魅惑の自動車カタログ

頼もしきワンボックス、一方の雄!「初代キャラバン救急車」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第34回

2Lエンジン搭載の強力救急車!

当連載の第15回では初代ハイエースの救急車を採り上げたが、今回はそのライバル、初代・日産キャラバンの救急車をご覧いただこう。日産のワンボックスとして、長い歴史と根強い人気を誇るキャラバンがデビューしたのは、1973年2月のことである。

【画像17枚】救急車専用の装備など、キャラバンの詳細をじっくりと見る!

キャラバンには直接の前身となる車種は特に存在しないが、しいて言えばキャブオールやキャブスターのバンがそれにあたるということになる。ハイエースや、あるいは三菱デリカやマツダ・ボンゴといった既存車種と異なるのは、キャラバンはトラック仕様をラインナップしておらず、完全にワンボックス専用ボディだったことだ。スタイル上の特徴としては、ボディの前後左右にモールを一周させサイドドアのレールを目立たなくしている点、フロントバンパーをU字を描く埋め込み型としている点などが挙げられる。

ボディは標準とロングの2種類があり、それぞれにライトバンと乗用モデル(マイクロバス系)を設定。バンには標準とロングにそれぞれ普通のライトバンとルートバンを用意、いずれも3人乗りだが、ロングのライトバンのみには2列シートの6人乗りがあった。マイクロバス系には3列シートの9人乗りと4列シートの10人乗りがあり、これらはコーチと呼ばれる。ロングボディの乗用仕様は15人乗りマイクロバスの1種。エンジンは直列4気筒OHVのJ型(1.5Lと1.6L)をフロントシート下に搭載、後輪を駆動する。

デビュー後の変遷を分かる範囲で、かつ簡単に辿ると、まず同年6月にはキャンピングカー仕様を発売。これはFRP製のハイルーフや、サイドテント、炊事設備などを装着したものである。1975年12月には1.6Lを廃止して2LのH20(直4 OHV)搭載車を追加。1976年には兄弟車のホーミーを日産プリンス系ディーラー向けに登場させている。

1978年4月にはマイナーチェンジを行い、フロントグリルのデザインを変更。これは、ヘッドライトのフチが四角くなったことで識別しやすい。また、このときディーゼル車やハイルーフバンの追加も行なわれた。1978年10月には5ドア車をバン系に新設、これは車体右側にもスライドドアを設けたものだ。1979年1月にはコーチの搭載エンジンをZ20に変更、同年11月にはJ15を廃止しJ16が復活。そして1980年8月にフルモデルチェンジを行い、二代目へと移行した。

表紙からすでに説明文が始まっている味気なさだが、上部には夕景の写真が配されて、ちょっとした彩りとなっている。救急車仕様はホイールベース2730mmのロング車(標準は2350mm)がベースである。

表紙ですでに説明の文章が始まっているカタログ
さて、ここでご覧いただいているのは、この初代キャラバンをベースとした救急車のカタログである。サイズは298×209mm(縦×横)、ページ数は表紙を合わせて全8ページ。発行年月については記載がないのだが、「50年排ガス規制適合」の記述がある。上の解説では排ガス規制適合については省いたが、商用モデルの50年規制適合車発売は1975年12月のこと(H20搭載車追加と同時)であるため、1975年末~1976年のものと思われる。

カタログの作りとしては一般的な商用車以上に説明中心のもので(当然そうであるべきものだろう)、表紙の段階からすでに解説が入っているという素っ気なさだ。とはいえ、三つ折りのリーフレットなどではなくきちんとホチキスで中綴じされたカタログではある。内容もしっかりと構成されており、キャラバン救急車の特徴/特長が過不足なく、分かりやすく説明されている。

救急車仕様がキャラバンのデビューと同時に発売されていたのか、そこまでを明らかにする資料はさすがに手元にないので、何とも言えない。表紙に記載された見出しや文章からは、H20搭載を機に救急車仕様が登場したという風にも読めるが、そうであるとも言い切りにくい。

それはさておき、ワンボックス型が一般的になってきた時期の救急車について考えると、初代ハイエースと並んで真っ先にその姿が思い浮かぶのは、やはり初代キャラバンだ。皆さんの中にも、子供の頃にトミカのキャラバン救急車で遊んだ、グンゼのキャラバンのプラモを救急車に改造した、あるいは実際にキャラバン救急車に乗った等々、思い出がある方も少なくないだろう。懐かしい気持ちで画像をご覧いただければ幸いだ。

カタログ協力:宇佐美健太郎

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