コラム

【愛車と原体験】BMW M3(E36)と歩んだ26年。カーポート保管で極上のダカールイエローを保つ秘訣

コンクールコンディションの愛車を知った原体験は、社長から譲り受けた1冊のBMW MAGAZINEだった

原体験がその後のカーライフに大きな影響を及ぼすように思えてなりません。今回取材した菊池 修さんは、生まれながらにしてクルマ好き。現在の愛車であるBMW M3(E36)を手に入れる原体験となったのは、当時の職場の社長から譲り受けた1冊の『BMW MAGAZINE』でした。その表紙と同じ仕様であるダカールイエローに塗られたBMW M3(E36)の中古車を手に入れて26年。とても31年前に造られたクルマとは思えないほど素晴らしいコンディションを維持するBMW M3、ガレージ保管かと思いきや、あえてボディカバーを被せず、カーポートに停めているそうです。愛車への想いや、コンディション維持の秘訣についても伺いました。
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トミカの「働くクルマ」からドイツ車への憧れ、そして運命の1冊

――菊池さんがクルマ好きになったのは何歳頃でしたか?

自分でも何歳だったのか覚えていないくらい、小さな頃からクルマが好きでした。私は男3人兄弟の真ん中なんですが、兄と弟は野球やアウトドアなどの外遊びが好きな子どもでした。家で遊ぶときも、兄と弟はファミコンが大ブームになった頃に流行ったドラクエに夢中でしたが、私だけはトミカで遊んでいました。結果として、クルマ好きになったのも私だけです(笑)。ただ、トミカのなかでもダンプカーやクレーン車などの「働くクルマ」が好きな子どもでしたね。

――クルマが好きになった「原体験」は何でしたか?

伯父さんが整備工場を併設した中古車販売店を営んでおり、ヤナセの代理店みたいなこともやっていたからなのか、マイカーとしてメルセデス・ベンツ190Eやアウディ100に乗っていたんです。父親はまったくクルマに興味がないので、伯父さんのお店に行くときはいつも付いていきました。そこで伯父さんのクルマに乗せてもらったり、ドアの開閉をしてみたり……。当時小学生だった私でも、ドイツ車は高嶺の花だと思っていましたし、触れられるだけでもうれしかったです。でも、このBMW M3を手に入れるきっかけとなったできごとはもう少し後なんです。

BMW MAGAZINEのなかでもこちらのページが特にお気に入りだという。

――ある意味、それが本当の意味での「原体験」であると(笑)

高校を卒業した後、一度就職したんです。当時の勤め先の社長が当時BMW 5シリーズ(E34)に乗っていて、オーナー向けに『BMW MAGAZIN』Eが送られてきていたみたいなんです。あるとき「菊池くん、クルマが好きだろうからこれあげるよ」と手渡されたのが、ダカールイエローに塗られたBMW M3(E36)が表紙の『BMW MAGAZINE』でした。これがBMW M3に魅せられた原体験でしょうね。この冊子をもらったとき、E36型のBMW M3はデビューしたばかりで、日本には正規輸入されていなかった頃だと思います。

このときの私の愛車はゴルフ2 CLI(AT)でした。まだ18歳で、このゴルフ2が自分で買えるクルマの限界でした。BMW M3(E36)はたしかにカッコイイ。いつか所有してみたいなと思いつつ、実はポルシェ911(964)にも憧れていたんです。いずれにしても、高嶺の花であることに変わりはありませんよね。

このときに譲り受けた『BMW MAGAZINE』は今も手元にあって大切に保管しています。後から同じ冊子をもう1冊手に入れて「閲覧用」ができたので、譲り受けたBMW MAGAZINEは「保存用」です(笑)。

――コレクター気質ですね(笑)。菊池さんの愛車遍歴を教えてください

最初の愛車は、18歳のときに手に入れた1987年式フォルクスワーゲン・ゴルフ2 CLIです。伯父さんのところで触れてきたことが影響しているのか、気がつくとドイツ車が好きになっていたんです。結局、このゴルフ2には3年乗りました。一度就職したあと、専門学校に入って再就職してから手に入れたのがゴルフ3 GTI(MT)です。でもATだと物足りなくて、MT、それもGTIに乗り換えたんです。その次に手に入れたのが、今も所有している1995年式のBMW M3(E36)です。今年で26年目となりました。現在は通勤用に手に入れたBMW 320(F30)との2台体制です。

これは余談ですが、私がドイツ車が好きなあまり、家族全員にドイツ車を買わせてしまったことがあります。その結果、家族のクルマ4台すべてがドイツ車という時期がありました(苦笑)。

菊池さんがかつて所有していたゴルフ2 CLIとゴルフ3 GTI。過去の愛車の写真もアルバムに収めて大切に保管している。

妥協なきクルマ探し「ダカールイエロー」と「サンルーフなし」の絶対条件

――BMW M3を手に入れるまでの経緯を聞かせてください

BMW M3を手に入れようと決めたのは24歳のときでした。ゴルフ3 GTIのエアコンが不調で、伯父さんの工場でも直せない。そこで電装屋さんに修理費用を見積もってもらったところ、30万円くらい掛かることが分かったんです。ゴルフ3 GTIは気に入っていたけれど、これを機に乗り換えようと決意しました。

狙うはポルシェ911(964)カレラ2のMTか、BMW M3(E36)。911は何とか買えるとしても維持できるか分からない。それならば…ということで、実は「つなぎのつもりで」BMW M3を買うことにしたんです(苦笑)。

リアビューも美しいE36型M3。ドアミラーはM3専用品だ。

西暦でいうと1999年〜2000年あたりで、E36型M3の販売されていた最後の頃です(E36型M3の販売期間は1994年2月~1999年6月まで。後継モデルにあたるE46型M3の販売が開始されたのは2001年1月から)。クルマ探しは伯父さんに協力してもらいました。いわゆる「オークション代行」です。

必須条件として、コンディションが良好であることを前提に「ボディカラーはダカールイエロー」そして「サンルーフなし」。これだけは譲れませんでした。ゴルフ2に乗っていたときにサンルーフの不具合で苦労しているので、今回は無用なトラブルを避けたかったんです。後で分かったことなんですが、E36型M3の多くがサンルーフ付きで、しかもダカールイエローの組み合わせとなると本当にタマ数が少ないんです。

定期的に出品リストが更新されるんですが、「BMW M3 × ダカールイエロー ×サンルーフなし」の条件をクリアする個体がなかなか見つからず、なんだかんだで1年近く探していたように思います。この個体も入札の応酬でようやく手に入れることができたくらいです。

ていねいに使い込まれてきたことがひとめで分かる菊池さんのM3の内装。

――このBMW M3が納車された日のことを覚えていますか?

覚えています! ……といっても、オークション代行で手に入れたので、伯父さんの工場にキャリアカーに載せられて運ばれてきた実車と初対面の日なんですけどね(笑)。

一応、走れる状態だったので、給油しがてらガソリンスタンドまで試乗したことを覚えています。ダカールイエローに塗られたBMW M3。しかも左ハンドルのMT。憧れていたクルマだけに緊張しましたね。ガソリンスタンドに着いたら、店員の女の子が「すごく目立つクルマですね」って声を掛けてくれたんです。まさかの逆ナンかと思いきや、残念ながらその後は何もなかったんですけどね(苦笑)。

――愛車を手に入れてからご自身のカーライフにどのような変化がありましたか?

ツーリングに誘われる機会が増えました。BMWオンリーというよりは、ポルシェ911(993)カレラ4Sとか、アルファ・ロメオ155、ロータス・エスプリ、マツダ・ロードスターなど、ジャンルを問わない集まりのツーリングが多かったです。

レザー製のスポーツシートもM3専用品となる。背もたれの3色のアクセントがあるだけでも室内が華やぐ。

ただ、クルマに慣れるまで1年近く掛かりましたね。「このクルマ、本当に自分のものなのかな」って。ツーリングに行っても「それらしい走りをした方がいいのかな」などと考えてしまったり。無意識のうちにプレッシャーがあったのかもしれません。ツーリングから帰ってくるたびに疲れてしまっていましたね。

――BMW M3はどのような場面で乗っていますか?

運転するのが好きなので、ドライブにはよく行きます。あと、最近はクルマ関連のイベントに参加することが増えました。ボンネットを開けた状態で展示して。いわゆる「愛車のコンディション自慢」ですね(笑)。

カーポート保管でコンクールコンディションを保つ驚きの「ローテーション洗車」

――菊池さんと初めてお会いしたのも某イベントでしたね。思わず足を止めてしまう方も多いのでは?

私と同世代の方をはじめ「ハマる人にはハマる」みたいです。声を掛けてくれた方と「『レーシングダイナミクス』っていうメーカーがあったよね」とか、「こんなデザインのホイールだったよね」といった会話を楽しんでいます。

愛車をすみずみまできれいにしているつもりなので、そこに気づいてくださる方には驚かれることが多いですね。自宅駐車場はカーポートですし、カバー傷が気になるので、ボディカバーも被せていません。そのことを話すとさらに驚かれます。

――ガレージ保管だと思っていたので、正直、私もかなり驚きました。ご自身の洗車のやり方とかあるのですか?

ホイールはM3専用品となる。タイヤはミシュランパイロットスポーツ4Sをチョイス。

「暇さえあれば常に磨いてます!」といいたいところですが、洗車が大好きというわけではないんです。洗車に関して、それほどこだわりみたいなものもありませんし。ただ、ゴルフ2、ゴルフ3に乗っていたときからバンパーとかモールの樹脂の部分が白っぽくなるのがイヤで、アーマオールを塗って少しでも地の黒っぽさが維持できるように意識していました。

現在のコンディションが維持できているのも、休日に時間があるとき「今日はホイールとタイヤだけ」「次はエンジンルームだけ」「次はガラスだけ」「次はボディだけ」「次は内装だけ」……といった具合に、部分ごとにローテーションできれいにする作業を26年間繰り返しただけ、なんです。一日中洗車やメンテナンスすることもありますが、クルマのイベントに参加する前など、特別な理由があるときくらいです。

これまでさまざまな洗車道具やケミカル用品を試しましたが、樹脂部分とボディにはAUTOGLYMを使っています。また、ホイールやタイヤにはドイツブランドのSONAXに落ち着きましたね。愛車が綺麗になると本当に嬉しくて思わずニヤニヤしてしまいます。

愛称は「キロちゃん」。一生手放せない家族の一員として

――愛車とのカーライフでいちばんの思い出をぜひ聞かせてください

母親と、当時結婚したばかりの弟夫婦を乗せて日帰りで東京ディズニーランドに行ったことですね。母親を助手席に乗せて、弟夫婦はリアシートに座って。2ドアクーペだけど、リアシートの居住性も保たれているので、乗り降りの不便さ以外は困ることはなかったです。

大人2人が座っても快適に過ごせるリアシート。

――愛車とのカーライフで困ったこと、大変だったエピソードを教えてください

困ったことはいろいろありましたが、純正パーツの入手が困難になってきたのは確かです。内装の部品は新品の在庫がありませんし。あとはABSのユニットやポンプも新品は手に入りません。

それと……BMW M3にのめりこんでしまった結果、なかなか彼女ができなかったことも大変だったエピソードといえるかもしれません(笑)。

――今後、愛車に対して手を加えてあげたいポイントを教えてください

基本的にはこのままフルオリジナルの状態を保っていきたいです。ウィンドウフィルムはもちろん、ステッカー類もあえて貼っていません(正規ディーラーのステッカーもはがしてしまったくらい)。お金とタイミングがあえば、部品がそろううちにモール関係のリフレッシュや、オールペイントしてあげたいですね。

――ご自身の愛車に関することで、自慢できるポイントをぜひ聞かせてください

やはり愛車のコンディションでしょうか。皆さんが褒めてくださるので。

メーターパネルのアップ。現在の走行距離は約14万km。

1995年式、5年落ちの中古車を2000年に購入して、現在の走行距離は約14万km。私が手に入れてからの走行距離は約10万kmです。カーポート保管&ボディカバーなし、31年前のクルマにしてはきれいな方だという自負はありますね。

あとは、正規ディーラーできちんとメンテナンスをしているお陰で機関系のコンディションも良好であり、「即全開にできる状態」を維持していることでしょうか。ちなみに、燃費は街乗りで8km/L前後、高速道路だと11km/Lくらいだと思います。

――愛車を維持するうえで気をつけていること、意識していることを聞かせてください。

かつては通勤でも使っていましたが、それなりの年式なので、イベントなどよほどの事情がない限り雨の日は乗らないようにしています。あとは、予防整備を心掛けています。少しでも違和感があったら、すぐにディーラーに連絡を入れて点検してもらうようにしています。

いつもお世話になっている正規ディーラーのサービス担当の女性がハーレーやクラシックミニをお持ちだそうで、いつも私のM3に対する想いを汲んでくれるんです。

31年前、カーポート&ボディカバーなしで保管しているとは思えないほどきれいなエンジンルーム。見る人が見れば驚愕のレベルであることが分かるはず。

――過去26年間に一番かかった修理代は何ですか?

VANOS(バノス)という、いわゆる可変バルブ機構の部分からオイル漏れが見つかったんです。そのときは専門店に車検を兼ねて修理をお願いしたら、見積もり金額が100万円を超えたんです。最終的には整備内容を相談して80万円に抑えてもらいました。

――愛車であるBMW M3、これまで「もういいや」と思ったことはありましたか?

ありません。ただ……先述したVANOS(バノス)のオイル漏れのときの修理代が判明したときは、ホンの一瞬ですが「この先どうしよう」といった思いが頭をよぎりました。

――この先「このクルマだけは手に入れたい」というモデルはありますか?

憧れでもあるポルシェ911(964)カレラ2のMTですね。もちろん増車です。ご存知のようにすごく高くなってしまったので、なかなか手が届かない存在となってしまいましたが…。

菊池さんが愛してやまない「キロちゃん」こと、BMW M3とのツーショットを正面から撮影。

――菊池さんが愛車に「伝えたいメッセージ」をぜひ聞かせてください

ウチに来て今年で26年目なんですが「本当にいつも楽しい時間をありがとうね」という想いに尽きます。そして、これからもまだまだ乗り続けたいので「これからも末永くよろしくね」という気持ちでいっぱいです。

――菊池さんにとって「愛車」であるBMW M3はどのような存在ですか?

「家族の一員」です。
母親や弟もこのM3をかわいがってくれていて、いまだに「キロちゃん」と呼んでいますし(笑)。他のクルマを増車したりすることはあっても、このM3だけは一生手放さないでしょうね。このままアガリの1台になっちゃうと思います。

■オーナープロフィール
・お名前:菊池 修さん
・年齢:50歳
・職業:会社員
・愛車:BMW M3(E36型)
・年式:1995年式
・トランスミッション:5速MT

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AUTHOR

1974年生まれ。株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。輸入車の取扱説明書制作を経て、大手飲食店ポータルサイトでコンテンツ企画を経験。2013年にフリーランスとして独立、2022年11月に株式会社キズナノートを設立し、現在にいたる。カーメディアの運営サポートや企画立案・ディレクションが得意分野。またオーナーインタビューをライフワークとし、人選から取材・撮影・原稿執筆・レタッチ・編集までを一手に担う。現在の愛車は1970年式ポルシェ911S(プラレール号)と、2022年式フォルクスワーゲン パサートヴァリアント。

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