ディフェンダー・ラリーがアルゼンチンで新境地へ、史上初の女性ペアを擁しW2RCに挑む
ディフェンダー・ラリーチームが、2026年5月24日から29日にかけてアルゼンチンで開催されるFIA世界ラリーレイド選手権第3戦「デサフィオ・ルタ40」への参戦を発表した。今回の参戦における最大の注目は、2010年の大会創設以来初めてとなる女性のみのクルーが公式にエントリーすることだ。ダカール・ラリーやポルトガル戦での成功に続き、過酷な南米の地で「ストック」クラスの王座獲得に向けた戦いが幕を開ける。
【画像6枚】歴史を刻む女性ペアとラリー仕様のディフェンダー。アルゼンチンに挑む最強チームの姿を画像で見る
大会史上初となる女性のみのクルーが歴史を刻む
今回のアルゼンチン参戦において最も大きなトピックは、サラ・プライスと新たにナビゲーターとして加わるセイディー・グレイのペアによる挑戦である。19歳のグレイは、ディフェンダー・ラリーチームでの初陣として、この世界ラリーレイド選手権(W2RC)第3戦のナビゲーターという重責を担うこととなった。彼女は若くしてCan-Amやホンダのファクトリーチームでの競技経験を持ち、オフロード界で豊富な実績を積み上げてきた。プライスとグレイの二人は、2023年にメキシコで開催された5日間の過酷な耐久レース「NORRA 1000」で共に初優勝を飾った経験もあり、その絆と実力は折り紙付きだ。
この女性ペアの誕生は、デサフィオ・ルタ40の歴史においても極めて重要な意味を持つ。2010年に大会が始まって以来、女性のみのクルーが公式に参戦するのは今回が初めての事例となるからだ。グレイはこの挑戦を自身にとっての大きなステップと捉え、友人と共に競技に臨むことで決意をさらに固くしている。彼女たちは単に参加するだけでなく、このアルゼンチンの地で確かな足跡を残し、自身の限界を押し広げることを目標に掲げている。
ストッククラスの首位独占を狙う強力な布陣
ディフェンダー・ラリーチームは、現在選手権のストッククラスで圧倒的な強さを誇っている。ラインナップは3組のクルーで構成されており、現在153ポイントを獲得してランキング首位を走るロカス・バチュシュカとオリオル・ビダルのペアを筆頭に、2位のサラ・プライス、そして118ポイントで3位につけるレジェンド、ステファン・ペテランセルとミカ・メッジのペアが続く。まさにワールドクラスの布陣でアルゼンチンに乗り込み、選手権でのリードをさらに広げる構えだ。
チーム代表のイアン・ジェームズは、今回のアルゼンチンラウンドをシーズンの重要な折り返し地点と位置づけている。前戦のポルトガルで見せたチーム全体の高いパフォーマンスを評価しつつ、南米特有の過酷な環境での戦いに期待を寄せている。特にアルゼンチンのステージは、ダカール・ラリーが南米で開催されていた時代の歴史的な雰囲気を感じさせるものであり、全ての走行距離が車両の能力を証明し、チームを成長させる貴重な機会になると確信している。
市販車ベースの限界に挑むディフェンダー・ダカールD7X-R
競技に使用される車両は、最新のFIAストッククラス規定に適合するよう開発された「ディフェンダー・ダカールD7X-R」である。このラリーカーは、究極のパフォーマンスを追求した市販モデル「ディフェンダー・OCTA」をベースとしている。特筆すべきは、ベース車両と同じ生産ラインで製造されている点であり、D7xボディアーキテクチャーやトランスミッション、アルミニウム製のモノコック構造などは市販モデルからそのまま引き継がれている。その上で、過酷なラリー競技に対応するため、冷却システムの強化や新しいサスペンションの採用、トレッドの拡大といった専用の改修が施された。
このD7X-Rの耐久性と走破性は、すでに実戦で証明されている。2026年シーズンの開幕戦となったダカール・ラリーでは、チームのデビュー戦ながらストッククラスで見事に優勝を飾った。続くポルトガル戦でも、市販車ベースのカテゴリーでありながら、改造範囲の広い上位のアルティメットクラスに匹敵する総合タイムで完走を果たしている。OCTA譲りの4.4リッターV8ツインターボエンジンがもたらす卓越した動力性能は、砂塵の舞うアルゼンチンの大地でも大きな武器となるだろう。
南米の地で再確認されるディフェンダーの精神
ドライバーたちもまた、アルゼンチンの大地に特別な思いを抱いている。ベテランのステファン・ペテランセルは、かつて南米で開催されていたダカール・ラリーで幾度ものステージ優勝や総合優勝を飾っており、この地の地形には非常に馴染みがある。彼にとって今回の参戦は、使い慣れた地形を新しい相棒であるD7X-Rで走るという新鮮な体験となる。選手権をリードするバチュシュカも、レース大国であるアルゼンチンで競技を楽しみつつ、ディフェンダーの可能性を限界まで引き出すことを誓っている。
ディフェンダーというブランドは、1948年の誕生以来、人道支援や自然保護活動を支援し、自由の象徴として歩んできた。今回のラリー参戦は、その「不可能を乗り越える」という精神を最も過酷な環境で体現するものである。カストロールやビルシュタインといった公式パートナーの支援を受けながら、チームはアルゼンチンで新たな歴史の1ページを書き加えようとしている。現代のヒーローとしての誇りを胸に、ディフェンダー・ラリーの挑戦はさらに加速していく。
【ル・ボラン編集部より】
かつてアルミモノコックを採用した新型ディフェンダーの登場時には、「快適だが道具感は薄れた」と一抹の寂しさを覚えた向きも多いだろう。しかし今回のW2RCでの快進撃はどうだ。市販車由来のD7xアーキテクチャーとV8エンジンが、南米の過酷な大地をねじ伏せている。最新テクノロジーがもたらす「洗練」と、極限環境を走破する「野性」。相反するはずの二つの要素が、ストッククラスでの圧倒的な強さとして完全に両立している。1948年から続く開拓精神は、全く新しい形でいま頂点を極めようとしているのだ。
【画像6枚】歴史を刻む女性ペアとラリー仕様のディフェンダー。アルゼンチンに挑む最強チームの姿を画像で見る









