コラム

F1王者参戦で沸くニュル24時間はなぜ「狂気のお祭り」なのか? 参戦ドライバーが語るカオスの内幕【木下隆之コラム】

もはやレースではなく“巨大な祝祭”。ギネス級の圧倒的スケー

5月14日に開幕するニュルブルクリンク24時間耐久レースは、ドイツ最大のモータースポーツイベントと言っても大げさではない。モータースポーツ大国ドイツには、FIAフォーミュラ1世界選手権やドイツツーリングカー選手権(DTM)といった人気イベントが存在する。だが、参加台数、バトルの激しさ、そして観客の熱狂という三拍子がこれほどまでに揃うイベントは、ニュルブルクリンク24時間をおいて他にない。もはやレースというより、“年に一度の巨大な祝祭”と表現したほうがしっくりくる。
【画像16枚】観客も耐久戦!? ニュルブルクリンク24時間レースのカオスすぎるキャンプと熱狂
まず圧倒されるのが、そのスケールだ。過去には250台ものマシンが一堂に会し、1台あたり4人のドライバーで計算すれば、実に1000人規模が同じレースに参加したことになる。これはギネス記録にも認定されたほどで、「参加するだけで一つの勲章」と言われるゆえんだ。

挑むは“グリーンヘル”。過酷すぎる全長25.3kmの全貌

それを可能にしているのが、全長25.3kmに及ぶサーキットである。通称“グリーンヘル”。高低差は約300m、コースアウトの余地はわずか、そしてコーナーの多くがブラインド。見えない先に全力で飛び込んでいく感覚は、勇気というより半分は覚悟、残り半分は“ちょっとした開き直り”かもしれない。

観る側も耐久戦? コースを囲むカオスなキャンプサイト

このコースのもうひとつの顔が、観客との距離の近さだ。山を切り拓くようにレイアウトされたため、コースの大半がキャンプサイトに囲まれている。観客はレースの合間にキャンプを楽しむのか、それともキャンプの合間にレースを観ているのか――もはや境界線は曖昧だ。
焚き火、バーベキューは当たり前。自作の観戦スタンドを組み上げ、さらには即席プールやシーソーまで設営する猛者も現れる。公式日程は木曜から日曜の4日間だが、ベテランともなると前後を含めて1週間滞在する。耐久レースを観る側もまた、なかなかの耐久力が求められるわけだ。

GT3から大衆車まで。速度差が生み出す“実写版レーシングゲーム”

そして肝心のレースは、当然ながら一筋縄ではいかない。トップカテゴリーはGT3マシンによる激戦で、およそ40台のワークスマシンが火花を散らす。
その一方で、戦闘力に応じて20以上のクラスに分けられ、2L NAのトヨタ86やルノー・クリオといった比較的身近な車両も参戦する。速度差は極端で、速いクルマが遅いクルマをかき分けていく様は、さながら“実写版レーシングゲーム”。当然、接触やクラッシュも多く、危険と興奮が隣り合わせで進行していく。

F1王者フェルスタッペン参戦! そして私もBMW M2で実戦へ

今年はさらに話題が尽きない。4度のF1世界王者であるマックス・フェルスタッペンが参戦するのだ。その人気と存在感を考えれば、観客動員記録の更新すら現実味を帯びてくる。そして僭越ながら、私もその一員としてこのレースに挑む。名門ヴォルケンホーストから、BMW M2レーシングでの参戦だ。言葉で語るだけでは伝えきれない“本物のニュル”を、今度はステアリング越しに体験することになる。正直に言えば、楽しみ半分、恐怖半分――いや、体感的には恐怖のほうがほんの少し多いかもしれない。

画面越しでも伝わる熱狂。オンライン配信で24時間を見届けよ

近年ますます注目を集めるニュルブルクリンク24時間は、オンラインでのライブ配信も予定されている。現地の熱狂をそのままに、画面越しでも十分にその迫力は伝わるはずだ。
グリーンヘルで繰り広げられる24時間。そこには、速さだけでは測れない価値がある。走る者も、観る者も、そして少し無茶を楽しむ者も――すべてを巻き込んで、このレースは今年も“お祭り”として加速していく。ぜひ、その瞬間を見届けてほしい。
【画像16枚】観客も耐久戦!? ニュルブルクリンク24時間レースのカオスすぎるキャンプと熱狂

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木下隆之

AUTHOR

1982年に全日本学生自動車王者に輝いた。出版社で編集部所属、独立してレーシングドライバーとして活動を開始してから40年となる。日産、ホンダ、三菱、トヨタとレーシングドライバー契約。レーシングカーはもちろんのこと、スカイラインGT-R、ホンダ・レジェンド、三菱ランサーエボリューション、レクサスLFAなどの開発に従事。国内外のトップカテゴリーで数多くのチャンピオンを獲得。スーパー耐久シリーズでは最多勝記録を更新中。ニュルブルクリンク日本人最多出場、日本人最高位記録保持。GTアジア選手権2連覇等、海外に活動の場を広げて活躍中。2023年からはトーヨータイヤと「プロクセスアンバサター」契約し、Team TOYOTIRESのドライバーとしてニュルブルクリンクに参戦を開始している。一方で、執筆活動も旺盛で、11本のコラムを連載中。「豊田章男の人間力」「ジェイズや奴ら」等を上梓。トヨタガズーレーシングアドバイザー、レクサスブランドアドバイザー、BMWスタディ・スポーティングディレクターを経験。数々の企業案件に参画してきた。サントメ・プリンシペ民主共和国・補佐官/トウキョウファーム経営戦略アドバイザー/日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/日本自動車ジャーナリスト協会会員/株式会社木下隆之事務所・代表

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