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【試乗】全高1545mmの必然と「鼻先がスッと入る」快感。ホンダ「ヴェゼル e:HEV RS」の真価

ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS(左)とe:HEV Z(右)
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS
ホンダ・ヴェゼル e:HEV Z
ホンダ・ヴェゼル e:HEV Z
ホンダ・ヴェゼル e:HEV Z
ホンダ・ヴェゼル e:HEV Z
ホンダ・ヴェゼル e:HEV Z
ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS

ホンダ・ヴェゼルe:HEV RSが突き詰めた「都市型スポーツ」

2013年のデビュー以来、コンパクトSUVのベンチマークとして君臨し続けるホンダ「ヴェゼル」。その現行型に2025年10月から追加されたのが、今回試乗した「e:HEV RS」だ。「アーバンスポーツヴェゼル」をコンセプトに掲げ、都市部での扱いやすさと、ドライバーの感性に響く走りを追求したこのモデル。発売直後から年間計画の倍以上の受注を集めるなど、市場の反応は上々だという。

【画像27枚】どこが変わった? 専用バンパーから足回りまで、「ヴェゼル e:HEV RS」のディテールを徹底チェック

全高「1545mm」が切り拓く都市型SUVの新たな自由

新型ヴェゼル e:HEV RSを前にして、まず強い印象を与えるのが、その車高だ。従来のZグレードが全高1590mmであるのに対し、RSは1545mm。RS専用ローダウンサスペンションのスプリングにより-15mm、さらにシャークフィンアンテナを廃してガラスプリントアンテナを採用したことで-30mm、合計-45mmも低めることに成功している。

これは単なるスタイリングのためのローダウンではない。都市部のマンションなどに多い機械式立体駐車場の高さ制限「1550mm」をクリアするための意図的な数値設定であり、都市生活者にとっての切実なハードルをクリアした意義は大きい。

ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS

エクステリアデザインについても、開発担当者が「モアプレミアム、モアスポーティ」と語るように、黒を基調とした引き締め効果が狙われている。物理的なローダウンに加え、ブラックアウトされた前後バンパーやサイドガーニッシュが、視覚的に「ロー・アンド・ワイド」を強調している。そして現行ヴェゼルの特徴的なフロントグリルを、あえてブラック化することで精悍な表情となっている。

開発陣が追求した「鼻先がすっと入る」リニアリティ

走り出してすぐに、標準車との違いは明確に伝わってきた。パワートレイン自体はe:HEVのままで変更はないが、ステアリングフィールが劇的に変化している。ステアリングを切り込んだ瞬間、ノーズがスッとインを向く。この回頭性の良さは、単にクイックなだけではない。ドライバーがイメージした通りのラインを、クルマが遅れることなく、かつ過敏すぎずにトレースしてくれる感覚だ。

開発陣はこれを「リニアリティ」と表現し、徹底的なチューニングを施したという。重心の低さと相まって、コーナーの一つひとつをクリアしていくのが純粋に楽しい。SUV特有の腰高感やロールの不安感は見事に払拭されており、まるでクーペを運転しているかのような一体感がある。

ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS

特筆すべきは、乗り心地の良さだ。ホンダの伝統的な「タイプR」のようなサーキット志向の硬い足とは違い、このヴェゼル RSは高速道路の継ぎ目を越える際も、サスペンションはしなやかに動き、衝撃をトン、と軽やかに収束させる。不快な突き上げはなく、むしろフラットライド感が際立つ。

開発担当者が語った「RSはロードセーリング。ワインディングや高速道路を気持ちよく走るためのクルマ」という言葉通り、日常のドライブを犠牲にしない、大人のためのスポーティさがそこにはあった。

ドライバーを高揚させる空間と、現代的な「おもてなし」

インテリアも、ドライバーの気分を盛り上げる演出に抜かりはない。黒を基調とした空間に、赤のステッチやガーニッシュが映える。特に好印象だったのが、RS専用のコンビシートだ。スエード調の表皮が採用されており、コーナリング時に身体が滑るのを防ぎ、しっかりとホールドしてくれる。単なる装飾ではなく、機能部品として走りの質を支えているのだ。

ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS

一方で、RSは実用性を犠牲にしたマニア向けのモデルではない。現代のユーザーニーズもしっかり汲み取っており、装備面での満足度も高い。RSには、Zグレードではオプション扱いとなるナビゲーションやETC、そしてワイヤレス充電器が標準装備されている。走りの楽しさを追求しつつも、現代のデジタルライフスタイルに必須なユーティリティを標準で備えている点は、日常のパートナーとして非常にポイントが高い。

日常をドラマチックに変える、懐の深いスポーツSUV

試乗を終えて感じたのは、ヴェゼル e:HEV RSが「マニアだけのためのクルマ」ではないということだ。確かにハンドリングはスポーティで刺激的だが、それは決してドライバーに緊張を強いるものではない。むしろ、意のままに動く素直な挙動は、運転に不慣れな人にとっても安心感につながるはずだ。

ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS

立駐をクリアするサイズ、充実した快適装備、そして何より、毎日の通勤や週末のドライブを「心踊る時間」に変えてくれる走行性能。価格(税込)は374万8800円(FF)からだが、装備内容と走りの質を考えれば、その価値は十分にある。「家族のためにSUVが必要だが、走りの楽しさは諦めたくない」。そんな多くのドライバーにとって、このヴェゼル e:HEV RSは、最適解の一つとなるだろう。

【SPECIFICATION】HONDA VEZEL e:HEV RS(4WD)
 ホンダ・ヴェゼル e:HEV RS(4WD)

■車両本体価格(税込)=3,968,800円
■全長×全幅×全高=4385×1790×1545mm
■ホイールベース=2610mm
■トレッド=前:1535mm、後:1540mm
■車両重量=1460kg
■エンジン形式/種類=LEC-H5/直列4気筒DOHC
■内径×行程=73.0×89.4mm
■総排気量=1496cc
■最高出力=106ps(78kW)/6000-6400rpm
■最大トルク=127Nm/4500-5000rpm
■モーター形式/種類=H5/交流同期電動機
■モーター最高出力=131ps(96kW)/4000-8000rpm
■モーター最大トルク=253Nm/0-3500rpm
■燃料タンク容量=40L(レギュラー)
■トランスミッション形式=CVT
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット、後:ド・ディオン
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/50R18

【画像27枚】どこが変わった? 専用バンパーから足回りまで、「ヴェゼル e:HEV RS」のディテールを徹底チェック

フォト=佐藤亮太/R. Sato
竹内耕太

AUTHOR

1979年生まれ。日本学術振興会特別研究員(DC2/インド学仏教史)、中古車販売店勤務を経てカーメディアの世界に入り、2025年5月よりル・ボラン編集部デスクに着任。愛車の1963年式フォルクスワーゲン・カルマンギアとともに東京から小田原へ移住し、リモートワークを活用してガレージライフを満喫中。

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