
キャデラックが描く究極のクロスオーバーEV
ゼネラルモーターズの高級車ブランド、キャデラックは2025年8月14日、米国カリフォルニア州モントレーにおいて、完全電動のハイパフォーマンス・クロスオーバー・コンセプト「Elevated Velocity(エレヴェイティド・ヴェロシティ)」を発表した。これは、キャデラックのハイパフォーマンスモデル「Vシリーズ」の本質を未来へと進化させたものであり、オンロードでの卓越した走行性能と、オフグリッドでの冒険を両立する大胆な2+2クロスオーバーとして設計されている。その名は、乗員に高揚感をもたらす至福の体験を意味する「Elevated」と、リフトアップされたプラットフォームが実現する過酷な地形での圧倒的な走破性を示す「Velocity」という、二つの価値の融合を表現している。
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未来を映すエクステリア―空力を追求したボディにガルウイングドアを装備
キャデラック・エレヴェイティド・ヴェロシティのエクステリアデザインは、流麗なフォルムによって空力効率を最適化しつつ、ドラマチックなプロポーションと堂々としたスタンスで圧倒的な存在感を放つ。「セレスティック」や「リリック」で確立された、伸びやかなフードといったキャデラックならではのエレガントなプロポーションを継承しながら、ブランドのデザイン言語をさらに進化させているのが特徴だ。彫刻的かつ技術的なバランスを追求したこのデザインは、将来の市販モデルにインスピレーションを与える可能性を秘めている。エクステリアカラーには、氷河から着想を得たフリントグレーを基調とした「ヴェイパーブルー」を採用。これが燃えるようなレッドのインテリアと鮮やかなコントラストを生み出し、究極のパフォーマンスを視覚的に際立たせている。
乗員を迎え入れるのは、スムーズな乗降性を実現するドラマチックなガルウイングドアだ。足元には24インチの大型ホイールが装備され、リフトアップされた車高とともに、あらゆる地形を走破する能力を物語る。また、リフトアップした車高を強調するため、キャデラックの象徴的なライトデザインも再構築された。フロントには優雅にフルーティングされた半透明のヘッドライトが、リアには独自のライトトンネルを備えたバーティカル・テールランプが採用され、未来的な印象を強めている。
「砂漠のポロ」に着想を得た、情熱的でラグジュアリーな空間
インテリアは、砂漠で行われるポロ競技からインスピレーションを得ており、スピード、技術、そして優雅さが交差する、洗練されたスリリングな体験を表現している。キャビンは深みのあるレッドの色合いとブラッシュドメタルのアクセントで装飾され、エネルギーと躍動感に満ちた空間が広がる。ヘッドライナーやシートクッションなどには、滑らかなファインナッパグレインを施した深紅のレザー「モレロレッド」が用いられている。ドアからインストルメントパネルにかけては、洗練されたレッドファブリック「セリーズ」がリング状に広がり、車内全体を包み込む。シートのアッパー部やアームレストには、レッドカラーのブークレ生地「ガーネット」が採用されるなど、多層的な素材使いが特徴的である。
このコンセプトカーが提案するライフスタイルを象徴するのが、リアに装備された特注のポロ用具セットだ。ハンドメイドのポロセットは、コンセプトカーの美学を踏襲し、ケースは外装色と同じヴェイパーブルー、ヘルメットやマレットなどは内装に合わせたモレロレッドで仕上げられている。
自律走行から過酷な地形まで。多彩なモードが体験を拡張する
エレヴェイティド・ヴェロシティは、最先端のテクノロジーとデザインが巧みに融合されており、多彩なユーザーエクスペリエンスモードがそれを象徴している。ドライバーが車両に近づくと「ウェルカムモード」が起動し、車内がやわらかなホワイトに点灯するとともに、ガルウイングドアが劇的に開いて乗員を招き入れる。ドライバーによって「エレヴェイティドモード」が設定されると、車両は自律走行へ移行し、車内は心身の回復を促すリカバリースペースへと変貌する。このモードではステアリングホイールとペダルが格納され、インテリアの照明はレッドに切り替わり、シートバックに採用された赤外線ライトが乗員のベストパフォーマンスを引き出す手助けをする。一方、「ヴェロシティモード」はドライバーが運転に集中するためのモードである。インテリア照明がクールなホワイトトーンに変わり、展開されたステアリングホイールには速度やバッテリー残量などの情報が表示され、カウルディスプレイには拡張現実ヘッドアップディスプレイ(ARHUD)によるナビゲーションが投影される。
走行性能においても、オンロードとオフロードで最高のパフォーマンスを発揮するための選択式ドライブモードが搭載されている。オンロードでの激しい走行に最適化された「e-ヴェロシティモード」は、現行VシリーズのVモードを進化させたものだ。オフロードでは、エアサスペンションが車高を上げる「テラモード」が最高のパフォーマンスを約束する。さらに、砂嵐の中でも視界を確保する「サンドビジョン」や、車体を振動させて付着した砂塵などを除去する「エレメンツディファイ」といった、過酷な環境に対応するためのユニークな機能も備えている。
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GMのグローバルデザイン担当バイスプレジデント、ブライアン・ネスビット氏は、「エレヴェイティド・ヴェロシティは、キャデラックのラグジュアリー、テクノロジー、そしてパフォーマンスを、ますます人気が高まっているパフォーマンス・ラグジュアリークロスオーバーのフォルムに芸術的に統合しています」と語る。現時点において、このモデルの市販化は未定である。
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