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【全車6速MT】新型フィアット「500ハイブリッド」欧州発表。車重1055kg、あえて選ぶ「操る楽しさ」

欧州デビューした500ハイブリッドのラインナップとスペック

ステランティスは2025年11月21日、イタリア・トリノにおいて新型「フィアット500ハイブリッド」を正式に発表した。これまで第4世代となる現行型「500」はBEV(電気自動車)専用モデルとして展開されてきたが、ついに内燃機関とハイブリッドシステムを搭載したモデルがラインナップに加わったのである。特筆すべきは、発表された全グレードにおいてトランスミッションが「6速マニュアル」とされている点だ。

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聖地ミラフィオーリでの生産とブランドの原点回帰

新型フィアット500ハイブリッドの登場は、単なるパワートレインの追加にとどまらない重要な意味を持っている。それは、このモデルがフィアットの「ホーム」であるトリノのミラフィオーリ工場で生産されるということだ。1957年に2代目500(ヌォーヴァ・チンクエチェント)が誕生したこの場所で、最新のハイブリッドモデルが生産されることは、ブランドの情熱、遺産、そして革新が融合することを象徴している。

生産はすでに2025年11月中旬から開始されており、年内に5,000台以上の生産を目指しているという。また、フル稼働時にはミラフィオーリ工場の年間生産能力を約10万台押し上げることが期待されており、フィアットの産業フットプリントにおける戦略的な役割を果たすことになる。

全車「6MT」という衝撃的なスペック

日本の自動車ファン、特にイタリア車ファンが最も注目するのは、そのパワートレインの仕様であることは間違いない。公開された欧州仕様のスペックシートによれば、搭載されるエンジンは全グレード共通で、排気量999ccのガソリンエンジンに12Vのマイルドハイブリッドシステム(BSG)が組み合わされる。

エンジンの最高出力は47.8kW(65ps)、最大トルクは92Nmを発生する。この数値自体は都市移動に適した慎重なものだが、特筆すべきはトランスミッションの組み合わせである。すなわちエントリーグレードから最上級グレード、そして特別仕様車に至るまで、ギアボックスの項目には「6速MT」(C514 MT – 6 speed)と記されているのだ。BEV版の500eが2ペダルのみであったのに対し、このハイブリッド版は3ペダルのマニュアルトランスミッションを駆使して、リッターエンジンのパワーを余すところなく引き出すドライビングが可能となるのである。

パフォーマンスデータとしては、0-100km/h加速はハッチバックモデルで16.2秒、カブリオレの一部グレードで17.3秒と公表されている。最高速度はグレードにより異なり、150km/hから155km/hの範囲。燃費性能においては、複合モードでの燃料消費率が5.2〜5.4L/100km(18.5~19.2km/L)、CO2排出量は117~123g/km(WLTP値と推測されるが資料では単位のみ記載)と、環境性能にも配慮された数値が並ぶ。

軽量なボディとパッケージング

500ハイブリッドのボディサイズは全長3631mm×全幅1684mm×全高1532mm、ホイールベース2322mmと、都市部での取り回しに優れたコンパクトなサイズを維持している。特筆すべきは車両重量の軽さであり、ハッチバックの最も軽量なモデル(POPトリム)では、乾燥重量が1055kgに抑えられている。最も重い「LA PRIMA」のカブリオレモデルでも1102kgであり、1トン強の軽量なボディをマニュアルトランスミッションで操る軽快な走りが想像できる。

ボディタイプは「ハッチバック」、「カブリオ」、そして助手席側に観音開きのドアを追加した「3+1(スリー・プラス・ワン)」の3種類が設定される。ラゲッジスペースについては、通常時で183L、リアシートを倒した状態では440Lまで拡大可能であり、日常の買い物や少旅行には十分な実用性を確保している。

サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームという、このクラスの定石とも言える堅実な構成。タイヤサイズはグレードによって異なり、15インチ(185/65R15)、16インチ(195/55R16)、そして17インチ(205/45R17)が設定されている。

多彩なグレード構成と特別仕様車「TORINO

グレード展開は、シンプルさを追求した「POP」、テクノロジーと快適性を高めた「ICON」、そして最上級の「LA PRIMA」の3つのトリムで構成される。

「POP」トリムは、500ハイブリッドのシンプルさを最も純粋に表現したモデルと位置づけられている。実用性を重視しつつも個性を妥協したくないユーザーに向けた、本質的かつスタイリッシュな選択肢である。

中間に位置する「ICON」は、テクノロジーと快適性、そして都会的な魅力を融合させたグレードだ。フィアットにおいて最も汎用性が高くファッショナブルなハイブリッドシティカーとされ、クールでコネクテッドな500の精神を体現している。

最上級の「LA PRIMA」は、エレガンスと独占性の究極の表現とされる。500の魅力に最も高級な機能とプレミアムな仕上げを組み合わせたフラッグシップモデルである。

さらに、今回の発売を記念して、フィアットの故郷であるトリノ市への敬意を表したローンチシリーズ「TORINO(トリノ)」も設定された。この特別なモデルは、上述の3つのグレードを補完する形でラインナップされ、ブランドとホームタウンとの絆を強調する存在となっている。

【ル・ボラン編集部より】

BEV専用として生まれた現行フィアット500に、内燃機関が「帰還」した。聖地ミラフィオーリでの生産、そして全車6速MTという仕様は、電動化一辺倒の潮流に対する、イタリア流の粋な回答にも映る。65psという数値は現代の基準では控えめだが、1トン強の軽量ボディを自らの手で操る所作にこそ、スペックには表れない「真価」が宿るはずだ。先進のシャシーとアナログな変速機の融合。この「遅いが、濃密」な対話を楽しめる大人にこそ、相応しい一台である。日本市場への上陸にも期待したい。

【画像68枚】シンプル派の「POP」から最上級「LA PRIMA」まで。特別仕様車「TORINO」も加わった全ラインナップの細部をチェック

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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