LE VOLANT モデルカー俱楽部

伝説の白鯨へのオマージュ。「ポルシェ935/19」の凄みを1/43スケールに凝縮したメイクアップの職人魂【LE VOLANT モデルカー俱楽部】

かつてのモビー・ディックへのオマージュ

このコラムでは、3月に当サイトでご紹介した「マクラーレン P1 2013」のモデルカー(ミニチュアカー)に引き続き、日本を代表する精密モデルカー・マニファクチャラー、東京・青山の「メイクアップ」が手掛ける「アイドロン・コレクション」1/43新作をご覧に入れる。車種は「ポルシェ935/19 2019」。撮影はいつも通り、モデルカー撮影の第一人者、写真家の服部佳洋氏にお願いした。

【画像14枚】実車取材のもと精緻に再現されたモデルカーを細部まで確認!

実車の「ポルシェ935/19 2019」について

2018年、ポルシェ創設70周年を祝うサプライズとして、ラグナ・セカで開催された「レンシュポルト・リユニオン」でアンベールされたのが「ポルシェ935/19」だ。一見してシルエット・フォーミュラへのオマージュを感じさせるアピアランスだが、その実態は懐古趣味のレプリカなどではなく、最新レンシュポルトに肉薄するパフォーマンスを秘めたサーキット専用モンスターだった。

1970年代後半、モータースポーツシーンを席巻した「グループ5」、通称「シルエット・フォーミュラ」。市販車の面影(シルエット)を外観に残しつつ、ほとんど自由な改造が許されたこのカテゴリーで、ポルシェ935は無敵の強さを誇った。935/19は、その黄金時代へのオマージュとして誕生したモデルである。

935/19の骨格は、2018年当時の911最強仕様「911 GT2 RS(Type 991.2)」をベースとしている。しかし、そのボディの大部分はカーボンファイバー強化樹脂に置き換えられ、全長はロングテール化により4865mmまで延長。車重は1380kgにまで絞り込まれている。足廻りも市販車とは一線を画す。

サスペンションはピロボールを多用したレーシング仕様であり、フロントには6ピストンのモノブロック・レーシング・キャリパーを採用。ABSやESC(安定走行管理システム)などの電子制御は備えているが、ドライバーの好みに応じて介入度を調整、あるいは完全にオフにすることが可能で、純粋にラップタイムを削るための「道具」として設計されている。

モビー・ディック(白鯨)の異名をとった935/78をモチーフとするラングヘックのプロポーション。ゼッケン70はポルシェ社の創立70周年記念を示す。

リアに搭載された3.8L水平対向6気筒ツインチャージャーエンジンは最高出力700psを発生させ、専用にセッティングされた7速PDKを介してリアホイールを駆動する。チタン製エグゾーストは、かつてのシルエット・フォーミュラを彷彿とさせる官能的なフラット6サウンドを響かせるという。

外観は1978年のル・マンを席巻した最強の935、「935/78(通称モビー・ディック)」の意匠を色濃く反映している。その巨大なリアウイングとディフューザーは現代的に最適化されており、強烈なダウンフォースを生み出す。

このモデルが世界限定77台となった背景には、ポルシェの輝かしい戦歴がある。外観こそ78年型をモチーフとしているが、生産台数は「1977年」の活躍に由来する。この年、ワークスの935/77が選手権を制覇したのみならず、カスタマーに供給された935も世界中で勝利を量産。ワークスとプライベーターが共に頂点を極めたこの年を記念し、ポルシェ創設70周年記念車として77台が世に送り出された。

かつてサーキットを支配した「シルエット」が、現代の技術で再びサーキットを駆け抜ける。ポルシェ935/19は、単なる記念碑ではなく、ブランドの誇りと情熱が詰まった「走る遺産」とも言えるだろう。

アイドロン・コレクション1/43の開発

さてメイクアップ社「アイドロン・コレクション」1/43スケール・モデル本製品の「ポルシェ935/19 2019」を観察していこう。開発に当たっては、日本国内に存在する稀少な実車の取材を敢行、オーナーの全面的な協力のもと、綿密な3Dスキャンを実施、採取したデータを元に、忠実なフォルムの原型が制作された。

上述の通り、実車935/19は991シリーズの「911 GT2 RS」をベースにしているが(厳密に言えばそのサーキット仕様である「911 GT2 RS クラブスポーツ」)、935/19にはその面影が殆どないため、完全新規での原型制作である。

日本国内に存在する実車の取材を敢行、オーナーの全面的な協力のもと、綿密な3Dスキャンを実施、採取したデータを元に、忠実なフォルムの原型を制作。

現代のモデルカー開発現場においては、実車メーカーから提供される3Dデータを元にするケースが殆どであり(3Dデータが存在しない時代の車種の場合、話はもちろん別)、それがアプルーバルを得るための基本とも言えるので、今回は特別な例だ。

しかし、再来年には創業50周年を迎えるというメイクアップ社の歴史に照らせば、本来のモデルカー開発とは実車の綿密な取材から始まることに他ならないはずで、デジタル・データが全くないゼロの場面から、アナログな尽力によって忠実なフォルムとディテールを捉え、実車のオーラをまとったモデルを生み出すことは、同社の生業の基本であるとも言えるだろう。

デジタルとアナログの組み合わせによる開発手法は近年のメイクアップの標準だったが、今回はアナログの比重が高い成り立ちから生まれたモデルだ。正に同社の真価の見せどころであり、その結果は傑出した結実を見せている。

激闘の末にもぎ取った栄光

今回撮影したモデルのカラースキームは、ホワイト地にマルティニ・ストライプがあしらわれたもので、正にシルエット・フォーミュラ時代のポルシェ・ワークスのカラーリングを踏襲した最もポピュラーなカラーリングだ。

かのジャッキー・イクスやヨッヘン・マスら、一流のグランプリ・ドライバーが操縦、最強だったと伝えられる時代がモチーフであるが、実はこの時期のポルシェ935は、伏兵に脇を刺されたことも一度や二度ではなく、常に楽勝だったわけではない。

BMW 3.5 CSL、同320iターボ、フォード・カプリ、ランチア・ベータなど、強敵が次々に現れ、実際のところ、935/19のモチーフでもある935/78モビー・ディックに至っては、1978年ル・マンに於いて、Gr.6の936共々、ルノー・アルピーヌA442Bに完敗を喫しているのだ。

メイクアップ製「アイドロン・コレクション」1/43モデルカーの「ポルシェ935/19 2019」。ボディ色は「ホワイト / マルティニ・ストライプ」。主要パーツは高品質レジン製。

935/19はシルエット・フォーミュラの王者だった935に対する熱きオマージュだが、それは手放しの最強伝説を謳うものではなく、激闘の末にもぎ取った、汗と血とオイルにまみれた栄光に想いを馳せたものなのである。

なお、メイクアップ製「アイドロン・コレクション」の935/19のボディカラーは、このホワイト/マルティニ・ストライプを含む5色が用意されている。入手ご検討の向きは、サイトをご覧になるか、同社に直接お問い合わせ頂きたい。

【画像14枚】実車取材のもと精緻に再現されたモデルカーを細部まで確認!

■メイクアップ公式サイト
■メイクアップの1/43 ポルシェ935/19

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