キャデラック

「キャデラック XT4」ジャーマンスリーをロックオン! プレミアムコンパクトSUVの大本命!【試乗記】

キャデラック初のコンパクトSUV「XT4」が満を持して日本に上陸した。軽量化を実現する新アーキテクチャの採用に加え、洗練されたパワートレインによる快適な走り、扱いやすいボディサイズとクラス最大級の室内スペース、先進の安全運転支援システム等を備え、スタイルもコスパも最強のモデルに仕上がっている。

キャデラック久々のブランニューモデル

いまこうしてキャデラックの新しいSUVであるXT4の原稿を書いているけれど、世界中がのっぴきならない状況に陥っている最中にのこのことアメリカに行って試乗してきたわけではない。このクルマがデビューをしたのはまだ普通のアメリカがそこにあった2018年で、その年の9月にシアトルで開催された試乗会に招かれた。その後、キャデラックにも世の中にもいろんなことがあってようやく日本導入の運びとなり、XT4について書き記す機会がついにやってきたというわけである。

XT4はその価格やサイズから、若年層をターゲットとしているため、デザイナーも若手を中心に集めてスタイリングを完成させたという。

2年以上も前に乗ったクルマのことなんて覚えているのか? と思われるかもしれない。自分もちょっと心配ではあったものの、意外と鮮明に記憶に残っている。こういう場合はたいていすごくいいクルマか、感触のよろしくないクルマのどちらかだが、XT4はもちろん前者である。
キャデラックのSUVはこれまで大きい順にエスカレード、XT6、XT5という3タイプの布陣を敷いていた。ボディスペックでそれぞれのポジションを見てみると、全長はエスカレードの5382mmを筆頭に、XT6の5060mm、XT5の4825mmと続き、全幅は2059mm、1960mm、1915mmとなる(いずれも北米仕様)。XT4はその車名からも想像できるように、XT5の下に控えるコンパクトSUVである。

日本仕様の3つのグレードは装備の違いだが大差はない。BOSEのオーディオシステムは全車に標準装備となる。スポーツのみ、電子制御式ダンパーを備える。

XT4のサイズ(日本仕様)は全長4605mm、全幅1875mm、全高1625mm、ホイールベース2775mm。XT5とXT6は同じアーキテクチャを使うのでホイールベースは同値だが、XT4はそれよりも約80mm短い。当初はXT5/XT6のホイールベースを詰めたのだろうと思っていたが、キャデラックはXT4のためにまったく新しいアーキテクチャを用意した。一般的に、新しいプラットフォームを作るには億単位のコストがかかるとされているから、キャデラックのXT4に対する並々ならぬ気概が感じられる。実際、大型車のプラットフォームを小型車に流用すると必要以上に重量が重くなる場合もあるので、燃費や機動性を考慮すれば賢明な判断だったとも言える。

日本仕様のエンジンは2Lの直列4気筒ターボのみで9速ATと組み合わされる。駆動形式もAWDのみとなる。

キャデラックがXT4の仮想敵として捉えているのは、BMWのX3、メルセデスのGLC、ボルボのXC60など。この3台とボディサイズを比較すると、全長/全幅/全高のすべてにおいて、XT4が最小となる。ただし、後席のレッグルームは(ホイールベースも最小であるにもかかわらず)最大を誇り、パッケージが熟考された痕跡がうかがえる。ついでに価格も比較してみたら驚いた。XT4は570万円のプレミアム、640万円のスポーツ、670万円のプラチナムの3グレードだが、X3の廉価モデルは675万円、GLCは708万円、XC60は639万円で、XT4が価格面で圧倒的優位性を持っていることがわかったからだ。そもそも最近のドイツ車がいつの間にかずいぶんとご立派な価格になっちゃってることが由々しき事態だとも思うけれど、XT4のプライスタグはとても良心的でもある。

ダッシュボードは左右方向に伸びやかな立体的造形が特徴。計算されたスイッチ類のレイアウトのおかげで使い勝手は悪くない。

コンパクトなボディと上質な走りを実現

日本仕様のパワートレインはガソリンの2L直列4気筒ターボと9速ATと4WDの組み合わせのみとなる。230ps/350Nmを発生するこのエンジンは新開発で、4気筒ながら条件が揃えば気筒休止もする機構を備えている。ターボはツインスクロール式。4気筒を2気筒ずつにまとめた計2本のマニフォールドを、ふたつの流路を持つタービンハウジングに繋ぎ、排ガスの干渉を最小限にとどめつつターボラグの少ないスムーズなエンジン回転と効率的な過給を行う。4WDは“ツインクラッチAWDシステム”と呼ばれるもの。ひとつめのクラッチは前輪と後輪の間に、もうひとつは後輪左右の間に設けられている。要するに、前後のトルク配分は100:0から50:50までの可変式、後輪はいわゆるeデフの役割を果たす仕組みである。

ドライブモードはツアラー(標準)/フルタイム4WD/スポーツから選べる。

ライバルが軒並み1.8トン台の重量の中にあって、XT4は1.7トン台に収まっていることもあり、このエンジンは実に軽々と車体を運んでくれる。NVも見事に抑えられていて、気になる振動や騒音は皆無。それどころか5000rpm辺りまで息継ぎすることなく吹け上がる様がなんとも気持ちいい。前後と後輪左右のトルク配分はタイミングといい配分率といい申し分ない。エンジンから伝達される駆動力を余すことなく路面に伝えることで、力強いけれどジェントルに加速する。

駆動力配分は当然のことながらハンドリングにもいい影響をもたらしている。特に、ターンインの後にわずかにスロットルペダルを踏んでリアにトラクションをかけると、後方から向きを変えてくるような回頭性が印象的だ。ステアリング操作に対するクルマの動きはレスポンスがいいものの、アグレッシブ過ぎず、XT4のキャラクターに合ったちょうどいい塩梅で味付けされている。ステアリングをゆったり切っても素早く切り返しても、応答遅れもなくあくまでもドライバーの入力に対して従順であった。こういうクルマは長時間の運転でも疲労が少なく、試乗会にしてはかなりの距離を走行したものの、ディナーの前に散歩に行こうと思うくらいの体力がまだ残っていた。

インテリアは奇をてらったものではなく、大人がリラックスできるムードの漂う上質な空間に仕立てられている。本革やトリムの質感は総じて高く、遮音/吸音も上手に施されていた。こんなしつらえに直面すると、キャデラックがまごうかたなき高級車ブランドであるということを、あらためて認識させられる。上等な雰囲気作りというのは、一朝一夕にはできないものなのだ。もちろん、各種スイッチ類の機能性や空間の使い方にも気になるところはほとんどなかった。

本革シートは全車に標準装備。大人4人がゆったり座れるスペースが確保されている。ラゲッジスペースの容量は最大1384L。

いまだに巷では、アメ車は「デカい」「(値段が)高い」「安っぽい」「燃費が悪い」などという昭和のイメージが蔓延しているようだけれど、令和になってもそれを信じているようでは時代に取り残されてしまうだろう。高級車というとドイツの御三家のほうばかりを向いてしまいがちだが、いまのキャデラックは本当にあなどれない。その象徴的存在がXT4だと思う。

ボディがしっかりしているので、コンベンショナルなサスペンションでも乗り心地は良好。直進安定性もよく、グランドツアラーとしての性格も持ち合わせている。

【Specification】キャデラック XT4 プラチナム[スポーツ]〔プレミアム〕
■車両本体価格(税込)=6,700,000円[6,400,000円]〔5,700,000円〕
■全長×全幅×全高=4605×1875×1625mm
■ホイールベース=2775mm
■トレッド=(前後)1600mm
■車両重量=1780kg[1760kg]〔1760kg〕
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=LSY/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行径=83.0×92.3mm
■総排気量=1997cc
■最高出力=230ps(169kW)/5000rpm
■最大トルク=350Nm(35.6kg-m)/1500-4000rpm
■燃料タンク容量=61L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=9速AT
■サスペンション形式=(前)マクファーソンストラット/コイル、(後)マルチリンク/コイル
■ブレーキ=(前後)ディスク
■タイヤ(ホイール)=(前後)245/45R20[245/45R20]〔235/55R18〕
お問い合わせ
GM ジャパン 0120-711-276

公式HP https://www.cadillacjapan.com/xt4/model-overview.html

フォト=GMジャパン/GM Japan ルボラン2021年3月号より転載

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