しかし、私の気持ちを動かしたのはエンジンだけでなく、前期型より確実に進化したシャシー性能にあった。特にブレーキフィールがめちゃくちゃに素晴らしいのだ。普通にブレーキを踏んだときでも微妙なコントロールが可能だし、宇宙一だと思っていたこれまでの991前期型のブレーキを完全に凌駕している。後期型991IIのそれを味わった後では、前期型のブレーキフィールは少し「板っぽい」感じが否めないほどだ。
一体何が違うのか。フロントローターを見て驚いた。なんと後期型991IIはセミ・フローティング式を採用しているではないか。ハウジングはアルミ製だった。ローターは熱変形するとブレーキジャダー(振動)の原因になるが、フローティング式のローターを採用することで、ブレーキフィールを改善しているのだ。
シャシー性能を確認するために高速周回路の高速コーナーを約160km/h、0.7G程度の横加速度で走ると、カレラ4GTSよりも後期型カレラSの方がリアの接地性が高く、安心感が得られた。スペック的にも4駆のカレラ4GTSの方が安定性は高いと考えがちだが、2駆のカレラSもスタビリティは大きく向上している。
前期型と後期型を徹底的に比較すると、まるで空冷から水冷になった「あの時」と同じ度合いの進化があると感じる。自然吸気かターボかというエンジンだけの論争はもうやめて、911カレラのスポーツカーとして洗練されたシャシー性能にも注目しておきたい。