コラム

なぜいまキャデラックが日本でEV重視戦略を進めるのか? その背景にグローバルEV市場の変化あり!

日本国内ではプレミアムEVの市場は着実に拡大している

キャデラックのEV戦略が今、実に興味深い。5月から国内デリバリーを始める、右ハンドル仕様の新型EV「LYRIQ(リリック)」の発表会は、詰めかけた報道陣の予想を越える充実した内容だった。リリックは2022年からアメリカで発売されており、今回は日本を含む右ハンドル規定国への対応をした意義は確かに大きい。
だが、話はそれだけではない。来年には、3列シートの「VISTIQ(ビスティック)」、エントリーモデルの「OPTIQ(オプティック)」、そしてキャデラックのハイパフォーマンスブランドであるVシリーズの流れを汲む「リリックV」と、最新EVモデルを次々日本市場に投入するというのだ。

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アメリカ本国では、これらモデルの他、大型5ドアの「CELESTIQ(セレスティック)」や、「ESCALADE(エスカレード)IQ」、「同IQL」が発売されているが、キャデラックEVのグローバル転換を考えると、今回明らかになった右ハンドル仕様4モデルはGMの日本市場に対する本気度を示すものだ。では、なぜキャデラックはこのタイミングで日本市場へのEVシフトにGOをかけたのか? 背景にあるのは、グローバルEV市場全体の変化である。
まずは、周知の通り、政策主導型のEVシフトが「踊り場」を迎えている。欧州連合(EU)による欧州グリーンディール政策では、EV普及の達成年を規定する試みに対して、メーカーはなんとか対応しようとしてきたが、市場全体としては大きく動いておらず、政策パッケージとして宙ぶらりんの状態が続いている。

また、アメリカでは第二次トランプ政権発足により、バイデン政権が掲げたEVシフト政策を今後どう見直すのか、先行きは不透明な情勢だ。政権交代の前2020年代に入ってから欧中に対抗してGMとフォードは大衆型の大型SUVやピックアップトラックでEV化を進めたものの、米EV市場はあまり広がっていない。そして、中国ではBYDを筆頭とした地場メーカーの小型・中型EVの価格競争力が、日米欧メーカーを圧倒している状況だ。

こうした中で、ラグジュアリーEV、またはプレミアムEVと呼ばれる高付加価値型のEV市場は着実に拡大しており、その実例が今回日本導入となった「リリック」なのだ。GMによれば、リリックは2024年にアメリカで最も売れたラグジュアリーEVである。

日本のEV普及率は現在、乗用車で2%に満たない。その中身は、日本車では軽EV「サクラ」が市場を引っ張り、そこに欧米韓中の様々なEVが競い合っている状況だ。キャデラックとしては、日本市場だけに特化するのではなく、右ハンドル仕様国全体を視野に、ラグジュアリーEV市場のリーダーシップを取りにいこうとしている。今後のキャデラックの動きに要注目だ。

桃田健史

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専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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