ。ロングを走りたいタイプなので、ここは快適性を重視。メモリーパッケージ付きの14ウェイ電動スポーツシートを選んだのも、ステアリングをヒーター付き、シートをベンチレーション付き、ミラーを自動防眩式にするのも同じ理由だ。運転支援系は基本的には不要だが、免許証を守る意味でもクルーズコントロールだけはとりあえず備えておこうかな、ぐらいな感じだ。
競うつもりはないとは申し上げたけど、走りの楽しさと気持ちよさはキッチリと満喫したい。だからスポーツエグゾーストシステム(テールパイプはシルバーね)、スポーツクロノパッケージ、パワーステアリングプラスは当然選択。
さて、できあがった僕の992カブリオレは……意外と平凡かも。でも、その分、長く乗れそう。
■Name/嶋田智之
■Age/55歳
■Model/911カレラ カブリオレ
■TOTAL/19,657,415円
■Body Color/ナイトブルーメタリック
■Roof/ブルー
■Interior/トリュフブラウン
■基本価格/15,888,889円
■オプション総額/3,768,526円
【Option List】
・エクステリアカラー(ナイトブルーメタリック)/206,759円
・幌(ブルー)/0円
・インテリアカラー(クラッブレザー、トリュフブラウン)/899,352円
・スポーツデザインサイドスカート/177,223円
・エクステリアミラー(塗装済み)/89,630円
・911ロゴ/0円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツエグゾーストシステム(シルバーテール)/433,890円
・スポーツクロノパッケージ/388,056円
・パワーステアリングプラス/43,797円
・19/20インチホイールCarreraホイール/0円
・LEDヘッドライト(PDLS Plus含)/165,000円
・自動防眩ミラー/91,667円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・14way電動スポーツシート/376,852円
・シートベンチレーション(フロント)/177,223円
・スポーツステアリングホイール(ヒーター付)/44,815円
・トリュフブラウンシートベルト/73,334円
・レザーインテリアパッケージ(インテリアカラー)/178,242円
・レザーサンバイザー/69,259円
・インナードアシルガードレザー/70,278円
Custom 6/991型でもターボの走りは憧れだ
ポルシェ911ターボは、私にとって特別なポルシェなのである。その訳を解き明かそうと思う。
初めてターボと真剣に付き合ったのは、ニュルブルクリンクで某タイヤメーカーのポルシェ承認タイヤのテストのときだった。困ったことに、4速ギアボックスの930ターボのペダル配置が悪くて、間抜けの小足の自分には、ヒール&トゥができなかった。そこで、かまぼこ板のような木材を使って、アクセルペダルに貼り付けて走ったことがあった。この930ターボが発生する低速トルクの大きさに驚くものの、ドッカンパワーの使いにくさには苦労した。
ちなみに、ポルシェは1970年代のルマン24時間レースで活躍したポルシェ917にはフラット6の12気筒が搭載されていたが、市販車の911にはリアにはフラット6の6気筒を搭載していた。しかし、特別に速い911を作るにはどうしても、ターボで武装する必要があった。過給圧1バールは2倍の排気量と同じ空気を吸うことができるので、その結果、大排気量と同じ大出力を得ることができたのだ。その意味ではポルシェにとってターボはレースで戦う偉大な武器だったのだ。
さて、エンジンのレイアウトと駆動方式を考えるとき、RR(リアエンジン・リアドライブ)というエンジンレイアウトは、戦前から使われてきている。ワーゲンビートルしかり、日本の初代軽自動車しかり、自動車の歴史を見るとRRは庶民が乗るコンパクトカーの定番だった。その理由は全長を長くしないでキャビンを広くするパッケージのためだ。近年のFFレイアウト(フロントエンジン・フロントドライブ)が実用化するまでは、RRが主流だったのだ。
そしてポルシェはワーゲンビートルから受け継がれたRRを進化させ、356を経て911というRRのスポーツカーにたどり着いた。たどり着くと書いたのは、この911こそが、究極のスポーツカー&GTカーだと筆者は信じて疑わないからだ。
しかし、911が採用するRRには決定的な制約がつきまとう。新型コロナウイルス問題で三密が「悪者」扱いされているが、自動車のパッケージでは、エンジンやギアボックスやデフはコンパクトにまとめて、駆動アクスル近くにレイアウトするのが都合がよい。いわゆる三密は「善」なのだ。
911の場合はリアアクスル上にデフが配置され、後ろに向かってギアボックスとエンジンが搭載される。非常に狭いスペースにパワートレインを密にレイアウトするので、エンジンはコンパクトに背を低く搭載したい。そのためには水平対向エンジンはスポーツカーを探求するポルシェにとって理想的なエンジンなのである。それ故に、911のエンジンは6気筒がベースとなっている。さらに出力と燃費を両立するにはターボは欠かせない技術なのだ。
ル・ボラン本誌でテストしたDSTでは、991型ポルシェターボと992型のカレラSと比較したことがあったが、モデル的には一世代古い991型のポルシェターボはやはり秀逸な走りを持っていた。997型ポルシェターボから採用したヴァリアブルジオメトリーターボを使い、低速から粘り、スロットルレスポンスは昔の930ターボのドッカンパワーは影も形も存在しない。
コロナの影響がなければ、最新の992型ポルシェターボの国際試乗会に参加する予定だったが、その願いは叶わなかった。だが、991型でも、ポルシェターボの走りは憧れだ。最新が最良と言われるが、最良の一歩手前を手にするのもいいだろう。あのニュルで味わった930ターボの走りを思い浮かべながら、技術の進化を味わいたい。
■Name/清水和夫
■Age/66歳
■Model/911ターボSカブリオレ
■TOTAL/31,800,000円
■Body Color/GTシルバーメタリック
■Roof/ブラック
■Interior/ブラック/ボルドーレッド
■基本価格 31,800,000円
■オプション総額 0円
【Option List】
・エクステリアカラー(GTシルバーメタリック)/0円
・幌(ブラック)/0円
・インテリアカラー(ツートーンレザー、ブラック/ボルドーレッド)/0円
・20/21インチ911 Turbo Exclusiveデザインホイール/0円
・電動アダプティブスポーツシート/0円
・8速ポルシェ ドッペルクップルング(PDK)/0円
Custom 7/いつかは911再びと誓っている
じつは、911を所有していたことがある。1972年式のS、いまではお宝モノのナローだ。もちろん中古だったけれど、知人を通じて信頼できる業者から購入したから内外観だけではなく機関も極上。他誌の取材中にJARI総合試験路でテストを実施した際に試しに自車も計測したところ、0→100km/h加速でRX-7(FC後期型)と同等のタイムを記録。約20年前の911が、当時の最新モデルに実力で迫ったワケ。
そんなナローを、ボクは会社設立の資本金捻出のために手放してしまった。以来、ずっと後悔し続けている。そんな気持から、いつかは911再びと誓ったもの。ナンバーなしでもいいからナローを手に入れてサーキット専用で楽しもうかな……、とかね。
GT3がラインナップに加わってからは、誓いが揺らいできた。高回転高出力型のNAエンジン、アクセルを踏み続けることで脳内麻薬物質がドバドバ状態に。低回転域のトルクが足りないからスタートに気遣いが必要だとか、試乗中は緊張しっぱなしだったし。そのころは、新車はムリでも子育てを終えれば10年落ちGT3なら手が届くかな……、と夢見ていた。
前置きが長くなってしまったけれど、近年になってまたまた誓いが揺らいでいる。ナローもいい、GT3もいい。でも、911の試乗を繰り返すうちに素のカレラがイチバンと。同時に、誓っても手に入れるのは夢のまた夢とも。
そんな思いが編集部に伝わったのか、コンフィギュレーターで自分好みの911を仕立てるというこの企画。何しろ、予算は青天井だし。そうなってくると、GT3への憧れがムクムクと。ただ、コンフィギュレーターの対象ではなかったから諦めることに。
夢はタダだけれど、ここは企画の意図に合わせてまずは素のカレラで。カレラSは最高出力で65psが上乗せされるものの、還暦を過ぎたボクにとって公道で体験するには刺激がかなり強め。そもそも、このエンジンはターボを組み合わせてもNA感覚の吹け上がり感が楽しめるので、身構えずに胸のすく高回転域を楽しむためにも素のカレラで十分でしょ。
同じ素でも、カレラ4(導入予定モデル)という選択もある。確かに、走りのバランスは電子制御マルチプレートクラッチを備える4輪駆動が有利だしリアヘビー傾向も改善される。でも、911はリアヘビーだから好きというのがボクの大前提。バランスを最優先すると、911の存在価値が失われてしまう。クセのある姿勢変化こそ、最大の価値だからね。
気になるのは、素のカレラは電子制御ダンパーのPASMつきスポーツサスペンションが用意されていないこと。911に限らずポルシェはサスペンションのコストをケチらないので、ノーマルでも不満はないハズ。スポーツサスペンションなら、車高が10mm下がるし20/21タイヤにホイールをRSスパイダーにすればエクステリアはもっとカッコよくなるけどさ。
その分、インテリアを重視。そこが大切で、エクステリアよりもインテリアの方が見ている時間が圧倒的に長い。経験的に、インテリアにこだわるほど、購入後の満足感の持続力が圧倒的に増す。ブラック/ボルドーレッドのツートーンレザーを選択し、派手だけれどスポーツカーらしい装いに。エクステリアは、ソリッドのホワイトで控えめに。911はホワイトが似合うし、所有していたナローもそうだった。
他にLEDマトリックスヘッドライトとかを加え、オプション総額は286万9173円。販売価格は1646万6395円とカレラS車両価格の1696万8519円よりも抑えられるから、値ごろ感(妄想だけど)アリなのだ。
■Name/萩原秀輝
■Age/61歳
■Model/911カレラ
■TOTAL/16,466,395円
■Body Color/ホワイト
■Roof/ノーマル
■Interior/ブラック/ボルドーレッド
■基本価格/13,597,222円
■オプション総額/2,869,173円
【Option List】
・エクステリアカラー(ホワイト)/0円
・インテリアカラー(ツートーンレザー、ブラック/ボルドーレッド)/760,834円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツテールパイプ(シルバー)/129,352円
・パワーステアリングプラス/43,797円
・19/20インチCarreraホイール/0円
・LEDマトリックスヘッドライト(PDLS Plus含)/483,797円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・エントリー&ドライブシステム/91,667円
・18way電動アダプティブスポーツシート/544,908円
・マルチファンクションGTスポーツステアリング/90,649円
・アルカンターラルーフライニング/193,519円
・アルカンターラサンバイザー/69,259円
・アルミニウムインテリア/178,242円
Custom 8/憧れの911カレラSが近づいてくる
新車でクルマを購入したのは……伊豆スカの谷底に落っことしたFD3SとNAロードスターだけ!? そんな筆者はディーラーオプションをあれこれ悩むような境遇には恵まれず、ドレスアップといえばチューニングパーツだった。だから“カーコン”をこんなに真剣になっていじる日が来るとは思わなかったのだが、これがやってみると実に楽しい!
そもそも庶民が新車の911に手を出してよいのか否かは置いといて、庶民派の筆者はベースモデルに最初カレラを選んだ。しかしここで発覚したのは、カレラだと「PASM」も、「スポーツサスペンション」も「リアアクスルステア」も選べないことだった。
少なからずショックを受けながらカレラSを選び直し、上記の装備を全て選択。2ペダル派としてはスクランブルボタンが装備される「スポーツクロノパッケージ」を問答無用で選択したが、これがまた約39万円と泣けるほど高い。メーカー公認ECUチューンだと思えば頷けなくもないが、試乗で鼻歌まじりに押していたボタンが超贅沢装備だと再認識だ。さらにパチパチサウンドを得るべく、スポーツエグゾーストを追加した。
必須の安全装備は渋滞対策として「レーンキープアシスト」を選んだ途端にACCがセットとなる。「レーンチェンジアシスト」が別売りなのに驚き、そのくらいは自分でやりますよとこれは節約。「LEDマトリックスヘッドライト」と「ナイトアシスト」を選んで老眼対策。5万8056円のリアワイパーに30分以上悩んだら、カーコンが消滅した。
憧れのレザーインパネを「レザーパッケージ付きスタンダードインテリア」で実現するコストは約42万円。4way電動スポーツシートが標準となることを考えればリーズナブルなのだが、「レザーインテリアパッケージ」(約18万円)のトリムアクセントで我慢するかをこれまた大いに悩んだ。
インテリアは完璧な贅沢品だが長く一緒に過ごすなら質感は大切。「高価=効果も高い」と思うからだ(こんなときに冗談言ってどうする!)。アルカンターラのルーフライニングも同様に、スーパースポーツ的高級感をアンダーステイトメントにアップしてくれる。黒基調の室内が冷たすぎるので差し色としては、タコメーターをホワイトダイアルにしてみた(5万8056円なり)。
911は役付きモデルに比べボディカラーが寒色系ばかりなのも寂しい。結論からいうとスペシャルカラー(約45.3万円)を選ばずに不人気色であろうレーシングイエローを選択し(0円!)、浮かせたお金(?)でカーボンルーフ(59.3万円!)を選択。「RSスパイダーデザイン」のホイールが約40万というのは、アフターパーツから考えると激安か(汗)。
さてドラムロール。こうして選び終わったオプションの総計は……ダーン! 448万2507円。おいおい、いやいや。ポルシェのオプションはいい気になっていると高くつくのはわかっていたが、実際にやってみると本当に恐ろしい。というわけで「カーボンルーフ」「リアワイパー」「アルカンターラルーフライニング」を省いてみると363万8154円。
焼け石に水である!
しかしコンフィギュレーターをやる価値は、大いにある。まず自分の欲しい911がわかるし、巷に走る新車の911が、どんなにスゴい存在なのかはもっと良くわかる。そしてボクたちは、今回学んだ知識を元に、お金持ちに感謝しながら好みの装備が施された認定中古車を探すのだ。さらに最後の一撃としてパワーローンをブチ込めば、憧れの911カレラSが近づいてくる。むむむ、やばい。これは本当にやばいことになった。
■Name/山田弘樹
■Age/48歳
■Model/911カレラS
■TOTAL/20,606,673円
■Body Color/レーシングイエロー
■Roof/ノーマル
■Interior/ブラック
■基本価格/16,968,519円
■オプション総額/3,638,154円
【Option List】
・エクステリアカラー(レーシングイエロー)/0円
・インテリアカラー(レザーインテリア、ブラック)/416,574円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・リアアクスルステアリング/374,815円
・スポーツエグゾーストシステム(シルバーテールパイプ含)/433,890円
・スポーツクロノパッケージ/388,056円
・PASM付スポーツサスペンション/156,852円
・20/21インチRS Spyder Designホイール/389,074円
・LEDマトリックスヘッドライト(PDLS Plus含)/483,797円
・レーンキープアシスト/97,778円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・ナイトアシスト/389,074円
・4wayスポーツシートプラス/76,390円
・マルチファンクションGTスポーツステアリング/90,649円
・タコメーターダイアル(ホワイト)/58,056円
Custom 9/ポルシェを買うなら911がいい
ある試乗会で、たまたま自分を含め6人の自動車ジャーナリストの仲間が丸テーブルを囲んでいた。たいそう高尚な会話が交わされていたわけではなく、ここには書けないようなどーでもいい話題ばかりだったが、いつの間にかポルシェの話になり、4人が現在もポルシェを所有、ひとりが過去に所有の経験があって、自分だけが一度もポルシェオーナーになっていないことが判明した。
正直言って、これはかなりショックだった。海に行って自分だけ水着を忘れたような、絶望的疎外感を味わった瞬間だった。“ポルシェのある生活”というものを経験値として積んでおきたいとは思っていたけれど、みんなはとっくにそれを実践していたわけだ。
もし自分がポルシェを買うなら、ケイマンやボクスターやカイエンの出来のよさには敬意を払いつつ、やっぱり911がいい。911が好きというよりも、911を知らずしてポルシェを語ることなかれみたいな自発的義務感である。だから今回の企画の前に自分仕様の911を組み立てていたのだけれど、あらためて作り直してみた。
911の本質を存分に味わえるのはカレラのクーペだと思っている。刺激的な動力性能や電制LSDの巧みな制御が味わえるカレラSも悪くないけれど、さすがに300万円以上の価格差には躊躇してしまう。
エクステリアカラーは迷うことなく“クレヨン”である。個人的に911は(いい意味で)無機質なクルマだと思っていて、そのイメージにぴったりだから。見栄えよりも乗り心地を優先したいのでホイールは最小サイズの19/20インチ。インテリアカラーとシートはブラックと標準のスポーツシートとした。エクステリアはいじるつもりがなかったのだけれど、リストを見たらリアの車名エンブレムを「911」だけにできるオプションがあって、これが“0円”だったので選んでみた。「CARRERA」を省くことで軽量化も図れる、というのはウソである。
ドライブトレイン/シャシーの項目で、現時点ではPDKが標準のトランスミッションとして設定されている。本国ではMTが追加されたが、日本で選択可能だったとしてもPDKにする。ATの制御に関して、PDKの右に出るロジックはいまのところ他にないと思っている。ポルシェのテストドライバーが「PDKのDレンジは自分よりもずっと賢い」と自画自賛していた。その通りである。“スポーツクロノパッケージ”を付けると、PDK仕様はローンチコントロールやレーシングシフトプログラムが使えるようになるので、これも外せない。
あとは、寄る年波には勝てず、最近は夜の視界に若干の不安があるので、LEDヘッドライトがあると心強い。安全装備として選んだのは“高視認性ジャケット”。事故や故障で車外へ出るときに着用する反射ベストで、ドイツでは携行が義務づけられている。特に夜間には重宝するだろうし、2000円ちょっとだったので。
最後にオプションリストをひと通り見返していたら“クレヨンシートベルト”というのを見つけた。どうやら、クレヨンのボディカラーに合わせた色になっているらしい。インテリアをブラックにしていたので、これがアクセントになるかもと思って選んだ。
「ポルシェの素の状態はなんも付いてないから、オプションを選ぶととんでもない金額になる」とよく聞く。確かにそうとも言えるけれど、不必要な装備が最初からたくさん付いている抱き合わせ販売みたいな手法よりは、ずっと健全で良心的だと思う。
■Name/渡辺慎太郎
■Age/53歳
■Model/911カレラ
■TOTAL/14,678,200円
■Body Color/クレヨン
■Roof/ノーマル
■Interior/ブラック
■基本価格/13,597,222円
■オプション総額/1,080,978円
【Option List】
・エクステリアカラー(クレヨン)/452,223円
・スタンダードインテリア(ブラック)/0円
・911ロゴ/0円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツクロノパッケージ/388,056円
・19/20インチCarreraホイール/0円
・LEDヘッドライト(PDLS/Plus含)/165,000円
・スポーツシート/0円
・クレヨンシートベルト/73,334円
・高視認性ジャケット/2,365円
Custom 10/すでにエア商談を楽しんでおりました
ポルシェに限らず、他のブランドでも最近はWebサイトに詳細なコンフィギュレーターを用意していて、折につけエア商談を楽しんでおります。
そこで常々思うのは、目指す着地点を明確に抱いていないと、福笑いのようにアガリがとっ散らかっちゃうということ。或いは取捨選択の際に欲張らないことも、モノ的にもお財布的にもすっきりした仕上がりを狙う上で大事かもしれません。その点、911はエクスクルーシブでもなければ設えはある程度定型化されているので纏めやすいモデルといえるでしょう。
僕が思い浮かべる911像は、出来るだけシンプルなオプションで主に走りを楽しむためのパッケージ、あるいは使い勝手のいいGTという個性を彩りで引き上げるパッケージです。うち、前者についてはちょうどこの4月に欧州で7速MTの選択肢が追加されたという話があったのですが、それが日本仕様ではまだ反映されていないので今回は見送りました。もし欧州仕様と同じであれば、7速MTはスポーツクロノグラフ、PTV、メカ式LSDもついてきてPDKと同額というお得な内容になるわけで、それが装着できるカレラSを選んでいたと思います。まぁ6速なら更に良しなんですが。
というわけで、今回は8速PDK前提でベースにはカレラを、そしてカブリオレを選びました。今や四駆でも操縦性に濁りはまるでうかがえませんし、RRを選ぶのは機能というよりはオッさん世代の精神性の問題です。一方でカブリオレもまた動的質感の損失は限りなく無視できるので、幌とのバイカラーが楽しめることもあり、こちらは欲求に従いました。
992は佇まいこそ911そのものですが、グラフィック的にはちょっと今日的にカッコよくなりすぎた感があるので、色は地味め古めにして均衡をとりたいと思い、クレヨンを選びました。本当は茶色の幌と合わせるなら997後期の世代にあったクリームホワイト辺りが理想的ですが、現在は通常のラインナップに設定されておらず、内装のアガヴェグリーンとの相性もみながらこの色を選んだ感じです。
ホイールはちょっと1970年代後半〜1980年代前半的な風味を狙ってオーラム、薄金を選択。サテンフィニッシュということでギラギラ感は抑えめだろうと思いつつ、もしダメなら銀に戻せばいいやということで。ちなみにタイヤサイズは本望ではないのですが、オーラムを選ぶとインチアップはもれなくセットという仕組みでした。サーキットを走る的な話ではなくホイール汚れを抑えて乗り心地にもプラスになるようにPCCBは選びましたが、キャリパー色は出来れば普通の黒か深銀にしたいですね。
内装にアガヴェグリーンを選んだのは、今回是非載せたかったオプションとの相性を考えてのことです。それはダークバルダオ・インテリア、つまりウッドトリムのパッケージです。
996〜991の世代までの911の内装といえば、形状は曲面が多く、センターコンソールも垂直側の存在感が強かったこともあり……と、ウッドバネルが活きる造作とは言い難いものでした。が、空冷世代のデザインイメージが色濃く反映された992の内装は水平基調でウッドの取り回しもすっきり。バルダオは杢目に強い主張はありませんがサテンフィニッシュの落ち着いた収まりで、液晶パネルばかりの内装にクラシカルな印象を加えてくれます。この杢目、カブリオレではシートバックにもデコレーション出来るようですが、さすがにそれはやりすぎと思って選択しませんでした。同様に、ステアリングとダッシュボードはすっきりさせたかったのでスポーツクロノはパスしています。
■Model/911カレラ カブリオレ
■Name/渡辺敏史
■Age/53歳
■TOTAL/20,801,211円
■Body Color/クレヨン
■Roof/ブラウン
■Interior/アガヴェグリーン
■基本価格/15,888,889円
■オプション総額/4,912,322円
【Option List】
・エクステリアカラー(クレヨン)/452,223円
・幌(ブラウン)/0円
・インテリアカラー(クラッブレザー、アガヴェグリーン)/899,352円
・911ロゴ/0円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツエグゾーストシステム/433,890円
・ポルシェセラミックコンポジットブレーキ/1,487,037円
・20/21インチCarrera/Sホイール/269,908円
・ホイールオーラム塗装仕上げ(サテン)/198,612円
・18way電動アダプティブスポーツシート/544,908円
・ストレージパッケージ/0円
・ペイントキー、レザーキーポーチ/48,890円
・トリュフブラウンシートベルト/73,334円
・ウッドインテリア(ダークパルダオ)/267,871円
・BOSEサラウンドサウンドシステム/236,297円